おいしい二拠点 単行本版

憧れの田舎暮らしと都会の利便性の両立 #1巻応援

おいしい二拠点 単行本版 イシデ電
兎来栄寿
兎来栄寿

都会に住む人が、田舎にしかない自然や忙しなくない時間の流れに憧れを抱くケースは多々あります。かくいう私もそのひとりでした。 本作の冒頭で、長野の名もなき林の中で裸足で川に入り青空の下で清冽な空気に全身を浸した瞬間に主人公の麻胡(まこ)が ″困ったな まだ帰ってもないのに  またすぐここに来たい″ という想いが浮かび上がり、そしてその直後に ″そっか  「また来たい」んじゃないや″ と気付いて、夫に「東京で働いて長野に住む」と宣言し二拠点での生活を始めていくシーンが描かれます。ここにまず大きな共感を覚えました。 私も吉野山の世界遺産になる程の絶景と空気の美しさにほぼ同様の想いを抱いて、移住しつつ何かの際には東京へ出向いていた経験があるので正に「まだ帰ってもいないのにまたすぐここに帰りたい」「何なら永住したい」という感覚になりました。コンクリートの山によって空も狭まった場所で疲弊していると、緑の中で呼吸することで人間に還れる感覚があるんですよね。 ただ都会には都会にしかない便利さや人が集まっているが故に催される営みもあり、それはそれで大きな価値です。仕事を含めた多くのことがインターネットを介しリモートで行えるようになってきてはいても、どうしても大きなイベントは都会中心で(最近はそういったものもオンラインで行われるようになってきましたが)、リアルの場に行かないと人との生の交流という真価は味わえません。田舎に憧れ田舎で暮らしてみてから初めて解る都会の良さや田舎の大変さもあります。 ″梅ささみ一本だけ焼いてもてなしていただくのって  都会のうれしさだったのね″ の部分も高解像度です。 そしてこの作品でも描かれている部分ですが、人付き合いは田舎で暮らす上での大事な課題です。最近でも話題になっている事件がありますが、その土地の権力者が大変な人物だと大きな苦労を強いられることになります。上手く行けば良いのですが、ずっと住む上では死活問題です。 しかしながら、そういった部分はあったとしても、夜に見える美しい星空ひとつでお釣りがくるものでもあるんですよね。人の世の事柄など、全て些末になり吹き飛んでしまうような。私も引退したら田舎に居を構え直したいです。 この物語の中ではコロナ禍という状況というのがひとつのキーポイントとなっており、その中での夫婦間の関係の亀裂の入り方、そこから取り直して共に進んで行こうとする瞬間の細やかな機微などにイシデさんらしい良さがよく出ています。夫婦に留まらず、人と人とが上手くやって行くために大切なことがいつも描かれているところが好きです。 また、木曽の名産「酸茎(すんき)」を使った新たな名物を作ろうとするところの楽しさなども。麻胡のフードライターという職業はイシデさん自身食べるのが大好きであることから設定されたそうですが、同じく食べることが大好きな私は豊かに描かれた食べ物のシーン全般興味深く読めました。 舞台となる長野も個人的に思い入れのある地なので、非常にfor meな作品でした。麻胡と扇の夫婦が、どのような壁にぶつかってどのように乗り越え、どのように人生を満喫していくのか。続きもとても楽しみです。

冷蔵庫のアレ、いつ使うの?

自宅の冷蔵庫の中を思わず考えてしまう

冷蔵庫のアレ、いつ使うの? 山本あり
ゆゆゆ
ゆゆゆ

冷蔵庫に居座る、期限が長い調味料やらなんやらを使い切る、ゆるいお料理エッセイ漫画です。 冷蔵庫から発掘される、我が家でも心当たりのある調味料の数々。 「その食べ方は美味しそう」と、見ているとお腹が減ってきます。 DINKS&酒飲みのご夫婦のようなので、ちょっと濃い目でも「酒に合う〜」と、おいしく召し上がっているので、さらに羨ましくなってきます。 ちなみに、読む前は表紙イラストがいったいどういう状況かわからなかったのですが、読んだ今なら推測できます。 冷蔵庫に居座る何かをなんとかしたい、ミニマリスト気質&お掃除担当の旦那さんと、ビールを大変おいしく飲んでいるお料理担当の山本ありさんです。 裏読み不要、そのままなイラストでした。 さて、私も久々に鶏ハムを作ろうかな。 ストレス発散がてら鶏肉を綿棒で叩き潰して、美味しく食べたい。 ちなみに作中に出てくる困った調味料のひとつ「柚子胡椒」は、唐揚げの漬けタレにしても美味しいです。 「ナンプラー」は意外と万能に使えるようで、平野レミさんのお料理各種や、ツジメシさんのナンプラー鶏肉そうめんもオススメです。

