星屑家族

「親の資格」の法制化 #1巻応援 #完結応援

星屑家族 幌山あき
兎来栄寿
兎来栄寿

『マーブルビターチョコレート』や「二番目の運命」、「マイハートドライバー」などの幌山あきさんが送る2作目の単行本です。 『マーブルビターチョコレート』のクチコミでも描きましたが、幌山(と書いて読み方は「ぽろやま」)さんの描くマンガは本当に良いです。ジャンプ+で掲載となった読切もそれぞれ内容は全然違いますが、ただ「良い」という部分だけはすべて共通しています。出版社を横断していますが、短編集なども出して欲しいですね。 さて、この『星屑家族』ですが、「親になるのが免許制」という社会を描いています。 作中でも、 「親……扶養者というのは子どもに対して  無自覚な強権を得ています」 と語られる通り、しばしばその権力をもって暴虐を振るう親が存在します。また、扶養者たる資格を持たず本人の意志もないまま実質的に扶養者となってしまうケースもあります。ひとつの命に対して責任を持つべき存在である扶養者に、資質や資格を問うべきではないのかという話はしばしば出てきます。もしそれを実現したら、という思考実験として秀逸です。 子供の姿をした「扶養審査官」が扶養者になりたい者たちをジャッジしていく様はなかなかのディストピア感ですが、実際にその判断を行う者・される者の間に生じる歪みや困難が非常に的確に描写されています。 扶養者の資格を得た人は「正しい」人とされる社会で、それを望まず審査に落として欲しいと望む男性の下での生活が営まれていきます。そこで芽生える様々な感情と振れ幅が見所です。 ネタバレせずに言えるとしたら、繰り返しになりますが幌山さんの描く作品群のこのテイストは本当に好きだなぁということです。ひとつひとつのセリフも冴えていて心の内に響くものが多くあります。 読み終えたとき、1,2巻の表紙を見比べながら改めてタイトルの意味を考え返しました。星屑、スターダスト。美しく、儚いもの。僕たちも星屑のかけらである地球から発生し、その血はいわば星屑の液体であると歌った曲もありました。簡潔にして、秀逸なタイトルです。 単行本が上下巻同時に発売となったのは、英断だと思います。上巻から1冊ずつ買うことを否定はしませんが、上下巻一気に買ってしまうことを強くお薦めします。

彼と私のチ×チ×チャンス!!

チ。 -オチ×チ×の運動について- #1巻応援

彼と私のチ×チ×チャンス!! 花丘れもん
兎来栄寿
兎来栄寿

人類は本当におち×ち×が好きだと思います。 ギリシャに行ったときは、アテネでも離島でもどこのお土産物屋さんにも色とりどりのファルスが並べられていました。古代ローマ人も、おち×ち×に翼を生やしたものを魔除けにしていたとのこと。そのセンスに感銘すら受けました。 日本でも、「かなまら!」「でっかいまら!」と声を上げピンクの御神体を御輿として担ぎながら練り歩く川崎のかなまら祭は、例年5〜6万人を動員する大人気の奇祭として続いています。 『コロコロコミック』が行った「うんこちんちん総選挙」では、のべ数十万の投票結果で第1回・第2回ともちんちんの勝ちでした。最近でも『炎の闘球児 ドッジ弾平』の正統続編として始まった『炎の闘球女 ドッジ弾子』に登場するキャラクター「珍子」を巡って、大の大人たちが平日の昼間から大はしゃぎです。 『コロコロコミック』が国語学者にその人気の秘密を訊ねた記事は一読の価値ありです。 https://corocoro.jp/news/97249/ 前置きが長くなりましたが、 第1話「おちんちんチャンス到来!」 で始まり 第5話「初めての朝勃ちおちんちん」 で終わるおちんちんに満ち満ちた『彼と私のチ×チ×チャンス!!』1巻。 11歳のときの保健体育の授業でおちんちんが硬くなるという事実を知ったときの衝撃、通称「おちんちんショック」以来、性的な欲求というよりは「自分の体にはない未知なるものへの探究心」が高じておちんちんへの興味が暴走気味のヒロイン・モモと、彼女といい感じになりおちんちんを狙われるモデルの出雲とのラブコメです。 おちんちんがどうして、どうやって硬くなり大きくなるのか、見て触って確かめてみたい……。そして、遂にやって来る .☆.。.:.+*:゚+。 .゚・*..☆.。.:* お ち ん ち ん チ ャ ン ス .☆.。.:.+*:゚+。 .゚・*..☆.。.:* 本当に作中でもこのワードに豪華な枠が宛てがわれており、見どころです。果たして、モモはおちんちんチャンスを掴めるのか? その後も毎回のようにおちんちんチャンスはやってきます。チャンスの女神は前髪だけといいますが、おちんちんチャンスの女神に限ってはフサフサのようです。 人間の「知りたい」という欲求がいかに根源的で抗い難いものであるかは、近年だと『チ。-地球の運動について-』でも壮絶に描かれました。ラファウは地動説の美しさに魅せられ、モモはおちんちんの神秘に魅せられた。そこに本質的な違いなどありはしないのではないでしょうか。 性的接触に興味はなく「おちんちん目的」であるという歪みを抱えながら、普通のラブコメ以上にラブがコメっておりヤリチンであるはずの出雲が絆されていく様はいとおかし。かつてこんなにピュアな「おちんちん目的」があったでしょうか。ふたりの関係性がどうなって行くのか、楽しみです。 なお、巻末に収録の1巻発売記念4コマのポイントくんのところが個人的にツボでした。ポイントくんかわいいよポイントくん。 おちんちんに性的なものとはまた別の興味や魅力を感じる方は、読むと不思議なシンパシーを得られるかもしれません。