太平洋戦争マンガの感想・レビュー64件「ヒロシマのおばちゃん」を読みたくて購入特装版「女が叫ぶとき~戦争という地獄を見た~」 曽根富美子ひさぴよhttps://www.shogakukan-cr.co.jp/book/b110795.html 『漫画が語る戦争 焦土の鎮魂歌』(小学館クリエイティブ)で読んだ曽根富美子の短編「ヒロシマのおばちゃん」が衝撃的だったので、もう一度読みたいと思って電子書籍版を探してたら、この短編集に収録されていた。 「ヒロシマのおばちゃん」以外の短編は、戦争の話というよりちょっと昼ドラっぽい話が多いものの、それでも表題作を読むためだけに買っても損はないと思う。 作品の詳しい時期は分かってないのだが、状況からして1990年代頃の設定と思われる。広島での戦争体験を語り継ぐの”一人のおばちゃん”を通して、戦時中の自身の半生を振り返るところから物語は始まる。巧みな語り口と、曽根先生お得意の、不幸で陰湿な心理描写にグイグイと引き込まれてゆく。そしておばちゃんは不幸のドン底と同時に、原爆の日を迎えるのだが…。 変わり果てた広島の街を、怨念そのものとも言える鬼気迫るタッチで描き出し、一度目にしたら忘れられないような光景がこの漫画にはある。おばちゃんは最後に「あれは地獄だったよ」とだけ語る。と同時に、この出来事が教科書の中のたった数行に収まってほしくない、と願うのだった。 個人的には「はだしのゲン」と同じく、ぜひ読み継がれてほしい戦争漫画の一つだ。「架空戦記」でもあり「歴史」でもあるアルキメデスの大戦 三田紀房starstarstarstarstarmampuku極上の「負」のカタルシスだった。 日本が第二次大戦に突入しそして敗戦するまでを描いた戦記モノで、架空の天才軍人・櫂直(かいただし)が明晰な頭脳と冷静な分析によって開戦を、ひいては敗戦を回避すべく孤軍奮闘する話。 犠牲を払いながら手を尽くしても戦争へ突き進む軍部を止められず、事態は坂を転がり落ちるように悪化の一途をたどっていく。巻数にして30巻を超える長い長い無力感と喪失感を味わいながら、物語終盤ミッドウェー海戦で惨敗、櫂は軍を離れ、そのまま終戦、東京裁判を経て完結へ。 勝利も復讐も俺TUEEEも、およそ快感と呼べるものを与えられないまま、ずっとしんどい思いをしながら読み続けることになるものの、読後感は不思議と悪くない。むしろ心地よいまである。なぜか。 「いわんこっちゃない!」と叫びたくなるような負の感情のカタルシスの連続、喪失感、破壊(と再生)、櫂の決意と忠誠、わずかな希望……。一言であらわすなら、「大人の味すぎる娯楽」って感じ。「総員玉砕せよ!!」読んでみた総員玉砕せよ!! 他 【水木しげる漫画大全集】 水木しげるstarstarstarstarstarかしこ大ヒット公開中の映画「ゲゲゲの謎」には水木しげる先生の戦争に対する考えが反映されているので映画を観る前に「総員玉砕せよ!!」を読むといいかもと言われたので気軽な気持ちで読んだらガーンとなりました。 戦地では兵隊の命が馬より軽かったというのも恐ろしいですが、玉砕に失敗したからという理由で上官が自決させられるのが本当に馬鹿馬鹿しくて腹が立つし悲しかった。軍医殿の「人間の生を人為的にさえぎろうとするのは悪だ」という主張が忘れられません。なぜ今も戦争しているんだろう…。 戦争の話はつい目を背けたくなってしまいますが水木さんの語り口は子供でも読めるものになっていますね。仲間から「お前の食い意地すごいな」と言われる水木さんにはニヤリとしました。これからバナナを食べるたびに思い出しそうです。想像以上の作品この世界の片隅に こうの史代starstarstarstarstarこめつぶドラマにもなりましたが、皆が助け合って生きていた時代のお話。 戦争を知らない世代ではあるけれど、戦争は二度と起こしてはいけない。と強く思う作品。子供たちにもぜひ読ませてみたいです。 戦争の怖さはだしのゲン 中沢啓治starstarstarstar_borderstar_bordermotomi小学校の頃、図書館で読んだ思い出があります。 