修羅の門
ジャージィ・ローマンと九十九の敬意
修羅の門 川原正敏
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ
陸奥九十九の闘い方は二通りある、と描かれる。一つは、陸奥圓明流としての効率的な殺人拳。そしてもう一つは、敢えてそれをしない闘い方だ。 陸奥九十九は、これはと思った相手……本能的に恐怖を感じる、それ故尊敬に値する相手と試合う時、わざと相手の土俵に乗る。 相手の得意分野で闘い、正面から互角以上に渡り合った末に、遂に相手を凌駕する。その象徴的な闘いが、第三部・ボクシング編のジャージィ・ローマン戦だ。 「神の声」を聞き、完璧な読みで攻撃を封殺するローマンに対し、陸奥九十九はスピードを何段階も上げ続ける事で「神の声」を置き去りにし、無効化しようとする。 陸奥九十九は試合前も後も、常に言い続ける、「ローマンが怖い」と。そこには「神が怖いのでは無く」という含意と、〈人間〉であるローマンへの敬意があるだろう。 相手の得意分野を凌駕して見せる事で、陸奥九十九は、敵の全てを折る。ローマンの「神」もそうだが、所属団体や流派のプライド、最強の称号、等々。しかし陸奥九十九は恨まれない。敗者は皆、そんな負け方に納得してしまうのである。そして負けて全てを失っても、陸奥との闘いを胸に、先へ進める。 陸奥圓明流という殺人拳を使いながら、相手の土俵で闘うという「敬意」によって陸奥九十九は、相手に爽やかな敗北感と次へ向かう力を与える。こんなに「精神的な」美しさがある格闘マンガもなかなか無い。 ジャージィ・ローマンの、身体では無く〈心〉が闘いを止める瞬間の印象的な1ページを眺めながら、そんな事を思った。 #マンバ読書会 #少年マンガの名バトル
どるから
梶原一騎先生を越えられるか?
どるから ハナムラ 石井和義
名無し
転生話ってのは漫画ジャンルとして定着したと思う。 自分は好きではないので殆ど読まないでいたが。 また、K-1の創始者・石井館長は間違いなく 一時は格闘技界で勝ち組だったと思う。 自分は好きじゃなかったし脱税で捕まったが。 そんな嫌いな要素のそれぞれが合体した話「どるから」。 とりあえず二巻まで読んだが、メチャクチャ面白い(笑) かつてK-1が人気絶頂だったころ 「K-1はプロレスのスタイルを取り入れて  格闘技を興行的に成功させた」 と、よく評された。 細かく言えば、プロレスの興業システムを取り入れ、 プロレスファンと格闘技マニアと一般人それぞれを取り込み、 格闘技をイベントとして成立させた、と思っている。 格闘技の達人でありながらイベント感覚・成功術も 身につけていた人、それが石井館長だと思う。 その石井館長が、あらたに取り組んだ (取り込んだ、というほうが正しいか)のが 「転生話」と「梶原一騎スタイル」。 この二つをミックスしたのが「どるから」だと思う。 転生話については詳しくないのでイメージで感じるだけだが、 「ああ梶原一騎先生のスタイルをかなり踏襲し、  そこにさらに新味を加えているな」 とは強く感じた。 かつて梶原先生は、それまでにないマンガストーリーと セミ・フィクションという、事実とロマンを混合した 独特の世界を作り上げてマンガファンを熱狂させた。 「どるから」で石井館長は、K-1創始者・世界の石井という 実績をもとに、格闘技論としても格闘技系経営術としても ファンに有無を言わせない説得力を見せつけている。 石井館長が凄いのは、梶原先生的な 「実体験を話しに盛り込む」スタイルにプラスして、 自分をオッサンであると貶めて漫画化したり、 時に失敗談なども披露していること。 梶原先生が、結局は自分も美化して、 道化になりきれないレベルで自分や自分の体験談を 作中で披露していたのと比べれば、その点で 石井館長は梶原一騎先生より一歩踏み込んでいる。 また、お金が絡む話に関しても、梶原先生が 実利よりも男の矜持、というラインを維持した (少なくとも主人公は)のと比べると 石井館長は「金を稼げなければ何も出来ない」 というのが基本になっており、ここでもリアリティでは 梶原先生より深く突き込んでいる。 また古武術から総合格闘技的な闘いの解説など、 これもかなり実践的視点から判り易く漫画化していて、 リアリティが感じられると思う。 もっとも転生話という時点でSF的であり、 リアリティの面では後退せざるを得ない。 「どるから」が今のところ、それほど世間で話題に なっていない(少なくとも私は聞いていない)のは その辺が一番の理由かな、とも思うが、 あの石井館長が転生して女子高生に、というだけで インパクトは凄いのだから、もっと話題になって、 ヒットしても良いと思うんですけれどね。 ギャグとかも面白いし。 転生の経緯については今のところかなり謎のままだから、 後々で、この点に説得力や面白さを披露できたなら このマンガは凄い名作になるのではないか? そう思って期待しています。
修羅の門
最強が決まるまでの興奮
修羅の門 川原正敏
名無し
