小さなお茶会 完全版
ここまで「小さなお茶会」にお付き合い頂き、ありがとうございました。前にも少し触れましたが、この作品が幕を閉じようとしていた時、社会はバブル経済に陥り、人々は大切なことを見失い、狂い始めました。欲望が際限なく増殖し、『小さなお茶会』が大切に綴ってきた世界の輝きは砕けていきました。この頃、人々の生活の安定と幸福を担保すると信じられてきた銀行のある頭取は、業務遂行のためには向こう傷を恐れるな、と檄を飛ばしています。収益が、法や倫理に優先され、倫理観は崩壊しました。この狂気の影は現代にも影を落としています。そして人々が絶望的な喪失感に捕らわれるとき、救いを求めて『小さなお茶会』が何度も呼び戻されてくるのかもしれません。『小さなお茶会』の終了後、猫十字社はメルヘンとギャグの形式にこだわることなく、さまざまなジャンルに挑戦していきました。『華本さんちのご兄弟』という切ないまでに清々しい青春ラブストーリー、夢というもう一つのリアルな現実を幻想的に綴った『夢売り』、一方、メルヘン世界もより洗練され、その代表作のいくつかは『泡と兎と首飾り』にまとめられています。そして、空前絶後の壮大なファンタジー作品『幻獣の国物語』が大ヒット作となりました。『小さなお茶会』が終わっても、猫十字社の多彩な世界は大きく広がっています。いずれも『クイーンズセレクションシリーズ』でお読みいただくことができます。
リリカ 抒情
80年代には黙殺されたこの才能を今こそ正当に迎え入れたい/松浦理英子(帯原稿より)。本書はペヨトル工房からの第二弾であるが-リリカ-から四年の月日がたっている。しかし内容は逆に-リリカ-以前のものが収められている。キャプションでもあるように-エステル-に至る道であり、宮西の“技術修練”を垣間見ることが出来る。作品は79年ブロンズ社刊「ピッピュ」と81年久保書店刊「薔薇の小部屋に百合の寝台」から自選した物で、いずれも77年~79年にかけて青年雑誌各誌に発表された作品である。なんと作者が18歳~20歳の間に描かれているというのだから驚いてしまう。宮西の言葉づかいは独特である、ここでその謎に触れておかなければならない。本書「Lyrica」の口絵にはタイトル下に《抒情》とある。では、その意図するところは? 抒情とは感情に訴える感覚であり、生来人に備わったが予感する能力とも言える。それは彼の追い求める感覚の総称であり作品はその予感の実体なのである。自ら捕らえようとしたものの姿がこれらの作品である。と、言いたいのではないだろうか。彼の文章は“詩”である。そこに音楽をつけるように彼は絵を描いてゆく。預言的感情に導かれ実体化した抒情…それが -Esther-における副題《あふれてくねるもの》なのではないか…では、あふれてくねるものとは何処へ? それは次回作で明らかとなるだろう。 収録作品:貧しきフリュート/嬲りのよる(ふたなりのよる)/鶏少年/花粉/エンゼルの丘/月の園/大きな黒い岩/メロンの岩/十七歳の妾/Chenges/Friend Angel No.5/ぼくのお尻にきみの勇気/肉体関係/充血果実/歓び、ふるえる/夜のつまづき/鬼百合秘/五月物語
恩多志弦作品集「いばらの婚礼」
茨の森で100年の眠りにつくのは、姫ではなく悪魔!? 森で指輪を拾ったティアナは、悪魔・ダンテの封印を解いてしまう! ダンテは魔力を封じた指輪を取り返そうとするが…!? 表題作他、読切3編を収録。
あきもと明希作品集「犬塚さんと猿渡くん」
お嬢様女子校と底辺男子校が合併した夢丘高校。男女不仲ムードの学園内で、それぞれの生徒会長だった犬塚さんと猿渡くんは特に犬猿の仲!だけど付き合っているフリをすることになってしまい…!?表題作他3編収録。
煉獄奇譚
事故で恋人を失ってから一年…僕は毎日自宅に引きこもりネットばかりしている。ちょうどそんなさなか、一風変わったショッピングサイトにアクセスすることができた。なんとそのサイトには死んだ恋人が安値で売られているのだった…!! これって買ったらなにが届くのだろうか……!? (収録作品「深夜通販」より)最愛の彼氏が事故で死んでしまった。彼がいないのなら私も生きている意味がない。ある日、落胆している私に一冊の本が届く。そこには信じられないような内容が書いてあり……。(収録作「蘇生術」より)ある日、目が覚めると私は知らない部屋に居た。そこはとても暑く、喉が渇く。窓の外から見える景色は一面砂漠で、出ることも叶わず、夜を待っても夜が来ることもない。この息苦しい場所から誰か助けて…!! そんな飢えた少女の元に現れたのは…!? (収録作「食糧庫」より)ホラー・オカルト・ミステリー作品ばかりを収録した徳山明人の描く、怪奇で幻想的な単行本未発表作品集!
グラスの破片は猫のため息
大人気連載クォート&ハーフの外伝、最終巻! 1920年代のニューヨークにタイムスリップした動物専門霊媒師クォートと黒猫のハーフ。そこには行方不明だったクォートの父親・ファロも。父に秘められたある思惑がついに明らかに!?
Lucky Charms & Apple Jacks
“美才”多田由美が描くアメリカン・ニュージェネレーション。ふたつの青春の輝きと蹉跌が、時にクールに、そして時に熱く描かれる……。▼第1話/Friends▼第2話/Chance▼第3話/Potion▼最終話/Your eye’s●主な登場人物/ギャズ(スーパーでバイトをしながらバンド活動をしている青年)、アビー(ホテルのベルボーイ。ギャズを優しく見守っている)●あらすじ/アメリカの、とある風の乾いた街でスーパーマーケットのアルバイトをしている青年・ギャズ。そこに彼の友人・アビーが買い物にやってきた。ギャズはアビーに自分が入っているバンドのツアーでの話をし、実はバンドがうまくいっていないと告げる。話を聞いたアビーはギャズを優しく励まし、なぜかおもちゃの指輪を渡すのだった…(第1話)。●本巻の特徴/互いに惹かれあうギャズとアビー。だが、アビーの祖母が倒れたことから、彼の家族は家を売り、街を出ていくことに…。IKKI誌上にハイセンスな空間を演出した作品が、待望の単行本で登場。