戦争がどれだけ愚かか、恐ろしいものか、失うもの、日常を取り戻すための凄まじい生き方、全てが描かれています。 全員に読んでほしいと思います。 今戦争を語れる人が減ってきているのでしっかり漫画からも学んでほしいです。最終巻まで読んでよかった #完結応援不死身の特攻兵 東直輝 鴻上尚史starstarstarstarstarひさぴよフィリピン戦線で9度の特攻から生還した佐々木友次氏の物語。マカオ撤退あたりまでは雑誌で読んでいて連載がヤンマガからDAYSに移籍した辺りから一度読むのを中断していた。というのも終始、精神論を振りかざしす将校や戦争そのものに怒りしか湧いてこなかったし、無茶苦茶な命令に従わざるを得なかった兵士たちが次々と散ってくのを見続けるには辛すぎるものがあった。が、やはり物語の終わりまで知らなければいけないと覚悟を決めて単行本を揃え、最終巻まで読んでみたが本当に良かった。演出の部分が相当にあるにせよ、最期の光景は涙なしには読めない!シベリア抑留を描いた作品ラーゲリ〈収容所から来た遺書〉 河井克夫 辺見じゅんstarstarstarstarstar_borderひさぴよ原作『収容所(ラーゲリ)から来た遺書』(辺見じゅん・著)の映画化を機にコミカライズされた本作。人気俳優が演じた映画版に比べ、漫画版の方はというと地味に感じられ、感動の嵐はないかもしれないが、無理に泣かせようとせず淡々と描かれていて、個人的には漫画版の方が断然良いと感じた。 シベリア抑留の漫画と言えば、おざわゆき先生の「凍りの掌 シベリア抑留記」も忘れてはいけない。こちらも合わせて再読したい。 また、東京新宿の平和祈念展示資料館では、シベリア抑留に関する貴重な展示が常時公開されている。入館無料なので新宿に立ち寄った際は足を運んでみては。 https://www.heiwakinen.go.jp/ 天才が活躍するって、気持ちがいいアルキメデスの大戦 三田紀房マンガが主食※ネタバレを含むクチコミです。天才アルキメデスの大戦 三田紀房starstarstarstar_borderstar_bordermotomiフィクションの中に実話を入れた漫画です。 戦艦大和の造船をやめさせようとする。お話の目的と、やめさせるアプローチが面白いです。あの手、この手、でなんとか難題をクリアしてしまうのが、スッキリします。 第二次世界大戦の大まかな内容が分かってるとより面白く読めると思います。 難しい会話、やり取りがカッコいいので設計図、会議、数学などが好きな人にはとくにおすすめです。戦争やっぱやめた方がいいような・・・苺と骨 大東亞戦争悲話 武野繁泰 宇根和歌子starstarstarstar_borderstar_border酒チャビン最近マイブームの太平洋戦争ものですね。この作品では「大東亞戦争」と呼ばれています(日中戦争から含めてそう呼ぶようです)。 とはいえ戦局がどうのとかっていう話ではなく、基本的にはその時代に生きた民草の心情・生活を描いたマンガです。実話がかなりベースになっているようです。戦争に伴う殺傷の悲惨さ(ピカが落ちたり)そのものよりも、どちらかというと時代に翻弄される悲哀みたいな方に比重があるように感じました。 こういうの見ちゃうと、個人的には戦争やっぱやめとこうかなって気になってきます。戦争やってる人(やろうと企画してる人)たちも、その前に一回このような作品を読んでから決断するようなフローにしてみると、少し戦争が減るのかな、と思いました。 しかもこちらの作品は2巻完結で合計300ページなかったので、サクッと読めて、忙しい政治家の方にもオススメです。 これほど濃厚な味のする、淡々と進行する漫画はない総員玉砕せよ!! 他 【水木しげる漫画大全集】 水木しげるstarstarstarstarstar完兀『総員玉砕せよ!』は巨匠・水木しげる先生が自身の戦争体験を基に描き切った長編戦記漫画だ(※新装完全版を読んでのクチコミです)。 