迷宮日和

少女たちの少し不思議な日常と、世界の謎 #1巻応援 #完結応援

迷宮日和 吉富昭仁
兎来栄寿
兎来栄寿

14歳の日向、13歳の愛梨、12歳の果歩、11歳の真理。4人の少女たちと、愛梨が想いを寄せる少年・翔が中心となって繰り広げられる、地下世界の群像劇です。 物語世界に関しては最初に何か説明があるわけではなく、読み進めて行くたびに情報が小出しにされていき少しずつ全容が見えていくという構成です。 例えば、1話で解るのは ・地下の九龍城のような場所で人々が生活を営んでいること ・電気は通っていること ・立入禁止区域があること ・翔は地図を作っていること ・黒いスーツの男がやってくると家族全員どこかに連れ去られること ・カンガルーが出没すること ・建造物を生成する″野良重機″が存在すること といった感じで、最初は掴みどころがないように感じるかもしれません。 しかし、その後も ・誰も空を見たことがない ・誰も超えたことがない″東のカベ″という壁が存在する ・毎年6月の毎週月曜日〜水曜日16:10から1時間、真水の雨が降る と段々色々なことが解っていくのは、ミステリー的な面白さがあります。 また、メインのキャラクターたちによるこの世界における日常描写、とりわけ愛梨と翔のラブがコメるさまなどはそれだけで楽しいのですが、オブラートのように世界の謎を包み隠している印象もあります。この辺りは同じく吉富昭仁さん作の『地球の放課後』を感じさせますね。 玄関の靴の4者4様の揃え方で性格を暗示しているのも好きなシーンです。 読んでいるときは、早くもっとこの世界の謎の核心に近づきたいと思うのですが作中で 「世の中知らないほうが面白いことだってあるんだよ!!」 「もともと人生は″迷宮″なんだしさ」 というセリフが登場する辺り、メタ的です。 少し不思議な世界観の作品が好きな方は1巻完結で読みやすいので、試し読みから入ってみてはいかがでしょう。

くちべた食堂

口下手な二人のじれったさがたまらない

くちべた食堂 梵辛
六文銭
六文銭

近所にある定食屋に、気になっていたが入りたくても入れず、時間ばかりが過ぎて5年間。 5年間ってすごいなと思うのですが、客足が少ない個人店って入るのめっちゃ勇気いるので、入るの躊躇するのはわかります。 そこで美味しかったことを伝えたい!店員は着てくれて嬉しいと伝えたい!が、双方、口下手で言えない。(タイトル回収) 悶々と葛藤したすえにふりしぼった二人の言葉は 「また来ます」 「また来てね」 この時点で、自分のなかで名作が確定しました。 店員との会話ってハードル高いし、ましてや気に入った店ならあんまり声かけて気まずくなりたくない人間なので話すことの抵抗はよくわかります。 それでも何か感謝の言葉を伝えたいという気持ちも伝わってきて、最終的に感謝が上回る感じのカタルシスが半端なかったです。 全編通して、口下手な二人が思いを伝えたいのに言わない、じれったい感じが見ていてたまらないし、だからこそ時折思いが一緒になるときの謎の感動が半端ないです。 ご飯を純粋に楽しむ姿もかわいいです。 ずっと眺めていたくなる。 あぁ、この2人の関係が「尊い」というのか?と実感させてくれた作品です。