兎来栄寿
兎来栄寿
1年以上前
やしろ学さんの名前を知っている人は少なくても、「叢鋼-ムラハガネ-」や「夏と神輿と巨大怪獣」といった作品を覚えている方は結構いるかもしれません。 「叢鋼-ムラハガネ-」を読んだ時は圧倒的な画力に驚嘆し、すぐにでも連載が始まるかと思っていました。 その数年後、横田卓馬さんとの共作である「夏と神輿と巨大怪獣」が登場した時も「あのやしろ学さんが!」となりましたが、その後暫く音沙汰がなかったので何をされているんだろう、と思いながら10年近くが経ち、遂に遂に個人連載作品である『戦車椅子-TANK CHAIR-』が登場!  どこへ行っていたンだッ チャンピオンッッ 俺達は君を待っていたッッッ やしろ学の登場だ――――――――ッ と叫びたくなる気分です。 最初はApple Books限定で知る人ぞ知る作品となっていましたが、マガポケでの掲載を経て、本日遂に単行本が発売となりました。 そして、肝心の内容ですがこれがまた最高なんですよ! まず問答無用で絵が良いです。画力はますます磨きが掛かっており、特にアクション描写は疾走感全開。魅せる構図も演出も豊富。ページを捲るたび脳から色々なものがドッパドパに溢れてきて気持ちいい! タイトルにある「戦闘椅子」のデザインもクールで、ロマンの塊。キャラクターについても、カッコいいキャラやかわいいキャラ、味のあるキャラが盛り沢山です。おまけページの騰子かわいい。 そしてまた、ストーリーの根幹となる設定が非常に面白いです。 「殺意を向けられている時だけ意識を取り戻す」兄のため、妹は最高の殺意を向けてくれる相手を探し求め続ける。 バトルマンガにおいて重要な主人公の弱点として斬新さもありながら、面白い駆け引きを生む制約としても秀逸です。 そしてまた敵を倒した後、束の間だけ取れる兄妹のコミュニケーションが良いんですよね。ここにも設定の妙が強く生きています。ダークさもありながら、根底にあるのが兄妹の絆であることで感情移入がしやすい作りになっているのも巧いところ。 バトルアクション好きの方も、そうでない方もまずは1話だけでも読んでみてください。言葉でなく心で「理解」ります。
ピサ朗
ピサ朗
1年以上前
ジョジョは各部でかなり作風も内容も傾向も変わる作品だけど、自分が一番好きだと言えるのは4部。 舞台は日本の町一つ、ラスボスはただの殺人鬼と、スケールの大きさで言えば歴代でも小さいのだが、その分、身近な恐怖や能力者が生きる世界という物が見えやすく、想像力を刺激される。 出てくるスタンド能力も直接戦闘には役に立たないようなスタンドが多いのだが、見事に幅が広く活用悪用、非常に多彩な使い方を見せてくれる。 この「その世界にいる能力者たちの日常生活」感は選ばれた実力者ばかりの3部や犯罪に利用している5部に挟まれてる分、かなり独特な物があり、リアルタイムで読んでいたというのも有るが、世界の生活感や地に足のついた空気が非常に気持ちよかった。 ただ当然ながら特別な能力者が普通の日常生活を送っているとも限らないと悪用する犯罪者も出てくるのだが、こいつらが実に醜悪で生活感がある分、日常に潜む恐怖とも言える怖さや凄みがあり、能力以上に能力者、つまりは人間が怖いと描かれていて凄い。 そして同時にスタンド使いではないただの人間がキーマンとしても描かれていて、ゾクゾクする。 ジョジョは人間讃歌だと言うが、まさにこの4部こそスタンド能力が有ろうが無かろうが、人間の悪意や醜さ弱さを描きつつ、人間の善意や美しさ強さを描いているのではないかと感じる。 とはいえ先述したように、スタンド能力の多様性も随一であり、バトルに日常に様々な面で活躍するスタンド達も非常に見応えがある。 「弓と矢」や承太郎、ジョセフ等2,3部も読んでいた方が良い場面もあるが、基本は超能力者達の居る町の日々だと分かっていれば十分楽しめる内容で、入門用のジョジョとしてもオススメ。