ふな
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2020/11/12
ネタバレ
きっと三白眼女子が好きになる!
昨今、三白眼女子がメインキャラで描かれる作品が減っている……。そんなことをふと思うのは私だけだろうか。 純情クレイジーフルーツの実子から始まり、謎の彼女Xの卜部で完全に目覚めた私は、心のどこかで三白眼女子をもっと愛でたいという気持ちを持っていた。 そんなとき、今や最強のWEレーベルであるジャンプ+で始まったのが『漫研に美少女』だった。 この作品は、漫研の部長である超絶美少女の学先輩を愛でる漫画だ。この作品における世界は、漫画愛と美少女愛を中心に回っていると言っても過言ではない。 漫研の部室のドアを主人公の文紗が叩いた先輩がそれを迎えたとき、完全にその美少女っぷりに打ちのめされてしまったから。 漫研の部長ながらほとんど漫画を描けない先輩と一緒に漫研の活動を始める文紗は、好きあらば先輩の美少女っぷりを堪能する。 というか、先輩はいつも美少女だから呼吸するかのように堪能している。 しかし私は、先輩を愛でる文紗を愛でるのだ。 先輩にときめく姿が可愛いし、目つきの悪い笑い方も可愛いし、幼馴染の男の子の想いに気づく気配がないのもまた可愛い。 憧れの先輩は完璧な美少女だ。お目々もぱっちりである。 対して文紗からは尖った印象を覚える。しかし整った先輩がいるからこそ、文紗の尖った魅力がくせになるのだ(ちなみにバストも規格外で、漫研は突出した人間じゃないと入れないと周りから思われているらしい)。 おまけに普段はしっかりしているのに、先輩が絡んだとたんにポンコツになるヒロイン……これが推せないわけがない!! 白目の中に素朴に浮かぶ孤島のような黒目が、たまらなく可愛いことに、ぜひみんな気づいて欲しい。 目付きが悪い?それが良いのだ! 偉い人にはそれがわからんのです。 ちなみにこの三白眼女子、女性も男性も等しく落としてしまう(恋愛的な意味で)魅力の持ち主。生き様がカッコいいからズルい。好き。 そんな三白眼女子が魅力的なこの漫画は、全2巻で完結する。ものすごく内容のある物語が込められているというわけでもない。 ただ、漫研部で先輩と文紗とそれに恋する幼馴染の少年が、あーだこーだ、ドタバタしながら賑やかに過ごす姿が純粋に楽しいのだ。 女の子は女の子同士で恋愛をすれば良い派も楽しめるし、幼馴染の男の子頑張れ!という目線でラブコメ好きも楽しめる。 本編では先輩とばかりイチャイチャしている印象の文紗だが、2巻のおまけ漫画では幼馴染ともイチャイチャするぞ!私は正直そこで憤死した。 とりあえず、この漫画を読んで三白眼女子って可愛いなと思ってくれると、とても嬉しい。まずはジャンプ+で試し読みだ! https://shonenjumpplus.com/episode/13933686331619689958
ふな
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2020/10/01
お酒は百合のおつまみです!
