兎来栄寿
兎来栄寿
1年以上前
あまりにも切実で、あまりにも強く共感する所があって、読んでいて名状し難い感情に襲われます。大好きです。 近年持て囃される「編集者不要論」。誰しもが情報を発信できるようになった今の時代、作家も個人で電子書籍を出版することが可能になり、宣伝も編集者より作家がSNSを活用して行った方がむしろ効率的な場面すらある世の中。 旧来の枠組を超えた現代の編集者に求められる仕事というのも沢山あると思いますし、編集者がいなかったら即打ち切られていたりそもそも誕生もしなかった名作がどれだけあるだろうと思いもするのですが……。ともあれ時代と共にマンガの在り方が変わり、それに伴って編集者や出版社、その周辺の在り方も変化を余儀なくされている過渡期であるのは事実であると思います。 そんな時代背景をベースに、ファッション雑誌編集部からやって来たマンガのことなんて全然解ってなさそうな若い女性編集者に気を揉むベテラン作家のお話として始まる本作。最初は少しゆるい感じで始まりながら、1巻は強烈な終わり方をします。その後の展開を解った上でまた1話から読むと何とも言えない味わいがあります。 単行本の続きがすぐwebで読めますし、そこからが真骨頂となっています。特に 「私が世界と繋がれるのはマンガだけだから」 というセリフは共感というレベルを超えて「これは私だ」と思わされて泣けました。ぜひ最新話まで追ってみて欲しい傑作です。
たか
たか
1年以上前
2年ぶりに新刊が発売されていることに昨日気づいたのでまとめて一気読み。やっぱめっちゃ面白れ〜〜!!目が良くて立体を意識して描ける貴重なセンスを持つものの、技術は完全ド素人のユキムラが、1年バチバチにしごかれてものになっていく様が最高! https://comic-days.com/episode/13932016480030302093 小手先の技術を教えた方がすぐに使えるようになり、ユキムラ自身も周囲も楽なのだけれど、監督の希望は「ユキムラの才能を殺さずに、(ベテラン同様)動画の本質を正しく理解したアニメーターに育てる」こと。 監督はユキムラが辞めるかもしれないリスクを理解したうえで、普通より厳しく指導し育てることを選ぶ…。 もしこれが今現在の現実世界を捉えたドキュメンタリー映像だったら、法律やパワハラが気になってしまうかもしれない。 しかし、これは若者の明るい成長物語漫画なので、「上司のしごきは間違いなくストーリー上で、主人公の成長に必要な・正しいことである」と100%安心して読むことができるところが好き。 技術はド素人だけど、アニメへの情熱があり、(新人にはわからない)センスがあるユキムラ。 超有名漫画家の娘で技術はピカイチだけど、アニメへの思いはいまひとつのまりあ。 原画に憧れていたが、九条監督に動画の腕を評価されたことで動画検査を務める富士先輩。 かつて監督と副監督の間柄だった九条と芹澤。 何より花村ヤソ先生自身が元アニメーターで、2003年頃Production IGで働いてらしたということで、実際に登場する人物の言動の説得力がすごい。そしてキャラ同士がお互いに抱く複雑な感情は傍から見ていて本当におもしろい…! こういう若者が厳しい訓練を通じて一人前になる話は、読むと元気が出るのでどんどん読みましょう! https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1705/06/news015.html
なかやま
なかやま
1年以上前
自分はアニメからこの作品に入ったのですが、4コマと言うジャンルの枠を超えている素晴らしい作品で、主人公のびんちょうタンの生活を美しく描いていると思っています。 内容は主人公のびんちょうタンの貧しくも清らかに慎ましい生活を中心に描かれたもので、彼女の友人の話や学校へ行きたいなど、本人の世界が徐々に広がっているところが見ていて、心があたたかくなります。 特に、おばあちゃんの話は10年以上たっても、自分の心に刺さっています。 1巻前半の雰囲気とは後半から大きく変わっていくので、試し読み出来る部分と話の軸がちょっと変わります。(ちょっと注意ですが、読んでほしい) wikipediaをみると、即興で考えたキャラクターがひっそりと雑誌の片隅で始まり、徐々に人気が出てアニメ化とのことでした。 自分がこの作品を大きく評価しているのは、その即興で生まれたキャラクター達に命を吹き込んで且つ育て上げた作者の 江草天仁 さんの存在です。 例えば、 びんちょうタンが頭につけている「炭」ですが、コレは単純に備長炭のキャラクタだからつけている、というよりも村には「炭をつける」という風習があり、伝統を重んじる家庭の子供は炭を付けている と言う感じです。 そして、全4巻の作品ですが これ・・・同人誌版で『学校編』が存在します。 連載が終わった 2008年から同人活動として連載を続けて、2013年にまとめた本が発表されています。 これは、きっと作者さんがびんちょうタンを学校に行かせてあげたい、という優しい思いがあったのだと考えます。 大切に描かれ、大切に育てられた作品です、是非
自分はアニメからこの作品に入ったのですが、4コマと言うジャンルの枠を超えている素晴らしい作品で...
