サチ録~サチの黙示録~

人類の未来は新小学一年生・サチちゃんの言動に委ねられた!

サチ録~サチの黙示録~ 茶んた
ゆゆゆ
ゆゆゆ

ただのお子様漫画と思ったら、なんだか違う。 「コタローは一人暮らし」は大人びた幼稚園児だったけど、こちらは根っこは似ているけどちょっと違う。 生意気だったり、ひねくれてたり、幼かったり。 ジャンプラのコメント欄で「昔のクレヨンしんちゃん」に作者のテイストを足した感じと表現されている方がいて、言語化しきれないもどかしさが解消した。 しんちゃん的なのか。なるほど。 本作は、サチの言動や周りの奇抜なキャラクターもおもしろいけれど、天使と悪魔が点数をひたすらつけているのもおもしろい。 「このクソガキがー!」と言いたくなるような言動にも天使は良いところを見つけて加点するほど天使だし、悪魔は悪魔らしく悪い方にそそのかす悪魔っぷり。 でもクソガキなのでそそのかされた悪行は、逆張りして止めてしまう(やめても事前の行為で加点済)。 彼らは人間審判のために人間界にいるのでそれが業務なのだけど、善行と悪行を淡々と、細々した日常生活から採点しているので、マメだなあと思ってしまう。 神様もなかなか良いキャラクター。そうか、神様だもの!そうだよね。 一話序盤は理解しきれず、んん?と思ったけれど、後半には印象が大きく変わっていた。 第一話を読み終えた頃には、独特の世界観にハマって読み進めていた。 語彙力なく表現すれば、おもしろい・天才・すごい。 ぜひ読んで、「サチ録」の世界に引きずり込まれてほしい。

ダイヤモンドの功罪

めっちゃ現代的な梶原一騎

ダイヤモンドの功罪 平井大橋
ピサ朗
ピサ朗

小学五年生で運動に異常な才能を持つが心はエンジョイ勢な主人公が、野球と出会う事で巻き起こしてしまう波乱とドラマなのだが、滅茶苦茶梶原一騎作品の様な雰囲気がある。 物理法則こそねじ曲がっていないのだが、主人公が競技をやるのが競技が好きで自発的というより、周囲に才能を見込まれ運命というか半ば強制的に競技をすることになってたり、主人公が強すぎて勝負という形にはなってないのだが、競技よりもそこから生じる人間ドラマの方を主軸としてたり、全体的に漂う陰鬱で重い悲劇的な雰囲気は、かなりあしたのジョーや巨人の星とかの60年代スポ根ドラマに通じるものがある。 とはいっても、基本的にキャラデザはイケメン少年で、物理法則が現実そのものという点でやはり現代スポーツ漫画らしい部分も多い。 ただそういうストーリーの為とはいえ、主人公である綾瀬川の運動能力が完全に人間離れしていて、受け入れられるよう慎重に書いているにせよ、もはやゲームやギャグ漫画に片足突っ込んでるレベルで尋常ではなく、冷める人も相当居そうに思う。 しかしそういう並外れた才能だからこそ、勝負を通じたスポーツマンシップの美しさの裏にある残酷さ、才能に振り回される大人も含めた周囲、エンジョイ勢とガチ勢の溝などと言ったストーリーが映える部分も多く、特にその才能に魅せられてしまう大人というのは野球という競技と、主人公の圧倒的な運動能力から強烈な生々しさが漂っている。 主人公以外のキャラも弱小チームにせよ強豪チームにせよ、それぞれの年齢や居場所に合わせたメンタリティをしているために抱く苦悩も描かれているが、主人公自身もその能力の高さゆえに馴染めない苦悩も描かれていて、強烈な負の面白さが出ている。 この手の「才能により歪んでしまう」スポーツ漫画としては黒子のバスケとかが記憶に新しいが、そういう才能が複数人居たお陰でバトル漫画的になっていたあちらに比べると、たった一人だけそういう才能を持っている事により周りが一般人である分、その人間ドラマが際立っている。 プロトタイプに当たる読み切り(高校・プロ年代)も幾つか存在するが、こちらはあくまでプロトタイプとして別物と思っていて、こちらで描かれた未来に収束するかは未知数。 野球を題材としてはいるが、才能により才能の持ち主も含め全てが振り回されるドラマは非常に生々しくも強烈で面白い。 幸か不幸か大谷翔平という、一昔前なら漫画でしかありえなかった活躍をする人間が現れていて、ギリギリでリアルとファンタジーのバランスはとれているように思うが、主人公が本当にゲームかギャグ漫画並に突出した運動能力があるので、ココで脱落する人もいるように思う。