商店街ものがたり

愛にあふれた商店街のものがたり

商店街ものがたり サンバ前川
野愛
野愛

人間模様がしっかりあって、とんでもなく悪いやつは出てこなくて、もどかしくなったりちょっとだけすれ違ったりしながらもすんなり読めてちゃんとエロい。つまりはとてもよいBLでした。 数年ぶりに帰った地元で、相変わらず可愛いけど大人になった幼なじみと再会するのがまず良い。 大人になったなあ…と思ったら大人になりすぎちゃってドエロいビッチになっちゃってるのも良い。 ドエロいビッチなのに相変わらず可愛くて、俺がいないとダメだって思わされちゃって、でも商店街のために誰よりも奮闘してる立派な人間になっていて…寂しいような切ないような気持ちになってしまうんですね。 テンポ良く進む割に主人公・翔大と幼なじみ・麻琴の心模様はしっかり描かれているので、しっかりがっつり感情移入できます。 純情ビッチ麻琴が可愛くて可愛くて仕方ないし、可愛いだけじゃなく芯の強さや愛の深さも伝わります。麻琴とそういう関係になってる商店街の男たちも案外いいやつらなんです。 いいですね。いい商店街ですね。これからもみんな幸せでいてくださいね…!という気持ちになりました。 BのLの作品のことを「山なしオチなし意味なし」なんて言葉であらわすこともあるけれど、人を愛したら山も谷もあるしハッピーエンド以外のオチなんていらないし人が愛し合うことに意味があるとかないとかどうだっていいじゃないか。 2人が幸せならなんだっていい。この商店街には愛がある。

しょくだま【単行本版】

料理漫画的こんなんじゃダメだガシャーンの前にご一読ください

しょくだま【単行本版】 風童じゅん
野愛
野愛

料理漫画でよくある「こんなんじゃダメだガシャーン」「これは失敗作だバシャー」みたいなシーンに心を痛めたことはありませんか。わたしはあります。 そりゃ野菜とか牛乳とか腐らせてしまったこともあるし、子どもの頃に給食を残したこともあるし、いついかなるときも食べ物を無駄にせず生きてきたとは言えないけれど…まだ食べられるものを捨てるというのは罪深い行為だと思う訳です。 そんな食べ物ガシャーン系主人公に読ませたいのがこの作品。 御膳所で不可解な死を遂げた主人公・魂之介の父。なんと父は粗末に扱ってきた食材の魂に呪い殺されたのだという。 その呪いを解き、成仏させなければ魂之介も呪い殺されてしまう…。 見てるか!?(ごく一部の)料理漫画の主人公よ!!と言いたくなるようなあらすじです。 人間から見たら野菜も魚も肉も食材ではありますが、もともとは命であるということを様々な角度から教えてくれます。 食材が人間に見える呪いがかかったお話はなかなかグロい描写がありますが、命をいただくってこういうことなんだよなあ…。 命によって生かされているということを改めて学べた作品でした。 ここまで読んでくれた方にはもちろんこの漫画を読んでほしいけれど、それ以上に失敗だガシャーン系の料理漫画キャラに読んでほしいです…!

黒真珠そだち【単行本版】

すべての狂えなかったひとたちへ

黒真珠そだち【単行本版】 意志強ナツ子
野愛
野愛

こういうのから解放されるのっていつなんだろうか。 はやく狂ってしまいたくて、新しい世界を開いてしまいたくて、アブノーマルに傾倒していく気持ちは正直わかる。溺れることで自分の精度が高まっていくような気がするのだ。 でも振り切れてるひとなんて滅多にいない。乳首にピアスを開けて女装AVに出てそらに見られながらワカマツとセックスをしたところでユウキは振り切れていない。側から見たら狂っている部類のひとかもしれないけど、ユウキは結局そっち側に行けない人間だ。おそらくそらも。 だからこそユウキはそらに見たいものを押しつけ、そらはワカマツに見たいものを押しつけ、都合よく崇拝するみたいに恋をしたんだろう。 あの人のようになりたい、あの人に受け入れられたい。それが実際のあの人とは違うものだったとしても。 自分の見たいものだけを見て、恋い焦がれることは間違っているのだろうか? ずっと、狂って振り切れて突き抜けてしまえば楽になれるんじゃないかって思っていた。 私は、おそらく多くのひとは、ユウキのところにすら届かない。狂えないことに気がついて、溺れるのを諦めて、うまく泳ぐしかない。 狂おしい日々に若気の至りとか青春とか名前をつけて忘れる日を待っている。 でも、忘れる日なんてくるんだろうか? そんな日々のことを「僕は今からでも輝けるのだろうか?」なんて眩しく思っているうちはきっと忘れることなんてできないんだろうな。 狂えないまま大人にもなりきれないひとに読んでほしい。