兎来栄寿
兎来栄寿
1年以上前
『君の膵臓を食べたい』の住野よるさん×『ミッドナイトブルー』の須藤佑美さんという豪華なコラボレーション。Audible版では悠木碧さんが朗読を務めたことも話題となりました。 食べることと本が大好きで、図書館司書を務め、主人公の三歩に私は共感しきりでした。特に以下の二点。 子供の頃から図書館が大好きで通い詰めており、図書館の独特な匂いが好きで、散らばった本を元に戻す作業をするだけで幸せになれるところ。 また、ブル○ンのお菓子をこよなく愛して高らかに愛を謳うところ(アル○ォート、ホワイト○リータ、チョコ○エール、ルマ○ドetc... 素晴らしい逸品ばかりですが、バーム○ールは私の中でもとりわけ神です。バーム○ールがなる樹があったら全力で手に入れて栽培したい)。 そんな彼女が過ごす、何の変哲もない日常がゆるりと心の中に入ってきます。 前から行きたかったラーメン屋で大盛りを頼んで、その後に鯛焼きも食べて、微睡んでいたらいつの間にか夕方になっていて朝になったかと焦って、夕飯もガッツリ食べた後にお菓子にも手を伸ばす。そんな怠惰な等身大の休日の様子に心が解れます。 かと思えば、突然シリアスなテーマに切り込むシーンもあり、ただゆるいだけではなく。 職場の先輩たちもそれぞれに魅力的で、私は優しい先輩も怖い先輩も好きです。 こんな時代だからこそ、三歩の日常からもたらされる安堵感により価値を感じます。
野愛
野愛
1年以上前
壊れるほど愛しても3分の1も伝わらないシロクマの愛に切なくなったり、優しくされて愛されてもなお恐怖が拭えないアザラシにもどかしくなったり。 かわいいかわいい絵柄でほのぼの癒し系コメディの形をしているけれど、なかなかどうして壮絶なラブストーリーです。 食い物であるはずのアザラシに恋したシロクマ。天敵であるはずのシロクマから熱烈な求愛を受けるアザラシ。どちらも必死なんです。だからこそ笑えるし、だからこそ応援したくなるんです。 でも、どちらか一方に歩み寄れというのも無理な話なのでやっぱり切なくてもどかしくなります。 人間同士のラブコメディだったら、いやいやいい加減信じてやれよってアザラシに言いたくなるし、シロクマ怖がられてるんだよちょっと考えろよって言いたくなっちゃう気がします。動物だからこそどちらの気持ちもわかって狂おしくなっちゃう!! 人間同士なら食うか食われるかなんてわかりやすい生と死はなかなか起こらないけれど、信じる裏切られるの怖さは常に付き纏います。 信じてもらうための手っ取り早い魔法なんて結局なくて、怖がられてもシロクマみたいに「君が好きだ、大切だ」と言葉を尽くすのが一番の近道なのかもしれません。 同じ動物でも、同じ人間でも、わたしとあなたは違うから。信じてもらうことを諦めちゃいけないし、受け入れてもらえるのが当たり前だと思っちゃいけない。 シロクマみたいに真摯に愛を伝えないといけないですね。
名無し
1年以上前
金沢で生まれ育った女子高生・花菜は高校では写真部所属。 写真が好きだが将来は写真の道へ、と決心しているわけではない。 母親が反対しているから、というより、結論を先送りにして、 母親と本気で向かい合わない中途半端な状態だった。 夏休み、花菜はドイツから来た写真家・ユーリと知り合い、 撮影の手伝いをすることになる。 ユーリは父がドイツ人、母が日本人。 ユーリが物心つく前に離婚した母は 故郷の日本の古都、ここ金沢にいるらしい。 ユーリの来日・金沢訪問は母親を探すのも目的だった。 だがユーリは必死にガムシャラに母を探すつもりはないらしい。 「写真も出会いも偶然の産物」と。 そんなユーリに花菜は、金沢出身の文豪・室生犀星の詩、 「誰かをさがすために」を読み伝える。 この漫画は北陸新幹線の金沢開通を記念し連動した、 タイアップ的な漫画らしい。 だからだろうけれど、金沢観光案内的に、 写真撮影スポットを巡り紹介する面が盛り込まれた ストーリーになっている印象を受けた。 観光案内漫画としても良く出来た漫画だと思う。 しかしカメラや写真撮影に知識がない自分には、 この漫画を写真や撮影が好きだ、という人からみたら どう評価するかは判らなかった。浅いのか深いのか。 良く言えばライト感覚での金沢紹介漫画、 悪く言えばインスタ映え撮影スポット紹介漫画、 そんな漫画かな、と思いながら読んでいった。 だが外国人とのハーフでありながら金沢の文化や街並みを愛でて、 それでいて母親に焦がれ、慕いながらも自然体でいるユーリ、 普通の女子高生だが、それだけに、そしてそれ以上に 思春期的な悩みを持っていた花菜とのストーリーが だんだんと面白く、考えさせられる話になっていった。 ユーリ自身は自然体で写真を撮っているが、 それは漠然と撮っているというのとは違うらしい。 一方、この漫画にはユーリや花菜以外の写真家も登場する。 最初からモデルを使いアングルを決めて撮影する写真家とか。 それはそれで価値を認めている感じがした。 けして、自然体が良い、演出は駄目、というものでもないよ、と。 どうやら写真撮影にも色々な価値感やスタイルがあるのだな、 人それぞれの人生や情愛や価値観もいろいろあるように、 読み終えて、そういうことが判ったようなつもりになった。
金沢で生まれ育った女子高生・花菜は高校では写真部所属。
写真が好きだが将来は写真の道へ、と決...