青年マンガの感想・レビュー15399件<<409410411412413>>「巨人を殺す」と決めた少女の話I KILL GIANTS ケンニイムラ ジョーケリー 柳亨英ANAGUMAロングアイランドに暮らすバーバラはクラスでも浮いていて、家族とも良好な関係を築けていない小学生。その原因は彼女の言動にあります。バーバラの生きる目的はひとつ。「巨人を殺す」こと。 「中二病女子の成長物語」というコピーが付いていたようですが、バーバラの行動はたしかに「中二病」的です。自分がもし多感な時期に『進撃の巨人』にドハマリしていたら…とか想像してしまった。 誰にも理解されないからと自分の世界に閉じこもり、どこか他者を見下しているかのように振る舞い、挙げ句唯一の友人ソフィアも傷つけてしまいます。はっきり言ってバーバラは感じの良いキャラクターではありません。 「一体この子は何と戦っているつもりなんだ…」と冷めた気持ちで作中の人物と一緒にため息吐いちゃうこともあるかもしれません。 ところが、彼女が殺そうとしている「巨人」の正体が明らかになった瞬間、一気に空気が変わります。これまでバーバラにしか見えていなかった巨人や、妖精の世界の真実が理解できてしまったとき、彼女に抱いていた印象は180度変わるはず。 誰もがどこかで味わったことのある青春の辛さが滲んでくる、苦みに満ちた作品なのは間違いないと思います。それでも読み終えた頃にはフッと優しい気持ちになれる、素敵な作品です。ドンデン返しと爽やかなエンディングを読んで味わってほしいです。初期のオットセイの形がアレだった!?やる気まんまん 横山まさみち 牛次郎名無し1977年から2003年まで日刊ゲンダイで連載されていた擬チン官能漫画。 ふと、これまで読んだことのなかった、単行本1巻から読んでみようと手にとって驚いたのだが、あのオットセイは、最初からあのコミカルな形ではなく、初期の頃は普通のオットセイとして描かれていたというのを、今更ながら知った。 やるまん復活を報じたゲンダイの記事に理由が書いてあったのだが、 https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/info/275039 要は、当時の表現規制に対応するため、苦肉の策で男性器を動物に見立てることで生まれたアイデアだったらしい。 やるまん以前は少女マンガを数多く描かれてきた横山まさみち氏だったが、「エロは描かない」と言いつつも、結局、一番の長寿連載となってしまったというのは、何とも業の深さを感じさせる話だ。 ちなみに記事の中で「43年前の“幻の第1回”を発掘」とあるが、電子版「やる気まんまん」の1話「セックス・ファイト」に普通に収録されていたので、そこまで幻というわけでもなかった。ズボラなのに超天才発明家主人公がすごいりもで・りんぐ ふくた伊佐央名無しこういうボケっとしてるのに頭脳は天才な主人公、好きですね…!それも異次元レベルの天才。発明した道具が万が一世間に広まると人類を滅ぼすから絶対に口外しないようにと家族に言われてます。そもそも主人公自身があまりにズボラな性格のため、それを補うために発明している。なので道具が誰かの役に立つとか、世界を救うとか、そういうことは起きない。 むしろその道具によって家族にけっこうえげつない迷惑をかけます。 いちばん被害を受けてるのは妹のいずみのような気がする… 弟は一見利発そうに見えて救いようのない悪ガキだし、父親はパンチの効いた見た目のくせに超無口。母親はシリコンバレーでなんかの会社のCEOしてる。 主人公以外の家族も情報量が多すぎて、小ネタの宝庫という感じの漫画です。 #1巻応援百七不思議の少女と新米教師のゆかいなホラー漫画 #読切応援スイカ(読切) 森とんかつstarstarstarstarstar_borderかしこ自称どこにでもいる関西人の新米教師が赴任した丑光高校には百七不思議が存在する!いやいや107ってありすぎだろ、こりゃ完全にギャグ漫画だなと思ったら意外とちゃんとホラーでビックリ。というかハイレベルなシュールギャグだった!大きな黒目がまことちゃんを彷彿とさせる謎の小学生スイカちゃんは百七不思議の一つ。彼女に振り回される新米教師の慌てふためきようがもっと見たい。 ホラーです!でも、ちょっと笑えるシライサン 乙一 崇山祟starstarstarstarstarnyae※ネタバレを含むクチコミです。人間と蚕の共存を願った男の話御蚕様改良記録 光秀日量名無し蚕に対する圧倒的熱量を感じる読み切り。これぞ四季賞というテーマかと。虫がとにかく駄目な人にはきついかも知れませんが、蚕はとっても可愛く描かれています。それゆえに、違法繁殖させる悪徳業者が増え、主人公も命以外を全て失ったといっていいような展開は悲しかった。 繁殖や遺伝子改良について全く知識がないので、主人公が人間と蚕の共存を願って行動したことが正しいのか間違っていたのかわかりません。ただもっとこういう誰も描かないようなテーマの漫画を読みたい …と思っていたら作者の次回作が、ファンタジック・マンガ業界コメディ『パクリ戦争』と書いてあってズッコケました(超絶楽しみです)不良少女と熱血教師、"決して報われない恋"の物語 #1巻応援私の恋で死んでくれ 山川まち としきsogor25援助交際まがいのことをしている不良少女・愛利。彼女がラブホテルから出てきたところにたまたま巡回中だった高校教師・藤原が遭遇したところから物語が始まる。 絵に書いたような熱血教師の藤原は愛利のことを更生させようと一生懸命に動いてくれる。そんな藤原に対して最初は煙たがっていた愛利だったが、徐々に気持ちが移ろいでいく。 でも、この愛利の気持ちが恋だとしても、それはきっと"報われない恋"。そこには教師と生徒という関係以上に"越えられない壁"がある。 果たして2人を隔てるものとは何なのか。そもそも何故こんなタイトルなのか?それは1話を読んでみてのお楽しみ。 1巻まで読了。 "田中"だから歴史を変えられる、中国歴史ファンタジー #1巻応援項羽と劉邦、あと田中(コミック) 亜希乃千紗 古寺谷雉 獅子猿sogor25普通のサラリーマン・田中はある日コンビニを出た瞬間に秦の時代の中国にタイムスリップ。そこから、項羽や劉邦など、歴史上の英雄たちと出会い、さらにその後の中国の歴史を大きく変えていくという物語。 普通の日本人のサラリーマンが古代中国で歴史の中心に導かれていくというメインのプロットを動かすための、個々の設定の配置が絶妙な作品。過去の異国への転生から田中が生き抜くために必要な要素が違和感なく、かつこれしかない!という形で使われている。歴史ファンタジーとしても良くできていて、三国志等の中国史の物語が好きな人には新鮮な切り口で刺さりそうな作品。 1巻まで読了息子を奪われた哀しき獣人の復讐譚 #1巻応援獣国のパナギア メイジメロウsogor25超人的な身体能力を持つ獣人(ゾア)と呼ばれる存在がいる世界。人類は獣人を恐れ人間社会から排除しようとし、一部の獣人は迫害を逃れるために身を潜めて暮らしていた。そんな中、比較的獣人の少ない地域へと移ってきた獣人の女性ランダは、街の警察に獣人である県議を懸けられ、その騒動の中で一人息子を謎の組織に誘拐される。辛くも生き延びた彼女は、その一人息子を奪い返すために復讐心に委ね、戦いの中に身を投じてゆく。 人類側にも獣人側にもそれぞれの組織があり、物語を俯瞰すると様々な対立構造があって複雑な世界観が見て取れるんだけど、そこに行動原理の殆どを"息子を取り返す"という一点に置くランダが加わり、現状のパワーバランスに依らない異質分子として掻き乱していく。 