(とりあえず)名無し
(とりあえず)名無し
1年以上前
BILL WATTERSONの『CALVIN AND HOBBES』は、シュルツの『ピーナッツ』(要するにスヌーピーですね)に並ぶ……いや、ある意味、熱量においてそれを圧倒的に凌駕するファンを持つ、ウルトラ・メジャー漫画である。 「"CALVIN AND HOBBES"が自分の生涯最高のマンガだ」と語るアメリカ人は、本当にたくさんいるのです。 読めば、その意味は分かる…のだが、大変残念ながら、日本でこれまで翻訳されたもの(集英社刊『カルビンとホッブス』柳沢由実子訳と、この大和出版刊『カルヴィン&ホッブス』かなもりしょうじ訳がある)は、あまり適切な編集や翻訳がなされていると言えず、その真髄を味わうのに少し問題がある上、それでさえも絶版状態だ。 現状は、原著である英語版を読むことが最良の選択ということになる。 『ピーナッツ』が、翻訳者に谷川俊太郎を得ることのできた幸運を思わずにはいられない。 …とはいえ、スヌーピー知らない日本人はいなくても、『ピーナッツ』読んでいない人はたくさんいるだろうから、カルヴィンとホッブスの漫画が日本で知名度がないのは、それはそれでしかたないことかもしれない。 日本では、本当に海外の漫画が読まれませんからねえ。 (著者のビル・ワターソンは、変わり者だらけの世界の漫画家の中でも一頭地を抜く天邪鬼な天才でして、大ヒット作でありながら、ありとあらゆる映像化やグッズ化をほぼ完全に拒否しているのです。なので、スヌーピーみたいなキャラクター展開が一切できない) しかし、優しさと詩情に溢れながら、汚い言葉と暴力衝動もムンムンのパンキッシュな少年物語であり、傑出したイマジナリー・フレンド物でもある、このCALVIN AND HOBBESは、紛れもなく「本当に面白い漫画」として、今も世界中で読まれているのです。 「寂しがり屋のガキ」な心を持った人には(つまり「漫画好き」には)、絶対「刺さる」と思いますよ。
mampuku
mampuku
1年以上前
 「BLACK TORCH」のタカキツヨシ先生新作。手堅い能力バトルな前作とはうってかわって終末後の世界を描いたSFです。ど迫力のメカアクションにあっと驚く展開、「BLACK TORCH」と比べてもスケールアップが著しいです。  そして変わらず素晴らしいのがキャラの魅力的なこと。感情豊かな人間の少女ルゥ。人間らしいコミュニケーションを会得した、AIを搭載したロボットたち。人間(AI?)ドラマとしても面白いです。  人工知能を決して低く見ていないのが実に今どきの近未来SFって感じでいいですね。「AIには理解できない人間どうしの機微」というのは将来的になくなるそうです。機械が人間を知性で上回り、強力な機体をもち、自立した活動を行えた場合、人間は彼らの下位的存在でしかなくなってしまうのでしょうか。絶滅後の生き残りであるルゥは、その存在の珍しさから好奇心を満たす存在としてドロイドたちに可愛がられています。あるいはクロムのように、ルゥを守ることを使命としてプログラムされたドロイドもいます。どちらも見かけ上は人間が抱く愛情となんら変わりなく思えます。人間の感情も脳内物質の伝達とニューロンの発火からなるアルゴズムといいますし、作中のように高度に発達しいたドロイドと人間の差なんてあってないようなものかもしれません。