ナベテツ
ナベテツ
1年以上前
7月の銃撃事件が起きたことにより、本来著者が描きたかったこととはまた別の意味を持つことになったことが、作品にとって幸福なのか不幸なのかは分かりませんが、この国において、他者を搾取する新興宗教が存在する限り、この本は読まれ続けるべきだと考えます。 実在の宗教団体の信者を親に持つ、7人の体験を元にしたノンフィクションは、読者にとって決して遠い出来事ではありません(実際、それらの教団の施設は、身近な所に存在しています) 人間の悩みを減らし、心を救済することが、宗教の本来の目指す姿だと、個人的には考えます。ここで描かれる宗教は、共同体によるぬくもりを与えながら、そこではお布施という名前の収奪が繰り返される、どこまでも「汚い」現実が描かれています(お布施以外にも、様々な形での収奪が描かれています)。 最初の連載が、ある団体からの圧力で中止に追い込まれたことが、後書きにより明言されています。恐らく、広告出稿という形で、様々なメディアに圧力がかけられているであろうことも、容易に想像させられます。 言うまでもないことですが、人間は生まれてくる場所を選ぶことは出来ません。全ての宗教2世に、魂の休まる日が 訪れることを、願います。
まみこ
まみこ
1年以上前
映画『この世界の片隅に』いや、どうにもこうにも大傑作ですよ。 私も映画館で3回観ましたしね。 ただ、あれが大ヒットしてしまうのも、ちょっと居心地悪いんですよ。 欠食児童も、傷痍軍人も、片端の乞食も、被差別部落民も、強制連行された朝鮮人労働者も居ない、そんな戦中の呉なんてウソだし、ぬるいまやかしだろ?って思うんです。 ここら辺、他の人と、広島との地理的/心理的距離感の差があるのは認めます。 私は近過ぎるんです。 で、戦時中の広島を描いた作品って、他にないのかな?って思って調べても、全然無いんです。 しょうがないですね、どうしたって(所謂)「ヒロシマ」と言う性(さが)を帯びてしまうので、よっぽどの覚悟がないとダメなのです。 やっと本題なのですが、「五色の舟」は、太平洋戦争末期の広島を舞台にしたお話です。 ジャンルは、人によって捉え方は色々でしょうけど、私は(所謂)「怪談」だと思ってます。 怪談と言うのは、妖怪や幽霊を反射として、人間の業や愚かさを、面白おかしく/残酷に/切なく/美しく描くものなのです。 はい、読者は(所謂)「神の視点」を持っているので、昭和20年の夏、広島に住む、”特別な家族”が、どういう結末を迎えるかは、読んでいるうちに薄々気付くわけですけどね。 そう、この作品は、妖怪「件」を通して、近年の最大の愚行である、太平洋戦争の愚かさを、私たちに教えてくれ、その上で、私たちは、最後の結末の、その美しさと切なさに呆然とするのです。 だからこそ、色々な台詞が、重く刺さるのです。 「立派な建物だろう 産業奨励館ていうんだよ」 「あのきれいな灯り… また見たいわね 早く戦争が終わったら……」 「みんなが 僕を見て 足を止めるのは 僕が 特別な子供だからだ」 「特別な子供が 特別なお父さんのために 走っているからだ!」 「みんなも! ほかのみんなも幸せに!」 幸せを願って実現した世界では、”特別な家族”は緩く解けていくのですが、その因果の是非は、皆さん読んで確かめて下さい。 この、切なく、残酷で、柔らかく、優しくて、美しいラストを読めただけでも、私は幸せです。 (原作者、津原泰水が2022年10月2日に亡くなったことを受けて、2017年に書いた文章を思い出して書き直しました)
酒チャビン
酒チャビン
1年以上前
名門・PL学園高校野球部出身の方によるPL学園マンガです! 実はわたし、あろうことかメルカリ等でPL学園の帽子やTシャツを買ったことがあるほどのPL学園ファンで、昨今活況を呈しているユーチューブ界隈のPLものはほぼ全て拝見しているのですが、その中で面白おかしく触れられていたことがそのままマンガになっております!!面白か!!! YouTubeでは卒業生の方々が、当時のことを面白おかしく話されてますが、やってる当時は信じられないくらいの苦しみがあったと思います。それを乗り越えられたのはやはり甲子園優勝という目標に対する強い想いがあったからだと思いますし、そういうこの世の地獄的なところを一緒に潜り抜けてきた友達との固い絆は羨ましく、自分もかくありたいと願います。 訪れよ!困難! あとこれも大事だと思うのですが、PLの上下関係とかしきたりとかに注目が行きがちですが、肝心の野球パートもさすが名門PLでやられていた著者の方なので、かなり奥深い描写もあり、野球マンガとしてもかなりレベルが高いと思います。野球もうまくてマンガもうまいなんて、そんな方が世の中に爆誕し得るのですね。すごか!!