等身大の兵隊さんたちの日常が淡々と描かれる前半から、その淡々さはあまり変わらないまま物語のトルクは増していき、やがて感動的というにはあまりにも悲しく、あまりにも空しい結末を迎えて話は終わる。私はこれを読み返す度に泣いてしまう。 巻末の筆者あとがきで「九十パーセントは事実です」と物語の最後を脚色したことが語られ、寄せられた解説ではそのことについて「(ラストのフィクション化によって)”事実を超える真実”を描くことに成功した」と評される。 とても同意できるのだが、私としてはあのラストは水木先生にこみ上げてくる”わけのわからない怒り”を最も強く紙にぶつける挑戦であり、戦死者の霊たちがさせた仕業ではないかと思う。そしてそのラストが”わけのわからない怒り”をどれだけ昇華させることに成功したかはわからない。確かなことは、強烈な読後感を読者に与えてくれるということだ。 ラストも印象的だったが、天国のようなところだと作中で触れられる舞台の美しい背景、とりわけ数度あらわれる鳥と花、及び天から射す光が印象的だ。 どれも日本人の想像する天国と結び付けられる存在なのだが、そういった観点で、鳥は物語から姿を消すタイミングが、花は背景に現れるタイミングが、天から射す光はコマとして使われるタイミングがなんとも思わせられる。特に花は、水木先生が大胆に意図して配したフィクションではないかと考える。泣けてくる。 それからこの作品と一緒に、ズンゲン支隊に関するNHKの戦争証言アーカイブの視聴も薦めたい。 水木先生の生証言は当然だが、堀亀二さんの証言なんかも必聴ものだろう。印象深いキャラクターである中隊長の下で戦争を過ごしたズンゲン支隊の生存者だ(1965年にズンゲン支隊の本を出版されてもいる。水木先生も資料としてあたったかもしれないが、この本は簡単には手に入らなさそうだ)。 最後に、些末な不満点が一つある。新装完全版『総員玉砕せよ!』はなぜ文庫サイズで発売されてしまったのか。同時期に出た『漫画で知る「戦争と日本」』と同様のA5サイズだったらどれほどうれしかったことか…夢幻の軍艦 大和の感想 #推しを3行で推す夢幻の軍艦 大和 本そういちstarstarstarstarstar_borderマンガトリツカレ男・読んだ直後に思ったこと ※一番大事!※ 連載中も読んだし確か完結した直後ぐらいにも全巻読んでいるはずだがこんな終わり方だっけ?と気持ちになった・・・ ・特に好きなところは? 主人公が過去を改変することによって現代の知り合いである松橋が消えるがそんな細かいことはどうでも良いという感じだな ・作品の応援や未読の方へオススメする一言! 主人公が太平洋戦争直前に意識?(後半は肉体も)だけ移動して現在の情報や知識を駆使して日本の戦争を有利に運びはするが意図しない未来になったりしたのが面白かったな 北方との戦争というもの新装版 凍りの掌 シベリア抑留記 おざわゆきさいろくソビエトによる"シベリア送り"の話。 なんと、おざわゆき先生のお父上の実体験を漫画にしたものだという。 当時シベリア送りにあった日本兵の数はおよそ50万人、労働力として敗戦国・日本にそれを強いた。 その過酷な実態はもちろん他の文献でも知ることが出来るだろうけど、本作で知った個々人の人間性が失われていく様は想像を絶する。 歴史は繰り返すと言うが、こればかりは繰り返されないよう願う。 歴史ファンは、たまらない!アルキメデスの大戦 三田紀房クロキ歴史と、作者のファンなので読んでいます。天才数学者が日本を守ろうとする話。数学で相手を説得するシーンが好きです。非常識が常識になるあとかたの街 おざわゆき名無し昔の常識が今の常識とは限らず、逆も言えます。 常識と思っていたことが今読むと全然違う。 夏のこの時期に読んで戦争とは人間をどういうものにするか考えるのが良いですね…。 思考も思想も変えてしまうし皆苦しむし悲しむ。 漫画になってるとすごくわかりやすいので頭にスッと入ってきます。 説教臭くなく、考える部分は読者に委ねられてる感じが好印象です。おざわゆき先生のお母さんの実体験あとかたの街 おざわゆきstarstarstarstar_borderstar_borderかしこ名古屋大空襲を生き延びたおざわゆき先生のお母さんの実体験。