戦闘シーンの迫力も凄くバトルマンガのような雰囲気もありつつも、基本的にランダの主観を通して描かれるために全ての景色に負の感情が掛かって見えて、それがストーリー全体をダークファンタジー足らしめている作品。 1巻まで読了。ヤンマガ愛が凄い!ボクの青春ヤングマガジン 柳内大樹名無し柳内先生の学生時代から、デビューするまでを描いた自伝的な読切漫画。20pとは思えないほど濃い内容で、80年代後期以降のヤンマガ作品からどれだけ影響を受けてきたか、とても伝わってくる内容でした。次から次へと出てくる昔のヤンマガの名作の多さにあらためて吃驚。自分は稲中世代なので、ビーバップハイスクールとか、世代の違いで印象が異なる所があるかもしれないですね。セブン☆スター第2部「SEVEN☆STAR MEN SOUL」の人気がイマイチだったという裏話は少しショック。あんなにカッコいい漫画なのに…なぜだ…。第3部の「セブン☆スターJT」に期待してます。 曜日ごとに人格が入れ替わる「七曜人格症候群」とは…七曜人格症候群 七清水くらげ名無し※ネタバレを含むクチコミです。「おまえの罪をよこせ!」悪を裁く悪トガリ 夏目義徳みど丸新装版が発売されたタイミングで手に取りました。『クロザクロ』のダークな雰囲気が印象に残っていたのですが、前作であるこの『トガリ』も悪人が悪人を狩るという、ピカレスクに振り切った内容です。 ダークなアクションで魅せる本編の魅力ももちろんながら、新装版には夏目先生の各話解説が付いていて、これも読み応えがあります。 どんなことを考えて描いていたのか、いつ連載終了が決まったのか、モチベーションは何だったのか…。週刊連載というシビアな世界の感覚が克明に記されていて、辛いことばも多々あるのですが、のめり込んで読んでしまう。 作者の言葉とともに作品を読めるというのは貴重な味わいだと思います。 他者を拒絶するだけだった統兵衛が人とのつながりを認め、少しずつ変わり始めていき、物語が加速するターニングポイントで連載終了となってしまった本作。 そこから10年の時を経て続編再開、ということ自体が『トガリ』という作品の持つパワーを証明していると思います。間違いなく「続きが読みたい」と感じられる漫画でした。 4巻読み終わった頃にはきっと続編『咎狩 白』も読みたくなるはずですよ。怖いけど続きが気になるこの感じ。。寄生列島 江戸川エドガワPom 中々のグロさ具合でした。。 島の人達がおかしくなってしまう様も、怖かったなぁ。特に目が物語っている感じ。。 いつどこで寄生されたのかとか、寄生元とか色々気になってしまう。 ので、2巻以降も読み続けたいと思います。 #1巻応援 10ページで描かれる「下品すぎる天国と地獄」地獄で会いましょう 原克玄名無しこれ以上ない地獄の地獄ぶりが描かれていたけど、普通に考えて天国も嫌だろ…伊浦くんドンマイ…。 ボールみたいな鬼がちょっとかわいいなと思った。何者だったんだ、キヨシ・ヤマグチ(本名︰山田一郎)バミューダトライアングル 竹内佐千子名無し奴が2020年の日本を知っていることは間違いないのだが…。 総理大臣が消えて未来は変わったのか、知りたかった。なんで全裸で走り回っちゃんたんだ。カステラ風蒸しケーキおむすびの転がる町 panpanyaすいとんpanpanyaさんが山崎製パンから発売されていた菓子パンにどハマりした話「カステラ風蒸しケーキ物語」がおもしろかった。大絶賛されているので食べてみたいのですが、残念ながら現在は生産終了しているようです。口の中が想像のカステラ風蒸しケーキの味になったまま虚しい気持ちでいたら、「続・カステラ風蒸しケーキ物語」「続続・カステラ風蒸しケーキ物語」が描かれていることを発見しました。