最強の男は誰か? 最強の格闘技は何か? 格闘技をする者がなりたいと思い、 見る者が見たいと思う、 「世界最強」 だが、現役格闘家は別として、 果たして、マニアが見たいのは本当に 最強の男、格闘技が決まる瞬間だろうか。 成績とか結果とか結論を知る瞬間だろうか。 そうでは無いと思う。 その結論に至るまでの過程が重要なのだ。 それが決まるまでの経過を、ドラマを見たいのだ。 極端に言えば、最強の戦士・格闘技が決定して、 勝者の手がレフリーに掴み挙げられる瞬間より、 最強候補がリングにあがって対峙してゴングがなる瞬間、 試合が決着するまでにいたる攻防、 それらを見て興奮して味わいたいのだ。 「修羅の門」はそれが判っている。 だから、神武館のオープントーナメントや ボクシングの統一戦、ブラジルでのバーリトゥード、 それらの開催に至るまでの過程や、 各試合が始まるまでのストーリーも入念に描いているし、 その話がとても面白い。 そしてそれゆえに本番の試合がまた盛り上がる。 「最強」を決定するのに必要なのは 虚飾を排除したリアルな展開かもしれないが、 それをしすぎて単なるデータの抽出提示の過程に なってしまったのでは 「世界最強」という男のロマンが無味で色あせてしまう。 だから主人公の陸奥九十九は 無謀な連戦もしたりする。 互いに万全な体調で戦いましょう、 公正明大にどちらが強いか確認しましょう、 とか必ずしもそうではない。 だから神武館のトーナメント戦でも キックボクシング、シュートボクシング、プロレス、古武道、 それぞれの最強戦士とあえて戦う立場を自ら選ぶ。 そして大会主催者も相手の選手もそれを了承する。 その流れはリアリティに徹するならありえない流れだが、 格闘リアリティと格闘ロマンの両方を損なわず増幅させてくれた。 このシーンが描かれたとき、 「あ、この漫画、絶対に面白くなる」 と思った。
空拳乙女
空手少女ではなく「空拳乙女」
空拳乙女 湯浅ヒトシ
名無し
入学した女子高に空手部がなかった。 なら自分で立ち上げようと頑張る少女。 仲の良くなった級友がなんだかワケアリ風で・・ 初回がそんな話だったので、漫画では良くある話だな、 廻し蹴りでのパンチラ・シーンとか交えながら 仲間を集めて空手を真面目に頑張るという チョイエロ交じりの青春ストーリーか、と思っていた。 ところが、まだ第一巻しか読んでいないのだが 実際に廻し蹴りパンチラは登場してきたが、 なんだかんだであっというまに コスプレ美人女子高生による地下格闘技的大会に 参戦することになるという 意外に派手な展開に。 イマドキは美女が主人公のバトル物は珍しくない。 それどころか美少女で達人ぐらいではありきたりで 爆乳半裸美女戦士が色々と揺らしまくったりしながら 戦う漫画やアニメは世の中にゴロゴロしている。 とはいえ現実を考えると、 爆乳半裸美女戦士が登場するストーリー展開、 いわゆるエロゲー的な展開は、やはり 非現実的なありえないものがほとんどだ。 爆乳半裸美女戦士とかコスプレ格闘家とかが登場した時点で、 漫画としては格闘漫画というよりはエロ漫画と 評価せざるを得ない内容になるものがほとんどだ。 「空拳乙女」はわりとそのへんがしっかりしていて 急展開で予想外ではあるが、コスプレ格闘技大会に 参戦することになるまでの過程は、それなりに 納得のいくストーリーになっている。 そりゃ漫画的な都合の良い展開は多々あるが あきれるような無茶な展開とまでいうほどではない。 「エロいにこしたことはないでしょ」 という考えはあっただろうが、 エロ重視でストーリー軽視、という漫画ではない。 考えすぎかもしれないが題名が空手少女ではなく 「空拳乙女」になっているのもそういう意味合いかと思った。 空手少女、だったら話にコスプレ格闘技を介入させるのは 無理が有りすぎる。 だが空拳というのが「徒手空拳」を意味し、 「己の力で素手で困難に立ち向かう」という意味を強調 するための題名なのだとすれば、わからないでもない。 主人公が体をはって部の設立、練習場の確保、 その過程での仲間作りとか空手やコスプレ格闘の世界に 「徒手空拳」でチャレンジしていくことを表している、 みたいで。 それと、良くも悪くも湯浅先生の描く 「パンチラ」や「コスプレ」はそれほどエロくない。 色々と揺らしまくったりはほとんどしない。 そういう意味ではエロ要素ありの格闘技漫画ではあるが、 エロ嗜好より本格格闘技嗜好の漫画ファンのほうが 楽しめる漫画だと思う。 そういうこの漫画が、漫画ファンのニーズに 爆乳半裸美女戦士が登場する漫画よりも あっていたかどうかは不明。 私はこの漫画も爆乳半裸美女戦士が登場する 漫画も好みだが。
空手小公子 小日向海流
空手小公子 小日向海流
空手小公子 小日向海流 馬場康誌
さいろく
さいろく
小日向海流 格闘技はお好きですか?なんか聞いたことあるキャッチですが…格闘技というと空手、柔道、ムエタイ、コマンド・サンボ、柔術、レスリング、テコンドー、マーシャル・アーツ、ボクシングと様々なジャンルや流派がありまよね。主役である小日向海流はもちろん空手ベースです。しかしこの作品には実に多種多様な、一人一人がしっかり印象付くような名脇役たちが出てきます。中でも実在の人物をモチーフとしたキャラたちが生き生きと描かれているところに着目して欲しいですね。私はプロレス好きでして、先日武道館にて故・三沢光晴氏の追悼興行に行って参りました。と、ここで三沢さんの話を書いてたのでは文字数が足りないので省きます…が、その三沢さんそっくりのキャラも出てきます。34巻なんかでは某インディ団体のエースにそっくりなプロレスラー・田伏隼との試合が描かれていますが、この田伏のキャラクターが実にイイ!他にも魔●斗氏やレ・バ●ナなど、素晴らしいキャラたちがオリジナルキャラたちとうま~く絡んでます。無論、面白い漫画を構成するに必要な要素は全て揃ってますので、安心してお読み頂ける作品ではないかと。あ、女の子もカワイイですよ!