空襲の前後に大地震があったことなども描かれていて、実際にそこに住んでいた自分と同じ庶民の感覚での戦争体験を感じることが出来た。主人公の家は貧乏だから仲が良かったクラスメイト達が進学した女学校に自分だけ行くことが出来なくて劣等感があったんだけど、学徒労員でも優遇されて戦闘機を作ってる三菱の工場で働いていた女学校の生徒達は真っ先に空襲で狙われて亡くなってしまったエピソードが悲しかった。おざわゆき先生のご両親はそれぞれに過酷な状況を生き抜いて来られたんだな…。5巻の巻末にはこうの史代先生との対談も収録されていました。 おざわゆき先生のお父さんの実体験新装版 凍りの掌 シベリア抑留記 おざわゆきstarstarstarstar_borderstar_borderかしこ当時19歳だったお父さんは東京で大学生をしていて、上野で落語を聞いて下宿先に帰るとお父さんが召集令状を持って迎えに来ていた…というところから話は始まります。しかし一度も実弾を撃つ事なく満州で終戦を迎え、そのままソ連の捕虜にされてしまいます。まだ収容所に向かう途中での畑のじゃがいもを掘り起こして泥がついた生の状態のものを食べるシーンからすでにその過酷さが伺えます。ようやく日本に帰国できた時に見えた緑の山々が美しかったという思い出は、ちばてつや先生もご自身の体験として漫画に描かれていたと思う。実際にあった恐ろしい出来事の話だけど直視できないような描き方はされていないので読もうか迷ってる人はぜひ。元々はコミティアで発表された作品だとは知りませんでした。ペリリュー外伝ペリリュー ─楽園のゲルニカ─ 武田一義 平塚柾緒(太平洋戦争研究会) 太平洋戦争研究会名無し※ネタバレを含むクチコミです。まさにタイトル通りの内容番長特攻す! 貝塚ひろしstarstarstarstarstar_borderマンガトリツカレ男貝塚ひろしのマンガをあまり読んだことがないので読んでみた。多分確実に読んだと思うのは貝塚ひろし自伝マンガの「母のいないマンガ」ぐらいでそれ以外はあまり意識して読んだことはないと思う。 内容はあらすじに書いてある通りで主人公は逡巡せずにストレートな感じで進んでいき、いきなり終わる感じで昔のマンガという感じだ。とりあえず分かったのは貝塚ひろしの描くキャラクターの表情がむちゃくちゃいいので他のも読んでみようと思う 併録されていた「ああ、零戦トンボ!」はなんか読んだことあるなと思ったらほるぷ平和漫画シリーズに入っていたやつだった。 2巻の展開がすごい零戦少年 葛西りいちstarstarstarstarstarかしこ1巻はゼロ戦乗りだった作者の祖父から聞いた話を漫画化したものです。お国の為に戦う!という気持ちではなく、田舎の11人兄弟の末っ子として産まれた自分が成り上がるにはこれしかないと思い、海軍航空隊に志願した…というフィクションじゃないリアルな話が読めます。ただ1巻はよくある戦争漫画の域を出ていません。ここで読むのをやめてしまう人もいるんじゃないかと思います。 元々は1巻で完結する予定でしたが約5年後に2巻が出ます。きっかけは祖父と同じ余科練で訓練を受けていた男性が漫画を読んで手紙をくれたことです。そこで祖父からは孫である作者に語られることがなかった更なる戦争のリアルを聞くことになります。この”2人”のゼロ戦乗りの話をぜひとも映像化してほしいです!ラストがつらい紫電改のタカ ちばてつやstarstarstarstarstar_borderかしこどうして紫電改のタカを読もうと思ったかというと萩尾望都先生が好きだとおっしゃっていたな〜と覚えていたからです。主人公の滝城太郎は誰にもマネできないくらい高レベルの飛行テクニックを持っているんですが、まだあどけない少年なので可愛らしさが満点です(確か萩尾先生もそこを推していたはず)。少年マンガで連載されていたのでストーリーもTHEマンガな展開が続くんですが、ラストでいきなり現実を突きつけられるのでかなりショックを受けました。やっぱり反戦がテーマの作品なんだな…。