京都ではビールと鮎が出会いものと呼ばれているようだが、百合とお酒もまた出会いものである。 二十歳の大学生・上伊那ぼたんが同じ寮に住む先輩たちと酔っ払いながらいちゃいちゃするガールズコメディ、『上伊那ぼたん、酔へる姿は百合の花』はそんなことを感じさせてくれる。     主人公の上伊那ぼたんは、これまでお酒を飲んだことはない。しかし寮長のいぶきがお酒を飲む姿がとても美味しそうだったことから興味を持ち、お酒を好きになっていく。いぶきを中心とした寮の先輩たちとお酒を飲みながら「近いちかい!」とというツッコミが野暮すぎて引っ込むくらいのいちゃいちゃを見せてくれる。     秘密を共有すると仲良くなると言うが、とある理由からいぶきはこれまで一人でお酒を飲んできた。しかし上伊那さんと秘密を共有してしまったことで、自然と上伊那さんと飲む回数が増えていく。 お酒は一人で飲んでも楽しい。でも二人ならもっと楽しい。     この漫画の大きな魅力の1つが、赤面する女性たちが非常に可愛いことだ。少し酔って頬をあからめた姿は可愛いし、その中でふいに漏れ出る好意にドギマギして赤面する姿はもっともっと可愛い。 お酒を飲むことで、甘えやすくなったり隙が多くなったり。そういう弱さみたいなのを見せ合うことで、どんどん縮まる距離にニヤニヤが止まらない。     ヒロインたちがいちゃいちゃする様を見ながら飲む、読者のお酒も美味しい。良いことばかり……なのは良いのだが。     **いつから百合は、お酒の「つまみ」だと思い込んでいたのだろう。** 中国の戦術で例えるならば、酒とつまみの関係性は酒が主攻でつまみが助攻だろう。しかし百合は、特にこの作品の百合は助攻なのだろうか。     **否、断じて否である。** もはや助攻である「つまみ」としての百合ではない。 「舌が欲しいなあ」とか「二人だけで来たいなあ……」とか、いぶきを赤面させる上伊那さんとのやりとりが、私にとってはむしろメインなのである。     お酒で少し緩んだ表情、こぼれやすくなる相手への気持ち。 (特にいぶきへの)破壊力抜群上伊那さんの天然小悪魔っぷり。 読者もお酒をつまみにすることで、よりそのいちゃラブ百合成分を最大限に楽しむことができる。 百合がお酒のつまみなのではない。お酒が百合のつまみなのだ。 **そう、我々はお酒をつまみに百合に酔っていたのだ!**     仕事終わりに、あるいは休日の昼下がりに。テキトーに買ったお酒を片手に、上伊那さんといぶきの楽しそうなやりとりに頬が崩れるくらいに酔う。 なんて素晴らしいんだ……(恍惚)     というわけで、この作品を読むとき、飲める人はぜひ好きなお酒を片手に読んでみて欲しい。 ビールと鮎に匹敵する出会いものがここにあることを、きっと実感できるはずだ。 お酒を飲みながら、彼女たちの赤面っぷりに酔いしれよう。読めば気分はプレミアムフライデー……。
ふな
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2020/04/29
君が一番美味しいラブコメディー! #1巻応援
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令和2年でイチオシしたくなるような、読めば絶対ニヤニヤしちゃう魅力を本作は持っている! 人間は恋愛対象外、蛇にしか恋愛感情を頂けないことを隠しながら生きてきた学園のアイドル的女子高生・財部つくしが、なぜか新任教師の加賀美肇に恋してしまうというラブコメディ。     ファーストコンタクトで人が恋に落ちる瞬間を読者が目撃してしまうのけれど、なぜ好きになってしまうのか……というのはもちろん読んでいけば分かる。異種間ラブコメと謳っていることから、色々と察して欲しい。 ただ一言、**ヒロインの嗅覚が凄すぎる……(笑)**     自分の感情を確かめるために、先生をグイグイ押していくヒロインの姿は可愛いし、自分の感情の理由を自覚してからはさらに推していくヒロインの可愛さは無限大。 フェチズム全開で頬ずりしようとするわ、嬉々として舐められようとするわ、タイトル通りで押しまくり。 駄目でも引かない、前進あるのみ!     ファーストインプレッションでヒロインに抱いた優等生的なイメージが、読み進めていくうちに崩れていく。 **学園で被っていた仮面など、「好き」というエネルギーの前にはあっさりと剥がされてしまうのだ。