ノラの家
加害者と被害者
ノラの家 夕海
名無し
加害者と被害者は表裏一体であり、私たちもみなそのどちらにもなる可能性を秘めている……ていうのがテーマなんだろうけど、少し惜しいと感じた。 今のところ(12話まで)出てくる「加害者」側のキャラも、なんというか蓋を開けてみるとそこまで「加害者」ではないような〜…。 美大生の子の罪はアウティングされた相手と揉めてスコップで顔に傷をつけてしまったこと。 メガネの罪は人を轢いたこと。でも轢き殺したわけではなく、妊婦を轢いて流産させてしまい、妊婦はそれを苦に自殺、という、確かに罪は罪なのだが間接的で…。 それにメガネは元々家族からいじめられていて、挙句兄の虐待から姪っ子を守っていた、という可哀想なエピソードも描かれる。(途中までてっきりロリコンなのかと思った) 加害者はある意味被害者の側面もあり、加害者にも同情の余地があるんだよ!というテーマならこれでいいのかなあ〜…。 加害者虐待被害者をテーマにした作品は「羊の木」「モリのアサガオ」などがあるけど、これらの作品と比べると今作の登場人物たちが抱える「罪」は、なんというか「割と許してもらえそうな罪」であるように感じた。読者のストレスにならない程度の罪というか。 だからこそ熱血主人公のはからいであっさりわだかまりが解けていくんだけど、うーーん。 ハードでスリリングであればいい!というわけではないし、この作品の目指す方向とは違うのも分かるんだけど、それにしても全体的に少し予定調和に感じてしまったかも…。 しかし作者さんは浅野いにおのアシスタントらしく、背景や作画は一流。どこか鳥海茜っぽさも感じられる絵柄。今後、女性誌などでも活躍しそう。
ラプソディ・イン・レッド
届かぬ想いを88鍵に乗せて #1巻応援
ラプソディ・イン・レッド あみだむく
兎来栄寿
兎来栄寿
先日、『最果てのセレナード』を読んだ友人が「ピアノが出てくるマンガが面白い確率は78%くらいで異常に高い」ということを言っていて、極めて同感でした。 思うに、ピアノとマンガは似ています。 ヴァイオリンを全く弾いたことがない人は多くても、幼稚園や保育園、学校などに置いてあったピアノを鳴らしてみた経験が一度もない人は少ないのではないでしょうか。また、マンガはキャラクターの落書きくらいはしたことがある人が多いでしょうし、描くまでにはいたらなくとも、全く読んだことがない人はほとんどいないでしょう。万民共通の体験として、理解・共感できるのは強いです。 そして、肝心なのはピアノもマンガも独力で表現可能な幅が極めて広いということです。オーケストラや映画などのようにたくさんの人の手でなければなし得ない形態もありますが、ソロピアノや個人制作のマンガなどはそれらにも劣らないレベルの表現が可能です。幅が広いということは、そこにあらゆる想いや感情を乗せることができるということで、物語との相性が非常に良いということです。 想いや感情、努力や研鑽の集大成に心を奪われ揺さぶられ、人生を変えられ、苦悩や葛藤を経ながら表現に向き合い、時に挫折し時に再起し、喜びも怒りも哀しみも楽しさもすべてを乗せて世に送り出し、それによってまた誰かの人生を変えて行く……そんな瞬間が切り取られて描かれるからこそ、ピアニストや漫画家を描いた作品には面白いものが自然と多くなっているのかもしれません。 ということで、この『ラプソディ・イン・レッド』もまた名作として名を連ねていくことが期待されるピアノマンガです。 とにかく、第1話を読んだ時点で今までのあみだむくさんの作品の中でも一番面白く、凄まじい熱量を感じました。血の繋がらない母親と暮らし、周囲からは問題児のレッテルを張られ、鬱屈としている主人公・寅雄。彼の心の叫びが聞こえてくる1話でした。「音」と書いて「こえ」と読ませ、自分の「音」を伝えて世界と繋がりたいと渇望する寅雄の感情の起伏が、非常に強く荒々しく描かれています。 言葉とは便利なものですが、時に言葉では伝わらない想いもあります。逆に、言葉に頼らず想いを通わせる瞬間というのは非常に美しいものです。寅雄は、自分の想いを言葉以外で伝える手段としてピアノに出逢い、そしてその願望を成して行きます。その姿には昂らずにいられません。 未経験でありながら曲を聴いただけでコピーできる桁違いのセンスと、しかも膨大な努力することに全く躊躇がない精神力を持っており、音符すらまともに読めない素人でありながら恐ろしいほどの速度で成長して行くであろうことにワクワクします。 芸術の世界といえば変人がつきものですが、濃いサブキャラたちも続々と登場して物語を盛り上げていきます。今後も非常に楽しみです。