最初の数話は好きかな過去になんかできない!!! はしもとみつお 香川まさひとマンガトリツカレ男連載中に読んではいたが色々話が飛んでわかりにくい感じだったが単行本で読むとそんなにわかりにくくはなかったしあと昔の戦争マンガに比べて表現がキツくないので読みやすかった。 あらすじの通り終戦記念日に読むといいかも知れない。 山田風太郎『戦中派不戦日記』が漫画に風太郎不戦日記 山田風太郎 勝田文名無し大作家・山田風太郎が、医大生だった23歳のときに書いた日記『戦中派不戦日記』がコミカライズ…! マリーマリーマリーや、イギリスの人気小説原作の「プリーズ、ジーヴス」で知られる勝田文の新連載『風太郎不戦日記』がモーニング36・37合併号よりスタート(月イチ掲載) https://morning.kodansha.co.jp/news/5160.html すでに扉絵の時点で魅力にあふれていて、ワクワクしながら読みました。 ガラスに貼られたテープ、尋ね人のチラシ、若者のいない銭湯、濁った湯船…。戦中の市民の暮らしぶりが一人称視点で描かれるため、非常に生々しく感じました。 作画に関して、勝田先生の白黒はっきりした塗り、独特の味わいの線、背景と小物の書き込みがとにかく素敵。 物語の内容自体は重たいのですが、「絵と内容のバランス」が取れていて読みやすかったです。 【第1話】「昭和20年の湯加減」 https://morning.kodansha.co.jp/c/futaroufusennikki.html私が初めて読んだ近藤ようこ先生の作品戦争と一人の女 近藤ようこ 坂口安吾かしこ表紙がすごくカッコよかったので手に取りました。内容は坂口安吾の小説をコミカライズしたものになります。原作小説が発表された当時はGHQから大幅に検閲された影響もあって評価はあまり高くなかったそうですが、近藤ようこ先生は2001年に講談社文芸文庫から出版されたGHQ無削除版を元に漫画にされているのでパンチがすごいです。まず「夜の空襲はすばらしい」から始まります。 戦時中にどうせ日本は負けるんだと思いながら生きていた男女がいて、二人は夫婦同然に暮らしてるんだけど、戦争が終わったらこの関係も終わるんだろうってお互いに心の中では思っている。女は貞操観念にダラしなくて、でも不感症で、男は全部を知っていて一緒にいたけど、戦争が終わりを迎えて…という話です。 読んでいて理解はしていると思うんですが言葉にするのが難しいですね。改めて読み返してみたら、あとがきに「青林工藝社に漫画化のアイディアを承諾してもらってから完成までに6、7年かかっている」と書かれていたのに驚きました。でも、こんなにすごいものはそれ程の年月がかかって当然だと思います。<<123>>
https://www.shogakukan-cr.co.jp/book/b110795.html 『漫画が語る戦争 焦土の鎮魂歌』(小学館クリエイティブ)で読んだ曽根富美子の短編「ヒロシマのおばちゃん」が衝撃的だったので、もう一度読みたいと思って電子書籍版を探してたら、この短編集に収録されていた。 「ヒロシマのおばちゃん」以外の短編は、戦争の話というよりちょっと昼ドラっぽい話が多いものの、それでも表題作を読むためだけに買っても損はないと思う。 作品の詳しい時期は分かってないのだが、状況からして1990年代頃の設定と思われる。広島での戦争体験を語り継ぐの”一人のおばちゃん”を通して、戦時中の自身の半生を振り返るところから物語は始まる。巧みな語り口と、曽根先生お得意の、不幸で陰湿な心理描写にグイグイと引き込まれてゆく。そしておばちゃんは不幸のドン底と同時に、原爆の日を迎えるのだが…。 変わり果てた広島の街を、怨念そのものとも言える鬼気迫るタッチで描き出し、一度目にしたら忘れられないような光景がこの漫画にはある。おばちゃんは最後に「あれは地獄だったよ」とだけ語る。と同時に、この出来事が教科書の中のたった数行に収まってほしくない、と願うのだった。 個人的には「はだしのゲン」と同じく、ぜひ読み継がれてほしい戦争漫画の一つだ。