PICK UP PRESSマンガの感想・レビュー5件漫画家主夫、日本を見る #1巻応援台湾人主夫奮闘記 in Tokyo 米奇鰻あうしぃ@カワイイマンガ『T子の一発旅行』なんかでも台湾人視点の日本人像が面白いのですが(あれはちょっとはっちゃけすぎだけど)、この『台湾人主夫奮闘記 in Tokyo』では一冊通して、東京に越してきた台湾人による鋭い日本観察が楽しめます。 通読した感想としては「なんか日本ごめんね……」ですかね。 まず、日本で働くことになった台湾人女性の描写がなかなかエグい。 真面目で優秀だけどメンタル弱めな彼女は完璧に日本の会社に順応するけど、いつも疲労困憊。日本の会社って、真面目な人ほど損するように出来てるよね。 そんな彼女を支えようと家事にケアに奮闘する漫画家兼主夫ですが、忙しい中でも街中、スーパー、風邪薬、語学学校、そして妻と、観察が止まらない。 良い点もそして悪い点も、あくまでも面白おかしく伝えられるので、笑えるけど確かにその通りだから胸が……痛い……。 また夫として、働く妻を真剣に支えるスタンスがすごいし、学ぶところが多い……というかこれこそ、胸が痛い男性が多そう。アジアの男にこんな人いない!(このセリフ、作中から探してみよう!) そんな夫にちゃんと癒される妻。最終的に「この二人が惚気てくれればそれでいっか」と明るい気持ちになれるのですが、でもやっぱり全体的に「ごめんよ……」と言いたくなる、そんな作品でした。 (個人の見解です!!)台北女学生は食の交差点を駆ける #1巻応援友繪の小梅屋備忘録 黒木夏兒 清水あうしぃ@カワイイマンガ日清戦争の下関条約で割譲が決まった台湾。日本の統治が始まってから、多くの日本人(内地人)が台湾に渡り、様々に台湾人(本島人)と関わりはじめます。 本作の主人公・台北に住む友繪の家は、日本式の料亭。友繪の祖母一家が明治期に、どのように台北に根を下ろしたかは番外編に描かれていますが、本島人と内地人の関わり方、本気でその地に根を下ろす事が丁寧に描かれていて、考えさせられます。 本編はそんな時代を知らない大正の女学生・友繪のお話。彼女は級友たちと、女学校の園遊会のおもてなし料理を探すべく、おじに連れられて食に溢れる台北を食べ歩き。 和食も洋食も揃った台北。それだけでも私には驚きなのですが、やはり気になるのは台湾料理。ですがここで彼女たちは壁にぶつかります。 いくつかのピンチに萎れそうになる友繪。しかし友繪のとった行動、分け隔てない真っ直ぐな気性は、ある奇跡を起こします。そこからの快進撃、不測の事態を咄嗟の判断で回す現場力。これはワクワクする!そして園遊会の料理絵図、豪華絢爛! 最後まで読むと、友繪の気性が祖母や母から受け継がれているのが分かって嬉しくなるし、友繪の今後が(そして出会うキャラの今後も)とても楽しみになります…… ……え、続きがあるのかって? あるんです!2巻はすでに台湾で発売中!そして3巻も……?大正時代の台湾における食文化 #1巻応援友繪の小梅屋備忘録 黒木夏兒 清水兎来栄寿近年、台湾のマンガが話題に上ることが多くなってきました。 昨夏には日本橋に「台湾漫画喫茶」ができたり、 『緑の歌 - 収集群風 -』が各マンガ賞で上位になって話題になったりしていたのも記憶に新しいところです。 最近では『モーニング』の『紛争でしたら八田まで』でも台湾編をやっていたこともあり、台湾への興味関心は高まっている昨今。 『千と千尋の神隠し』の舞台のような街・九份など、一度は行ってみたいなと思う台湾。 本作は、そんな台湾の食文化について大いに学びながら楽しめる物語です。 1920年代を舞台に、老舗料亭の娘である友繪(ともえ)を主人公として、まだ女将である祖母からはひよっことしか見られていない彼女の奮闘記が綴られていきます。 私も、料亭ではないですが300年の歴史ある旅館で働いていた経験から、いかに心を尽くしてお客様をおもてなしするか、予想のつかないアクシデントが起こった際にどう対処するかなど共感できる部分が多々あります。 「雑用なんて一つもないのよ」 といった言葉や、外国の方と接する際には拙くても努力して相手の言葉を使うようにすることで相手から信頼感を得ることなど、時代を経ても普遍的だなと感じました。 