東千石さんのメイクアップドール

ガール meets かわいいを作れるスパダリ #1巻応援

東千石さんのメイクアップドール ことぶきりー
兎来栄寿
兎来栄寿

シンデレラの原型として最古のものと考えられているロドピスのお話は紀元前から存在し、類型となる物語は世界中にあるといいます。 少女マンガはもちろんのこと、少年マンガにおいても「変身」は普遍的なテーマです。普段の自分を脱して、憧れていた特別な存在に変わること。潜在的に多くの人が持つ願望を叶える物語は、2000年以上前から現代でも王道として親しまれる強靭な型です。 『東千石さんのメイクアップドール』は、そんなシンデレラ・ストーリーの最先端。万年ジャージ女子大生・玲(あきら)が、美容学生である東千石に「練習用人形(メイクアップドール)」として起用されることで、今までとまったく違う日常を過ごしていく物語です。 この最新鋭シンデレラ・ストーリーにおいては、シンデレラを着飾るのも綺麗にするのも魔女ではなく王子様である東千石さん自身。パーティ用のガッツリメイクから、普段用のナチュラルメイクまで完璧に仕上げてくれます。しかも、お召しになる素敵なドレスや衣類もすべて当然王子様からのプレゼント。何なら、ガラスの靴ではなく初めてのヒールすら王子様が跪いて履かせてくれるとなっては、 「こっ こんなの頭おかしくなっちゃうよ」 という反応が現れるのもむべなるかな。 更には、王子様はメイクの傍らで美味しい食事まで拵えてご馳走してくれるし、オイルマッサージなどエステ的な施術もしてくれます。旧来の少女マンガならヒロインが料理をして好感度を上げるところですが、ある意味ではシンデレラ以上の好待遇。玲に関してはやっかむような家族や貴族的な人もほぼ存在しません。逆に、美しくなったことを讃えてくれたり、王子様との関係性を囃し立てながらも応援してくれる良き友人がいるばかり。この辺りの優しい世界観も令和的です。 それでも、玲がこんな厚遇を受けるのを素直に納得できて応援できるのは、玲が気は優しくて力持ちで、「義理と人情」を金科玉条のように掲げて日々人助けをしながら生きており、王子様に料理を振る舞われたならお返しに自分も作ってあげようとするような気立ての良さ。また、幼い頃にかわいい格好をして笑われたトラウマから、半ばかわいくなることを諦めていたという事情。何の躊躇いもなく幸せになって欲しいと応援できるふたりです。 筆者のことぶきりーさんが、フリーのヘアメイクのお仕事をしながら漫画家も兼業しているということで、「丸顔だからヘアは額出して縦のライン強調させた方が大人っぽくなる」など、作中のメイク関連の技術や知識、アイテムなどかなり細かくしっかりと描かれています。玲の髪型も、細かく描き分けられていてそれぞれ可愛いです。そう、純粋に絵がかわいいしカッコよくて魅力的です。巻末のオマケマンガ「〜玲のめいくあっぷ道場〜 突然ですが教えてくださいっ東千石さん」も非常に実践的な内容となっていました。 ただ、「練習用人形」でいられる期間は1ヶ月。その12時の鐘が鳴ってしまったら、果たしてどうなってしまうのか。 スパダリ王子が登場する甘い王道恋愛が読みたい方に強くお薦めです。 余談ですが、単行本の作者コメントから感じる地元愛にも共感します。

悪役令嬢は今日も華麗に暗躍する 追放後も推しのために悪党として支援します!

ペンライトを手にする悪役令嬢(1巻表紙イラスト)

悪役令嬢は今日も華麗に暗躍する 追放後も推しのために悪党として支援します! 高松翼 春が野かおる 道草家守
ゆゆゆ
ゆゆゆ

ゲーム内登場キャラクター悪役令嬢エルディア。 その中の人が、そのゲームの大ファンであるアラサー喪女になってしまう、悪役令嬢系恋愛ストーリー。 最推しアルバートとともに、ゲームに登場する数々の推しキャラクターを愛でる生活をするため、世界線を崩壊させないため、エルディアは密かに奮闘する。 よくこんな人を主人公にして書き進められるなあと思うほど、エルディアはすぐに萌え悶える。 原作小説からぶれない、エルディアによる推しの尊さを噛みしめる頻度。 推しがきらめくときの、心中のはしゃぎよう。 小説版も萌え踊る心を落ち着かせるためになかなか忙しいエルディアだったが、エルディアが可視化されるマンガはさらに忙しい。 落ち着いたエルディアの最推しアルバートにひどく安心できる。 しかし、アルバートのコミカライズイラストは、読者をも萌え踊らさせようとする意志を感じる。 読者も試されている。 概要だけでは、この作品のハイテンションは伝わらないと思うので、まずは一読を。 これほど熱愛するゲームがあった、中の人の喪女さんが少し羨ましい。