つづきはまた明日

漫画版『子供の情景』には小さな痛み

つづきはまた明日 紺野キタ
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

一年前に母を亡くした藤沢家。小五の兄・杳(はるか)と妹の小一・清(さや)は、隣に越してきた原田家の一人娘・小五の佐保を見て驚く。 「お母さんの、子供の頃の写真とそっくり……」 ◉◉◉◉◉ 男女なのに似ている杳と佐保。佐保に親しみを感じる清。杳と似た雰囲気を持つ杳の幼馴染の綾瀬ことみ。不思議な縁で繋がる彼らには、取り立てて大きな事件もドラマも無い。優しいタッチと植物の装飾で描かれる「夢と現」の日常は、明るさも切なさも子供らしい下ネタすら可愛らしく包摂して、ただ其処にある。 彼らの日々を綴りながら、子供の感性について、子供・大人双方の視点から描かれる。幼い清の空想世界を楽しむ大人。少し遠くを見る杳の詩情に魅せられる佐保。人の心に寄り添う佐保の優しさ。子供を見守りつつ自らの心を見つめる大人達……そこにある感性は豊かだ。 楽しい事ばかりでは無い。折々に亡き母を思う兄妹は、時に感情の処し方に迷い、それでも日常を、悲しみ切なさと共に笑って生きる。その在り方は、何があっても「生きていかなければいけない」私達の心の処方箋でもある。 シューマンの楽曲よりは、心が「痛む」感覚のある『子供の情景』と言いたい。

すみっこの空さん

小1と亀、対話と鮮やかな発想の書

すみっこの空さん たなかのか
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

亀のプラトンは主人と引っ越したギリシャで、師たるソクラテスと出会う。主人を神さまと呼ぶソクラテス先生と、日々を共にしながら交わす対話は、プラトンを哲学の深淵へと誘うのでした……。 ☆☆☆☆☆ という感じのプラトン(亀)のモノローグで進む本作。とにかく驚く程の「鮮やかさ」に満ちている。 ソクラテス先生と呼ばれるのは、小1の少女・空さん。彼女の発想には、軽やかな飛躍と本質的な物の捉え方がある一方で、常に人を肯定し人の背を押す優しさがある。触れた瞬間、迷える人の目の前がパッと開ける様な、鮮やかな言葉。 その鮮やかさは、都会で負けて帰郷して来た主人、田舎から飛び出したい女子高生といった、こんがらがった人達を救っていく。彼らの行く先のエピソードも、日々を迷走する私達の救いとなる物語だ。 空さんと級友達のコロコロしたフォルムと、(日本の)田園風景の鮮やかさが相まって、そこは神の庭なのか?空さん達は天使なのか?と思う程の、愛らしくも神々しいイラストレーションが展開され、癒される。宗教画の天使図の中で、プラトンと一緒に空さんの「てちゅがく」に何度も驚嘆する「しんはっけん」に満ちた書だ。

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