ハルロック

屁理屈と迷惑を「電子工作」で実現させる娘

ハルロック 西餅
名無し

かつてドラえもんの世界に登場した 「こんな道具があったらいいな」 という憧れの便利道具に近い性能のものが、 いまや「アイテム」「ソフト」「アプリ」「ツール」 などと様々な形で日常生活に登場し実現してきている。 すごく便利で、あれば助かるものが しかも結構お安く「買えちゃう」のが今の世の中。 そういう世の中に「電子工作」の需要はあるのか? そっちの世界には詳しくないので想像だが、 多分、ほとんど需要は無いと思う。 かつては夢の道具を自分の手で作る、 実現させる、という趣味的にも実利としても 素晴らしい世界だったのかもしれない。 だが今や、金と時間をかけてアイテムを作るよりも 買ったほうが早くてお得な時代だ。 勿論、作る楽しみというのは確実にあるだろうし、 無から有を生み出すことの価値もあるだろう。 だが、電子工作は今では自己満足以上の評価は得がたい。 「匠」だとか「職人」だとか、 「芸術家」などの称号を世間は与えてくれない。 そんな絶滅危惧種ともいえる趣味の世界の 「電子工作」を題材にした漫画が「ハルロック」。 凄く面白い漫画なんだが、凄いのは 電子工作という趣味的な世界を世に喧伝し、 価値や需要を拡大し再興させようという考えが 基本的にほとんどないだろう、ということ。 こういうのが好きな人もいるんだろうな、 くらいには思わせてくれるが、それ以上に こういうのが好きな人って理解できん、という思いや こういうのが好きな人ってメンドクサッと思わせる 部分が大きく、それを笑いにしている。 ギャグ漫画としては面白いけれど。 電子工作という趣味が自己満足的な 「屁理屈で成り立っている世界」ということを 尊重しつつ笑いにしている。 だがそれでいてこの漫画の読後感は悪くない。 主人公・ハルの電子工作に周りの人は振り回されるのだが、 わりと皆が悟りを開くが如く達観し、 結局は?ハルにキレたり絶縁したりせずに 暖かく見守り、つきあい続けるという ハートフル?な終わり方が多いから。 それでいいのか?と思いつつも ハルの周りの人達、みんな良い人だな~と ちょっと癒される。 なんか作者は、そんなこと狙っていないような気もするが。

パーツのぱ

綿密な取材で構成されたパーツショップの内情マンガ

パーツのぱ 藤堂あきと
名無し

当たり前ですが、漫画は漫画雑誌にだけ掲載されているものではございません。一般誌や女性誌のなかには漫画が連載されてるものも多いですし、モデルガンやカードゲームなど趣味性の強い雑誌でももちろん掲載されています。囲碁の雑誌や昆虫の雑誌でも連載漫画をみたことがあります。今は大分少なくなってきていますが、パソコン雑誌が大量に発刊されていたころ、やっぱりさまざまな漫画が連載されていて、そんなにパソコン雑誌を読む方ではなかったのですが、『PCコマンド ボブ&キース』(なにげに単行本が三冊もでていた)という、アメコミ調の漫画がいろんな意味でぶっ飛んでいてよく読んでいました。  この『パーツのぱ』もパソコン雑誌の「週刊アスキー」で連載されている作品です。専門誌で掲載されている漫画は、その性質上、ルポものが多いのですが、『パーツのぱ』は完全なストーリー漫画。秋葉原のパーツショップ「こんぱそ」に勤める魅力的なキャラクターが織りなす日常が描かれております。  パソコンパーツに詳しいベテランで年齢不詳ツインテールの本楽、平凡な青年で特徴といえばドジをやらかすことの入輝、あまりパソコンパーツに詳しくないけど大きくて美しい天戸、仕入れなどの裏方作業を完璧にこなすアフロの手木崎など魅力的なキャラクターが、短いページ数で少しずつ少しずつ浸透していき、ゆっくりと世界が広がっていきます。    とはいえ、綿密な取材で構成されているらしくパーツショップの内情が詳しく描かれています。他店の価格を知るためにあれやこれや画策したり、万引きをあの手この手で捕まえたり、社員の着服が問題になったり…。暗い面もきちんと描かれているのも魅力の一つです。  『パーツのぱ』は、1話が2~4pと、週刊連載漫画の通常である16pに比べると圧倒的に少ないページ数の作品です。だからといって、内容がスカスカなわけでも説明不足なわけでもなく、ゆるく前後の展開とつながりつつも一話ごとに導入うと盛り上がりがあるので、不思議な読後感があります。なんとなくですが、NHKの朝の連ドラに近いような、連綿とつづきながらも飽きがこずに、ずっと読んでしまう感じ。これは、きっと普通の漫画雑誌では生まれてこない読後感なのでしょう。