アンノウンカラー

おもしれーコミュ症ぼっち×超美人Xジェンダー #1巻応援

アンノウンカラー ゆめみつき
兎来栄寿
兎来栄寿

美麗な表紙絵に惹かれて見てみたら、『密かな花笑み』のゆめみつきさんの作品でした。となれば、内容もきっと良いものだろうと安心して購入できました。 大学デビューしようと気合を入れたらパンクな格好になってしまい、余計に人が離れていって失敗した主人公・未結花(みゆか)の残念ぶりが悲哀を誘いつつも面白い、「Xジェンダー美人とコミュ症ぼっちのプロデュースコメディー」(公称)です。 とにかくカタカナ語に弱い主人公で、 「カラバリ」→「カラアゲバリア?」 「ホカンス」→「ソーナン◯?」 といった具合。「メドゥーズピンク」も「ティント」もなにがなにやらわからない……! 挙げ句の果てには、コンパで 「好きなタイプは?」 と問われたら 「に…人間…?」 「ストライクゾーン広くない?」 となる始末。おもしれー女です。 でも、『ぼっち・ざ・ろっく!』のぼっちちゃんではないですけど、こういうコミュ症で陰な気質の主人公の方が現代では逆に強い共感の対象になり得そうです。 ゆめみつきさんの美しい絵が本作の魅力の大半を担っていると言っても過言ではないと思いますが、未結花の憧れの対象となる親戚のXジェンダー・千亜季(ちあき)がそれはもう睫毛もバッシバシで美しく美しく描かれていきます。相手役が男性なのか女性なのか、そのどちらの要素も感じさせながら判然としない、でもそれはそれでいいと感じさせられるのも現代的です。 千亜季にプロデュースされることで、少しずつかわいくなっていく未結花の成長ぶりも見所。素材が良い子は磨いて真価を引き出したくなりますよね。 コミックシーモアで先行配信されていた作品で、全8巻中の1〜5巻まで今週末に他の電子書籍ストアでも相次いで発売となりました。6〜8巻分は3/26発売予定となっており、最後まで楽しませてもらえそうです。 なお、ゆめみつきさんは一迅社の新レーベルであるコミックHOWLでの新連載も控えているようで、そちらも楽しみです。

ハイパーインフレーション

新しいスタイルの頭脳戦もの

ハイパーインフレーション 住吉九
酒チャビン
酒チャビン

主人公の限定的な特殊能力(超精巧な偽札を生み出せるが、全て同じ番号、紙の繊維の向きも全部同じ、1日に生み出せる数に限界がある、等の弱点あり)を使った経済も関係する頭脳戦ものです! 初期はジョジョや諸星大二郎先生っぽい感じもありましたね、後半はほぼ感じることはなかったですが。 経済も関連する頭脳戦というと、相当怜悧なキャラでシリアスな作風をイメージすると思いますが、かなりギャグ要素が混じっています。狙ってやってるのだと思いますが、そこが結構新しく、面白かったです。ギャグも良いです。というか絵柄は完全にギャグマンガのそれだと思います。 ギャグが入っているので頭脳戦部分が中途半端かというとそんなこともなく、結構捻られていて唸らされるので、作者すごいなと思います。しかも変態というか若干のエロ要素??も入っているので、相当な欲張りさんですね。 描き方によってはかなり重めな作品にもできたと思いますが、ライトに読めるので、間口は広めではないでしょうか。皆が広く楽しめると思います!! ただデスノートみたいな感じの絵で切れ味鋭く作ってみたらどういう読み心地になるのか読んでみたかった気はします。