**     舐めるという行為が、実は教師の加賀美に取っては大事な行為なのだけれど、JKを舐めるというあまりにも非日常的な光景(というか普通なら教育委員会案件)が、時にえっちな雰囲気があったり、邪魔できないような尊い雰囲気が漂っていたり。     先生はペロリスト(舐める人)として照れを持つ稀有な存在だし、つくしちゃんはペロラレリスト(舐められる人)として反応が完璧。 舐めたい人と舐められたい人で、需要と供給が見事に満たされている!WinWinの関係性なのが素晴らしい(!?) 舐めるという行為にこんなに魅了されるのは、かつてアフタヌーンで連載していた『謎の彼女X』以来と言っても過言ではない(これもヒロインのよだれを舐める良い漫画なんだ) **ヒロインが作った手料理よりも、ヒロイン自身が一番美味しいというから、先生も読者も困ってしまうんだよなあ!!!(笑顔)**     まさにタイトルに書いた、「君が1番美味しいラブコメディー」が嘘ではないことが、読んでもらえれば絶対に分かる。 読み終わった頃には、すっかり胃袋を掴まれてしまっているはずだ。読者はつくしちゃんを舐められないので、熟読して胃袋を満たすしかない!   **つくしちゃんが美味しく食べられる様(嫌らしい意味ではなく)を、ぜひ楽しんで欲しい。**     また、めちゃくちゃ押しまくるつくしちゃんだけど、実は赤面シーンが多いのも大きな魅力。 赤面しているヒロインは人類の文化遺産なのだ。押して押して押しまくりながら赤面するつくしちゃんを、みんなで堪能しよう!     **訳アリ高校教師✕訳アリ女子高生=ニヤニヤ必須のラブコメディ**   令和2年以降の人類史では上記方程式が成り立つということを、漫画好きの全ての人間に、ぜひ提唱させて頂きたい……! 電撃マオウ2020年6月号の表紙のつくしちゃんも最高に可愛いことを、最後に報告してこの文を終える。
ふな
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2020/01/23
ネタバレ
心を揺らす物語を、あなたに。「友達100人できるかな」をおすすめしたい
ふと読み返すと、涙がこぼれそうになるくらい、胸が熱くなる。 「友達100人できるかな」は、そういう作品です。 私にとってこの作品は、特別と言えるほど好きな作品でした。 巻数は、全五巻。 多くはありませんが、**どんな作品にも負けない「熱」が詰まった作品でした。**    #侵略できない宇宙人    この物語は、地球人が「愛」を持っていることが立証できなければ地球が滅ぶというところからスタートします。 そのテストを受けることになった人間が、主人公の直行。 直行がテストを受けるに当たって、彼のパートナーであり監視する役割を果たしているのが侵略者の道明寺さんでした。 ただ物語の最後で直行が言っているように、道明寺さん達侵略してきた宇宙人が地球を征服するのは、最初から無理だったんだろうなあと思います。 **彼らは優しすぎる侵略者だから。** 口では侵略やその星を滅亡させるなんて言いながらも、彼らにはきっとそれは出来ないのでしょう。 恥ずかしい言葉を使うならば、「愛の伝道師」と言うのがふさわしい存在かもしれません。 ***愛は何よりも尊いのじゃ!!!!*** この言葉は、侵略する側の現場リーダー的な存在のものです。 ここに彼らが伝えたいことが詰まっている気がします。 普段気にしていなかったこと、ちょっと薄れていたこと。 誰かを、何かを大切にする気持ちを忘れないで欲しい。 そういう思いを、彼らは振りまいているのだなあと思いました。 侵略するのではなく、むしろ彼らは与えている。 いや本当は持っているのにそのことを忘れている人に、こっそり教えてあげているのかもしれません。 ちゃんとあなたも「愛」を持っていますよ、と。 最終話の議長が、直行に優しくする理由を答えたとき、涙腺が緩くなってしまいました。 きっと、早く直行にその言葉を言いたかったんだろうなあと。    #ひたむきに、誰かと想いを通じさせようとする姿    友100の目的は、タイトル通りで実に分かりやすい。 友達を100人作って地球を救え、それがこの物語のコンセプトです。 子供の頃、自分がどうやって友達を作っていたかは正直覚えていません。 何となく行動しているうちに、自然と友達になっていたはずだからです。 やっぱり成長すると打算的になったりして、純粋な付き合いというのが子供の頃より少なくなって難しいと、私は思っています。 子供の頃、何もしなくても友達が作れたのは世界を閉じていなかったから。