去勢転生
展開の早さに予想つかない
去勢転生 宮月新 おちゃう
六文銭
六文銭
エロ×バイオレンス×異世界というわかりやすいいテーマを扱った本作。 最愛の人を強姦され殺された経験をもつ主人公が、その復讐から性犯罪者を15人も殺し死刑となる。 死刑執行の日、死んだと思ったら、自分がいた世界と同じようでどこか違う平行世界のような異世界に飛ばされてしまう。 そこでは、太陽フレアの影響で地球が崩壊し、なぜか男性が知性を失い凶悪化して、女性を襲うだけの「ケダモノ」となってしまっている状況。 この世界の女性たちは、その「ケダモノ」から逃げて暮らす生活を強いられている。 そんな中、主人公はクラスメイトたちと一緒に、こっちの世界では殺されずに生きている最愛の人を探す旅に出るという流れ。 とにかく展開がはやくて読んでいてスリリングかつ予測不能です。 そして、割りと重要そうなキャラクターたちも、次の瞬間、躊躇なく殺されたりするからビビります。 特に、こんな終末世界だからか、人間の悪い本性むき出しで、クラスメイト同士で裏切ったり裏切られたりがすごくて、その凄惨さが読んでいてエグいです。 こんなにも安心して読めない作品、久しぶりです。 最後、どういうオチをつけるのか、それもまた楽しみです。 転生だから、戻るのかな?
カペラの眩光
"才能"に翻弄される2人の叙情的で温かい物語 #1巻応援
カペラの眩光 相澤いくえ
sogor25
sogor25
売れないバンドマンの日辻(ひつじ)は自身の現状と27歳という年齢に諦めにも近い焦燥感を抱き始めていました。 そんな彼は画家としても活動をしていたのですが、実はその絵は自身ではなく幼馴染の夜木が描いているもので、引きこもりで家から出られない夜木の代わりに日辻の名前を使って発表をしていたのでした。 そんなある日、日辻がTwitterに投稿した夜木の絵が世間の注目を浴びたことで、物語が大きく動き始めます。 自身の才能のなさに薄々気づきながらももがき続けている日辻と、自身の絵についても独特な考えを持っていてだからこそ日辻を信頼し全てを任せている夜木。 そんな2人の不思議で特別な結びつきと、夜木の“才能”が世間に見つかったことで変わっていく2人の運命を、温かみを持ちつつも読者を惹き付ける力のある、そんな絵で描き出している作品です。 ちなみに、タイトルにある「カペラ」とはぎょしゃ座のアルファ星、つまり最も明るい星でではあるのですが、地球からは1つの星に見えるだけで実は複数の星からなる"連星"と呼ばれるものであることが知られています。 そんなカペラの眩光とはどういう意味なのか、それを想像しながら読むと作品の味わいも深まるかもしれません。 1巻まで読了
ドゥルアンキ
最後の神造種 美しい子ウスムガル
ドゥルアンキ 三浦建太郎 スタジオ我画
名無し
性別もなければ、人間でも精霊でも神でもない。けれど英知に富み誰もが心をとらわれる美しさを持つ子供・ウスムガル。 生まれてまもなく“聖地”と呼ばれる場所へ送られ、人間に育てられる。同世代の人間の子どもたちとの関わりの中で自分と他人との違いに複雑な思いもあるが、人間にはできない“神との対話”をしながらたくましく成長している。 主人公・ウスムガル以外にも魅力的なキャラクターが出てくる。 ウスムガルを育てた夫婦が飼う犬・フワワ。いわゆるパトラッシュ的な、大きく名前の通りふわふわでとても賢い。 ウスムガルとよく一緒にいる、半獣神的なパンという子ども。このキャラはどこで生まれてどうして人間の世界で普通に生きているのかは謎。 そもそもウスムガルを生み出した神さまたちも、ウスムガルを愛でる姿が本当の親のようで微笑ましい。 2話目に出てくるタセ村のキルタを始めとした子どもたち。狩りのための石弓をウスムガルに頼んで作ってもらったことで仲良くなる。 ウスムガルの家のかまどに住む精霊?自称・かまどのお姉さん。 生まれた時には「美しさで数多の者の運命を翻弄する」と言われていたウスムガルが紡ぐ新な神話。この新連載は絶対面白い!