panpanyaさんのカステラ風蒸しケーキ愛に感服いたしました…。 完結していないんじゃない?サイコドクター 亜樹直 的場健starstarstarstarstar_borderマンガトリツカレ男2000年前後くらい週刊モーニングで連載していた精神科医マンガ。連載当時読んでいて、サイコドクターとオフィス北極星を楽しみにしていた。 久しぶりに読んでみたが今連載している寄り添う感じの精神科医マンガと違い、相談者は心の悩みに苦しむが根本は過去の事件や事故が原因で発生している部分を解決するという面が強いと思う 2000年前後のマンガなのでWeb関連が古臭い感じもするけど面白かった。 全8巻となっていますが恐ろしいほど中途半端なところで終わっています。残りが単行本未収録なのかここで終わっているかも不明です。 読んでいたはずなんだが全く記憶になかった...100年後にバズる漫画JINBA 浦田カズヒロ野愛100日後に打ち切られる漫画家を読んでから妙に感情移入してしまい、どんな作品を描いていたのかと思ったらケンタウロス競馬漫画。 ケンタウロス競馬漫画というパワーワードよ。どういうことなの? しかもJINBAの前にもケンタウロスギャグ漫画を描いていると知り、そのケンタウロスに対する執念にちょっとゾクゾクした。 100日後を先に読むか後に読むかで感想変わるかもしれない。 ケンタウロス競馬漫画というとてつもないインパクトに受け身が取りきれないまま割とちゃんとしたスポーツ青春ストーリーがはじまり、どこまでがギャグでどこまでがガチなのかわからないまま2巻まで読み終えた。 この漫画について教えてもらったときに読んだ「あっというまに掲載位置が下がっていた」というコメントや100日後のカエル先生の苦悩が頭を過り、救いを求めながら3巻を読んだ。 純粋に作品を批評する土俵に立たないまま、ハイテンションかつ猛スピードで展開されていくストーリーをただ追いかけた。 時代が追いついていなかったんだ。 良いとか悪いとかではなく、凄い作品に出会えたような気はしてます。いつか時代が追いついて、ケンタウロスが競馬に出る日が来たらこの漫画は歴史的な作品になるはず。 追いつける日を楽しみにしています。マンガ自体も面白いが勉強になる公家侍秘録 高瀬理恵starstarstarstarstar_borderマンガトリツカレ男江戸時代後期の京都が舞台で日野西家の心優しき当主・晴季と食いしん坊姫・薫子に仕える青侍の天野守武の三人が中心に物語が進む。主人公は天野守武で青侍とは別に日野西家に代々伝わる宝刀『粟田口久国』を守る《刀守り》の役目があった。刀守りとしての仕事もあり、貧乏公家を支える仕事や同じ「守り仲間」の話など話数が短いのでテンポよく読めるしので全く飽きなかった。あと薫子が食う甘味がどれもむちゃくちゃうまそう 公家の言葉や文化なども細かく紹介されてたので公家のことを知るいい機会だった。 「刀守り」という仕事は実際にあったのかなかったのかが最後までわからんかった。個人的には存在して現代まで生き残っていて欲しい職業だし、これからどんどん新しい《○○守り》が出てきて後の世の中に一つでも多く残して欲しいものだ。 全然話は変わるけど、この作者のマンガが好きで20年以上読んでいて、小学館新人コミック大賞・1993年度前期一般部門受賞作【上意】や文藝春秋増刊のも持ってる。 心と体身体に良い作品短い横断歩道も待つタイプの中学生 やまうちなかやま自分、短い横断歩道も待つタイプの社会人 なのですが、帯に書かれている通り 「当たり前を守る少女に癒され」 ました。 毎話「そうなんだよ、これ守ってる人少ないよね、わかる!」って気持ちにさせてくれて、読んでいて気持ちがいいです。 濃ゆい漫画を読んで胃もたれした時に、読むと胃薬のように効いてきます。 