空手小公子 小日向海流
一人の男の成長〜あらゆる格闘技を添えて〜
空手小公子 小日向海流 馬場康誌
たか
たか
 読んだ途端に「戦いてぇ...! 巻藁(まきわら)突きてぇ...!」と、男性ホルモンとアドレナリンの分泌が止まらなくなる漫画。残念ながら巻藁は用意できないので、iTunesでEye of the Tigerをポチって外を走りました、押忍!  物語は体操でオリンピックを目指していたカワイイ顔の主人公・小日向(とヒロイン) が先輩たちに襲われていたところを、楽しそうに人を殴るヤベー男に助けられるところから始まります。助けてもらったあとに、小日向もなぜかそいつに顔面を殴られます(すでに1話から展開がヤバくて最高)。 見た目も中身も爽やかな小日向が、さまざまな格闘技とその個性的な使い手に出会い、血と汗と涙を流しながら本物の空手家となっていく熱い漫画です。  この漫画の何がすごいって、敵も味方もみんな強烈な個性を持っているのに、読んでいて現実の人間のように自然と受け入れられるところがすごい。アメリカ人(青森弁)、男好きブラジリアン柔術使い(♂)、そして忍者。現代が舞台で忍者を扱いきれるというだけで、この漫画のすごさがわかるってものです。  また空手がメインでありながら、薙刀、剣道、柔道、テコンドー、ムエタイ、ボクシングと、あらゆる格闘技が出てくるところもたまりません。小日向の通う大学には100以上の武道・格闘技の部活で作る「百部会」なる超かっこいい組織が存在し、物語の序盤を盛り上げてくれます。  格闘技に全く興味がなくても、登場人物たちの血と汗と涙(文字通り)の努力を目の当たりにし、気づくと夢中で50巻読み切ってしまうメチャクチャ熱い作品です。何かに燃える気持ちを取り戻したいとき、ダイエットのモチベーションを高めたいとき、男性ホルモンが急に必要になとき、ぜひ読んでください! 押忍、失礼します! 〜以下、この漫画の好きなところ〜 ・出てくる女の子がみんな違ったタイプでみんなかわいい ・2000年代前半の懐かしい社会描写(ex.携帯電話) ・主人公に立ちはだかる最強の先輩たちと過去の因縁 ・雑魚ポジションから一人前に成長する同級生 ・巻藁(まきわら)を素手で1000回突く超熱い修行 ・ハチャメチャな大学生活 ・きれいな顔の爽やか主人公が容赦なくボコボコにされる ・最初から絵が上手いのに、後半でもっと洗練される
どるから
K-1石井館長がJKに転生して空手ビジネス
どるから ハナムラ 石井和義
mampuku
mampuku
 K-1の石井館長が事故死して、同時に借金苦で自殺を図り生死をさまよっていたJKに生まれ変わり(乗り移り)、JKの実家の空手道場を経営再建する話。設定もストーリーもぶっ飛んでてよくゴーサイン出たな!!?と思ったら原作者の名前みて爆笑w女子高生になる以前に漫画原作者になっちゃったよこの人w  転生先で生前みにつけた専門知識を揮う話はラノベを中心に流行りですが、得意の空手で大立ち回りをしたかと思えば家に帰って貸借対照表とにらめっこ……そんじょそこらの異世界でマヨネーズ作るような小説とは比べ物にならん素晴らしい説得力と読み応え。  さらには作画に「アニメ監獄学園を創った男たち」のハナムラ氏を起用。実在人物を絶妙なコミカルさ加減でキャラクターに落とし込み面白おかしく動かすことにかけては折り紙付きです。画力が素晴らしいので格闘シーンもお着換えのシーンも満足度抜群。今年刊行された新作のなかでも、自分のなかで上位ですねこの漫画は!  石井館長が出所してから十余年経ちますが、作中ではスマホとSNSが普及していることから現代が舞台のようです。この世界線の館長、また捕まったの?w