あさひなぐ

「何者でもない」人たちのものがたり

あさひなぐ こざき亜衣
酒チャビン
酒チャビン

とあとがきで先生がおっしゃってるとおりのマンガです。 まず主人公がいなか臭いです。絶妙ないなか臭さで、いなか臭すぎるとマンガ臭くなってしまうのですが、本当にいそうで絶妙です。 ですがそれも素晴らしいです。 よく『ちはやふる』が少女マンガの皮をかむった少年マンガと言われていて、私すごく好きなのですが、それに近いスポ根的な部分もかなりあり、すごくこちらの作品も面白いです。つうか、よく高評価されてるのは見かけてはいましたが、こぎゃん面白いマンガとは思ってもみませんでした。ただ、若干こちらの方が少年度が低いというか、女子っぽい部分が多めでしょうか。そこも良かったと思います。 つうか最初の数巻は、わざとなのか描写不足なのか、別にそこまで皆頑張ってる感じがせず、したがって主人公のチームが負けようが特に何の感傷もなかったのですが(どちらかというと敵役の一堂選手の方が言い分もわかるし思い入れがありました。一堂という苗字も、世界的名作である奇面組へのリスペクトが感じられて好感が持てます)、途中からかなりよくなってくるので、5〜6巻くらいまでは諦めないで続けてほしいです! あと、こういう「冴えない主人公が強い人に憧れて頑張って強くなる」っていうのは定番ですが、本作品がレアなのは、憧れだった強い人から何かを受け継いで強くなった主人公が、憧れられる側だった人間に何かを返すところまで描かれている点です。 主に最終巻の話になってしまうのですが、大体前述の定番ものですと、最終巻は緊迫したストーリー運びながらも、どこか「どうせ優勝やろ」みたいなところもあるのですが、本作は最後の最後一捻りが聞いていてすごく心に残る作品となりました。 個人的には紺野選手とやす子が好きですね。すごくいいと思います。というか、このマンガの特徴として、マンガ自体とかストーリーとかが好きっていうよりも、若干脇役っぽい方も含めた登場人物のことがすごく好きになるっていう点があります。あまりそういった経験がなかったので、それも高評価をつけた理由です。 推しってこういうところからスタートするのですかね?? いずれにしても、自分ががんばっている人にはまず間違いなくオススメできる世界レベルの名作ですので、ぜひ読んでみてください!!全34巻と、完全に読者の心を入り口から折りにかかってきますが、がんばれる人なら大丈夫です!!!がんばってない人、頑張れる自信がない人はハンチョウを読みましょう!

迷宮日和

少女たちの少し不思議な日常と、世界の謎 #1巻応援 #完結応援

迷宮日和 吉富昭仁
兎来栄寿
兎来栄寿

14歳の日向、13歳の愛梨、12歳の果歩、11歳の真理。4人の少女たちと、愛梨が想いを寄せる少年・翔が中心となって繰り広げられる、地下世界の群像劇です。 物語世界に関しては最初に何か説明があるわけではなく、読み進めて行くたびに情報が小出しにされていき少しずつ全容が見えていくという構成です。 例えば、1話で解るのは ・地下の九龍城のような場所で人々が生活を営んでいること ・電気は通っていること ・立入禁止区域があること ・翔は地図を作っていること ・黒いスーツの男がやってくると家族全員どこかに連れ去られること ・カンガルーが出没すること ・建造物を生成する″野良重機″が存在すること といった感じで、最初は掴みどころがないように感じるかもしれません。 しかし、その後も ・誰も空を見たことがない ・誰も超えたことがない″東のカベ″という壁が存在する ・毎年6月の毎週月曜日〜水曜日16:10から1時間、真水の雨が降る と段々色々なことが解っていくのは、ミステリー的な面白さがあります。 また、メインのキャラクターたちによるこの世界における日常描写、とりわけ愛梨と翔のラブがコメるさまなどはそれだけで楽しいのですが、オブラートのように世界の謎を包み隠している印象もあります。この辺りは同じく吉富昭仁さん作の『地球の放課後』を感じさせますね。 玄関の靴の4者4様の揃え方で性格を暗示しているのも好きなシーンです。 読んでいるときは、早くもっとこの世界の謎の核心に近づきたいと思うのですが作中で 「世の中知らないほうが面白いことだってあるんだよ!!」 「もともと人生は″迷宮″なんだしさ」 というセリフが登場する辺り、メタ的です。 少し不思議な世界観の作品が好きな方は1巻完結で読みやすいので、試し読みから入ってみてはいかがでしょう。