少しのずれからとんでもないことに
理由は分からないが突然夫が失踪する、という出来事が少しずつ人間関係を歪ませていき、やがて決定的な事件に発展する。登場人物の細かい心の動きから大きなうねりを生む物語のダイナミズムが素晴らしい。 巻末の作者による解説も「ここまで考えて描いてるんだ!」という驚きがあって面白かった。
【電子限定!描き下ろし特典収録】手塚治虫文化賞新生賞受賞後第一作。全編描き下ろし! 3年の歳月をかけて描かれた女と少女。卓越した絵画技術と漫画表現の極致。魅力的な異国人の奥様、家庭思いのご主人、かわいい一人娘。花咲く庭を眺めながら、夫婦仲良く縁側で過ごす完璧な休日。しかしある日、夫は何も告げずに失踪してしまう── 美しいまま壊れていく異国人妻の姿を、隣家に住む思春期まっ只中の女子中学生のまなざしで描く。
リサさんが少しずつ壊れていく姿が切なかった。
隣の家のツミちゃんが、愛や恋にまだ疎く、分からないながらも自分なりの方法でリサさんを想う姿は、不幸を楽しんでいたようには見えなかった。
だけどきっと誰にも、自分にも、そういう類の醜さがある。みんな少しずつ。
作品解説で気づかされることも多く、読み応えがあった。