広がることが嬉しくて仕方なかったから。 コナンではありませんが、見た目は子供頭脳は大人の直行も、苦戦しっぱなしでした。 **それでも彼は諦めることなく、想いを通わせようとし続ける。** 難しいようなことでも、何度も挑戦しました。 地球を救いたいからというのももちろんありますが、それ以上にその人と友達になりたいという直行の気持ちが伝わってきます 彼の見せるひたむきな姿が、何よりも強くそれを表現している。 個人的には、3巻の銭湯の子供と友達になる話が本当に大好きです。 未来では無くなってしまった銭湯。子供の頃は気づかなくても、大人になってから気づく。 **大好きなものが、この銭湯にはいっぱい詰まっていたのだと** 銭湯の子供・井森も別の世界の未来から来ていて、この世界の居心地の良さに元の世界を救うことを諦めていました。でも直行に出会って、そのひたむきさを間近で感じて。 職もなく途方にくれていた人生を一からやり直して、その世界の直行とも友だちになって見せると。 直行も、未来に帰っても井森を探して友達になることを決意しました。 **何度でも友達になる。** この言葉に、震えるほど体が熱くなるのが分かりました。 友達だから。大切に育んだ絆だから。 魂が震えるほど、3巻の最後の話は強く強く響きました。 それと同じくらい、最終巻の5巻の山本さんと友達になる話でも胸が熱くなりました。 基本的に気取った感じの彼女が、言葉がはっきりと聞き取れない状況で直行に思いを届けるために取った行動。 **伝わるように。口の形ではっきりと分かるように。** 1ページを5段にわけ1文字1文字が発せられる様に加え、変わりゆく風景と少しずつ遠ざかる山本を本当に丁寧に描いていました。 言葉だけではなく、少しずつ離れていく姿がまた胸に来る。 **最後の一文字は特に、噛み締めるように。**本当になんかとか最後まで言い切ったという感じで。 この思いが届かないわけがない。 本当に、この山本さんと友達になる話も素敵なんですよ。 なんて言ったか分からなければ、この口の形を真似してみればいい。 きっと簡単に分かります。**大切なものをもらったときに、発する言葉だから……**    #最終話の決意    途中が良くても、最後は意外とそこまででもないなあという物語は実は結構あると思います。 悪くはないけど、それまでの良さに比べるとなあ……みたいな。 私は友100の終わりはずっとどうなるか気になっていました。 友達を100人作ったら、どういう終わりを迎えるのだろうかと。 最後の話で道明寺さんと別れ、直行に込み上げてきたものは涙。 堪えられないほどたくさんの想いが込み上げてきたのが、言葉が必要ないくらい容易に読み取れます絵がまた凄い。 ここから先しばらく台詞の描写がありませんが、とよ田みのる先生の凄さが際立つ場面です。 この後、直行の姿が子供の姿で何ページか描かれているのですが、それは彼が子供のような状態になってしまったから。 でもその子供の姿で描く前から、それが読み取れるのがとよ田みのる先生の凄いところだと思います。 **声を上げて泣く直行の姿は、まるで子供のように見えて。** 直行が幸代の元に向かうその歩き方。 迷子になって母を求めて彷徨う子供の姿そのままでした。 抱きしめる幸代は、まさに母。身篭っていることもあってか、彼女はすでに母親となっていました。 ただ陣痛が始まり、待っている間また一人になり涙を流す直行。 楽しかった過去の時代のことを思い出し、泣き続けるその姿は今までで一番幼い姿でした。 そんな彼を立ち直らせたのは、やはり友達でした。彼の元に集う、過去に作った大切な友達。 直行が見たのは幻だったかもしれません。でも、時代を超えた愛だとこの漫画は思わせてくれます。 心臓の前で手を当て、直行を指す。 **言葉なんていらない。** 僕たちは心で繋がっている。愛で繋がっている。だって友達だから 恥ずかしいことを文章にしているのは分かっている。それでも私には、そう伝わってきたんだ。 直行の手の当て方も非常に暖かい。本当に大切なものがそこにあるのだというのが、言葉以上に伝わってくる仕草です。 一番最初に彼を励ます友人が、銭湯の話の井森というのがもうニヤリです。 「未来で俺と会うんだろ」そんなことを言ったのかななんて妄想したり。 離れていても、愛で繋がっている。 彼らはその想いと同時に、直行に新たに生まれてくる命を守れという気持ちを伝えたのかもしれません。 自分たちを愛したと同じように、それ以上に、新しい命を愛せよと。 