はらへりエイリアンとひよっこごはん

料理が苦手な人にこそピッタリ #1巻応援

はらへりエイリアンとひよっこごはん ぼく 子新唯一
兎来栄寿
兎来栄寿

ハンバーグを作ったら「ダークマターバーグ」と呼ばれてしまうほど料理オンチな少女・摩訶子の家が宇宙人に侵略されてしまい、美味しい料理を提供しないと愛犬もろとも殺されてしまうという状況で、料理オンチでも作れる美味しいメニューを必死に作り続けるSF要素を交えたグルメマンガです。 1巻の目次は 第1話 UFOとスパニッシュオムレツ 第2話 大葉香るガパオライス 第3話 ピリ辛! 鶏チリかた焼きそば 第4話 ◯◯◯でルーローハン!? 第5話 リベンジ! 煮込みハンバーグ おまけ漫画① ふかふか野郎 おまけ漫画② プチバナナパンケーキ となっており、全部で7品のお手軽レシピを知ることができます。 友達の料理上手な栞奈ちゃんのヘルプを受けて料理がまったくできず苦手意識のある主人公でも作れる簡単なレシピとなっており、第1話のスパニッシュオムレツなどはフライパンも使わずに作れるので、料理初心者や苦手意識のある方こそ読んで作ってみて欲しい内容です。メニュー自体も小洒落ていて、味はもちろん見目も良さそうなので、家族や友人に作っても喜ばれるのではないでしょうか。 私も◯◯◯を使ったルーローハンは作ってみたいなと思いました。日本ではなかなかルーローハンを出してくれるお店も少ないですからね。なお玉子は半熟派です。 長ねぎや玉ねぎの簡単なみじん切りの仕方、チューブでないしょうがやにんにくの扱い方、料理酒と清酒の違いなどなど、幅広いメニューに使える知識や技術も少しずつ学んでいくことができます。一人暮らしを期に自炊を始めてみようか、という方にもお薦めです。 子新唯一さんの絵が、女の子も犬のバルバルもかわいくて良いです。帰ったときにすぐ駆け寄ってこず「あ、寝てたな」となるのはあるある。

カワセミさんの釣りごはん

釣りJKマンガ、流行ってきてる?

カワセミさんの釣りごはん 匡乃下キヨマサ
さいろく
さいろく

ゆるキャン△の釣り版のような感じ(雑) 放課後ていぼう日誌もそうだけど、どちらも釣りのアドバイスが細かく載っていて釣りをしてみたくなる。いいマンガだ。。。 こちらも九州ではあるが福岡が舞台であるというところで釣れる魚や時期なんかにも違いが出るのかな(放課後ていぼう日誌は熊本の県南なので九州の北東と南西で結構違う) 方言は似てそうだけどこっちは方言が強めである。 どちらも女子4人であり、この辺はもうけいおん!からの鉄板のような布陣なのだろう、きっと。 これが3人だと深淵に潜む百合要素が顔を出しづらいのだろう。きっとそう。 釣りごはん、最初は絵柄が安定しない感が強くて結構シワの描き方とかシルエットに癖がある+描きたいことが多すぎてゴチャついてしまってた感があったけど(あと肉感が強調されすぎ)4巻あたりからコメディタッチのノリが板についてきてまとまってきているというか、読みやすさが上がった。 そしてやはりオッサンはたまにしか出てこない方がいいのだと思った。 序盤はヒロイン(?)の兄だったり職場の人だったりオッサンの出番多かったけど、あんま人増やさない方がわかりやすい(考えてみたらその下り必要なかったねって話なら最初から居ないほうがいい)と編集が判断したのか、それともセンセイが学習されているのかわからないが、とにかく良くなってきているので応援していきたい。 にしても主人公ちゃんの身長設定低すぎる気はする。