友繪が、家族や仲間に助けられながらさまざまな挑戦をして、ときには失敗もしながら少しずつ成長していく王道感も心地よいです。また、女将の過去にあたる料亭の成り立ちの物語も面白く、バックボーンがしっかりと語られることで全体が引き締められています。 愛玉や割包、鶏管や炸香蕉など現地で食べてみたいメニューがたくさん出てきてお腹が減りますので、ダイエット中に読むのは向かないかもしれませんが、そうでない方にはお薦めです。こんな歴史、君は知ってる? #1巻応援蘭人異聞録-濱田彌兵衛事件- Kinono 黒木夏兒あうしぃ@カワイイマンガこの物語は『国性爺合戦』の鄭成功が台湾に政権を立てる少し前のお話。日本は江戸時代の初め、まだ鎖国政策を敷く前。 浜田彌兵衛(やひょうえ)の貿易船(御朱印船)の、ライバルはオランダ。彼らは台湾でしのぎを削り、それに巻き込まれたのは台湾原住民でした。 鄭氏台湾以前の台湾の歴史は資料が少ないのだそうで、オランダと日本で語り継がれる彼らの諍い「浜田彌兵衛事件(タイオワン事件)」は、数少ない台湾の歴史的証言とも言えます。 描かれるのは台湾原住民・シラヤ族。物語の主人公はシラヤ族の青年・ダライ。 よそ者を毛嫌いするダライと、何かと対立してしまうオランダ人測量士・フィル。シラヤ族が浜田彌兵衛に連れられて江戸に行ったりオランダ東インド会社に行ったりする中で、二人はいがみ合いながら時に共闘したり。 日・蘭・シラヤ族の三者の思惑が入り乱れ、それぞれの文化も交錯する。全く違う文化の取り合わせが見ていて楽しい! ニンジャ・ショーグン・ハラキーリ!からナンパな西洋人など、類型的な人物表現もお堅い歴史物を華やげてくれて、楽しさいっぱい! 実はこの物語、かなり多くの人物が実在したか、モデルがいる模様。ちょっと誰も知らない歴史に詳しくなれて、漫画としても血湧き肉躍るこの作品、読まない手はないですよ! (そしてシラヤ族の族長の娘・アーシャはカワイさいっぱい!) 電子書籍限定で描かれる、ある“贋作家”にまつわる狂乱の物語 #1巻応援贋作 トザキsogor25この作品のメインの登場人物は4人。 まず、画家を目指しているがうまくいかず、有名な作品のニセモノを描く“贋作家”として生計を立てているウォルトという男。 彼の描く贋作を高く売りつけている詐欺師の男・エド。 そして、どうやらエドが抱える借金を取り立てようとしているらしいアイクとジョニーというギャング2人組。 現在の活動に罪悪感を抱きながらオリジナルの絵を描けないでいるウォルトと、人当たりは良いけど何か秘密を抱えている雰囲気のエド。 そんな2人とアイク・ジョニーのコンビがそれぞれ別々の形で出会い、やがて4人の運命が大きく変わる事件へと発展していきます。 ウォルトとエド、、アイクとジョニーという2組の関係性が面白く、それを独特のコマ割りとスタイリッシュな絵柄で絵柄で描き出しています。 電子書籍限定での発売ですが、ぜひこの物語の結末が生み出す大きなカタルシスを体感してみてほしい作品です。
『T子の一発旅行』なんかでも台湾人視点の日本人像が面白いのですが(あれはちょっとはっちゃけすぎだけど)、この『台湾人主夫奮闘記 in Tokyo』では一冊通して、東京に越してきた台湾人による鋭い日本観察が楽しめます。 通読した感想としては「なんか日本ごめんね……」ですかね。 まず、日本で働くことになった台湾人女性の描写がなかなかエグい。 真面目で優秀だけどメンタル弱めな彼女は完璧に日本の会社に順応するけど、いつも疲労困憊。日本の会社って、真面目な人ほど損するように出来てるよね。 そんな彼女を支えようと家事にケアに奮闘する漫画家兼主夫ですが、忙しい中でも街中、スーパー、風邪薬、語学学校、そして妻と、観察が止まらない。 良い点もそして悪い点も、あくまでも面白おかしく伝えられるので、笑えるけど確かにその通りだから胸が……痛い……。 また夫として、働く妻を真剣に支えるスタンスがすごいし、学ぶところが多い……というかこれこそ、胸が痛い男性が多そう。アジアの男にこんな人いない!(このセリフ、作中から探してみよう!) そんな夫にちゃんと癒される妻。最終的に「この二人が惚気てくれればそれでいっか」と明るい気持ちになれるのですが、でもやっぱり全体的に「ごめんよ……」と言いたくなる、そんな作品でした。 (個人の見解です!!)