まだ目のあたりを赤くしつつも、次の瞬間には直行の顔は父親の顔になっていました。 **たくさんの愛が、直行を支えているのだともう……泣きました。** いや泣いて良いと思います。 それくらいの熱を、この漫画は伝えてきているのだから。恥ずかしいことではない。 本当に、本当に心から素敵だったと言える物語でした。 最後は駆け足気味でしたが、その「熱」は冷めること無く最後まで読者に伝わったと私は感じています。 ***「愛」こそすべて*** この漫画は誰かを想う「愛」の熱さが心に伝わる最高の漫画です。 この作品と出会えて心から幸せだと言えます。魂の震える物語でした。 カバー裏は読み終わった後、一番最後に見てください。 熱が伝わっているなら、絶対に込み上げてくるものがあるはずです。 完結から10年近く経とうとしている今も、あの最終話をリアルタイムで読んだ当時と変わらぬ熱が、読み終わった後胸の中に残っています。 **魂の震える物語「友達100人できるかな」が、私は本当に大好きです。**
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2020/01/22
ネタバレ
汚れた体で、汚した体で、この世界を生きていく
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『初恋ゾンビ』の作者である峰浪りょう先生が、IKKIで発表した読切『東京、雨、したたかに』は、自分が「あの時」をどう生きていたか、そして今をどう生きているか少し考えたくなる作品だ。 「あの時」とは震災の記憶が薄れ始めた頃。 あの日、どこか世界は変わった。日常が日常では無くなった。 少なくとも、そう思った「はず」だった。 けれど、東京に日常は訪れた。 「それっぽい」日常が帰ってきてしまった。 **汚れた世界を隠しながら。汚した世界を隠しながら。** 主人公の少女は、そう感じる世界で生きていた。 事実がどうであれ、彼女が「そう感じていた」ことが全てで、彼女にとって、世界はとても生き辛いものになってしまっていたのだ。    #少女が生きていくためには    そんな世界で少女が生きていくためにしたことを、本作は描いている。 **彼女は自分を汚した。男に汚されることで。** それは端からすると、自暴自棄に見えてしまうかもしれない。 誰もが納得するような けれど、その行為を否定しきれない自分が確かに存在する。 私達はどこか、世界を汚れたものだと思いつつも、素知らぬふりをしながら生きている。自分はキレイだと思って。キレイなままで生きたいと思って。 少女は違った。 世界にはずっと雨が降り続いていた。地面はもう泥だらけ。 彼女が綺麗に歩ける場所なんて、もうどこにも残っていなくて。 立ち止まるしかなかったのかもしれない。 だから彼女は、泥の中で生きる覚悟をするために、自らを汚しにいったのだ。 **彼女のそれは、あくまで自分が「生きるため」の行為なのだ。** もちろん、それが正解か分からない。彼女自身も、そんなことは分かっているのだろう。 ただ彼女は、自分の中の「嘘っぽい日常」を壊したかったのだ。そうすることで初めて、自分が生きる世界が見えてくると思ったのではないだろうか。    #私達はどう生きるか    彼女の選択は、世の中にとって分かりやすい「正解」とは異なるだろう。 しかし、私はそれを選べる強さを少女に感じてしまった。 相手を圧倒するような強さではなく、**世の中の色々なことを自分なりに受け止めていくような「したたかさ」。** 泥にまみれながらも、生きていくために、自分に必要なことを選択できる強さだ。 行為が終わった後、男性に向けた笑みがまさにそうだった。 彼女はそうして、汚れた体で、汚した体で、したたかに生きていくのだろう。 汚れた手で、彼女は目をこする。 **彼女の視界はもう、開けていた。** ……という凄い読切なので、読める方はぜひ。 全体的に落ち着いたテイストでありながら、読み終わった後にひどく心に刺さってくるような作品だ。 彼女は後年、自分がしたことを「バカだった」「若かった」と振り返るかもしれない。**でもそれは「その時の彼女」が感じることで、「今の彼女」には必要な行為だったのではないか……と思わされてしまった。** 雨が降るたびに、思い出して、自分のこれまでの生き方やこれからの生き方を考えたくなってしまう気がする。 **水しぶきや泥のかかった靴で、私達は歩いていくのだから。**