妙なコマの静寂感も身体に優しい そして、自分が評価したいもうひとつのポイントが 表紙 よくないですか!? 朝・通学中の朝日が差し込む感じ、影の感じ 若干、朝早すぎる気もしますが、ずっと見ていたくなる良い表紙です 自分も善い事のためには躊躇しなようにしよう ※過激行動はダメだけどこんな清らかな漫画はじめて読みました清々と 谷川史子まるまるはー、泣いた泣いた。 純粋な心とか、思いやりとか、信頼とか努力とか友情とか、初恋とか…。これほど「いいものだなぁ」と思える漫画他にない。 こういうお嬢様学校があったらいいな、がぜんぶ入っている気がします。全員良い子、いい人って凄いな…。 谷川史子先生は素晴らしい〜。良い馬に乗る為なら手段を選ばないジョッキーゲス、騎乗前 西公平名無し「馬七人三」という言葉があるが、これは本来レースは馬の力だけではなく騎乗する人間の力量によって差がでるという意味である。しかしこの漫画の主人公の騎手・牧聖一は「7割が馬の力で決まるなら良い馬に乗れば楽勝じゃん!」と考えており、名馬に乗る為なら手段は選ばない。調教師や馬主に媚を売り、悪知恵を働かせ、プライドを捨て、コネのある女と寝る…とんだゲス野郎なのだ!!! 主人公が清々しいくらいのゲスっぷりで読んでるうちに好感が持てるようになってきました。実はいい馬を見抜く目は確かだったり、騎手としての才能もなくはないところもあるんですけどね。真面目な競馬漫画だったら絶対こんなこと描かないだろうけど、実際に良い馬に乗せてもらう為の営業力って大事なんだろうなとも思いました…ちなみにこれはギャグ漫画ですが(笑)主人公はヤバい奴ですが他のキャラも相当ヤバいです。ある意味みんなゲスですね。おもしろシーンはたくさんあるけど、3巻での謎の三角関係の発生とか結末も含めて好きだったな。競馬以外のネタも充実してました。 古屋兎丸の心意気が遺憾なく発揮されているのが・・・π(パイ) 古屋兎丸影絵が趣味月刊ガロのスーパースター(たしか福満しげゆきがそう言っていた)こと、古屋兎丸といえば、まず何といっても『π(パイ)』ですね。 月刊ガロといえば、常軌を逸した漫画家が大勢集まっており、エロ・グロ・ナンセンス・アバンギャルド等の作風で一世を風靡しましたが、古屋兎丸ももれなくこういった作風でガロからデビューしています。そして、まあ、私どもを含めた少々自意識を拗らせた人々がガロ系の漫画を読み漁ることとなったわけですが、こういったいわゆる大道からみれば外れ値にあたる作品というのは、一時こそはセンセーショナルに思われるのですが、その後が続かないということもまた多い。じつに沢山の漫画を読んできましたが、記憶にいつまでも残っているのはごく一部で、ほとんどの作品はタイトルすらも忘れてしまっています、まあ、これはガロ系に限ったはなしではありませんが。 で、こと古屋兎丸についていえば、いつまでも記憶に残っている。彼はガロ系作家の御多分に漏れず、常軌を逸した漫画家のひとりだと思うのですが、たとえば、同じく記憶に残り続けているねこぢるとは常軌の逸し方が違うような気がする。ねこぢるは純粋に外れ値の彼方にいるような漫画家でした。だけども、古屋兎丸の常軌の逸し方というのは、道を大きく踏み外す類いのものではなく、むしろ、あるひとつの習慣を偏狂的に続けるひとのそれであるような気がします。常軌を逸して几帳面なんですね。 それをまさしく体現しているのが『π(パイ)』ということになるでしょうか。ジャンル的にはオッパイのはなしなので、まあ、エロにナンセンスを掛け合わせたようなものになるとは思いますが、どうもそれだけではないような、エロとナンセンスをテーマとして掲げておきながら、それらを縦に貫いている偏狂的な習慣の持続がみられるのです。 主人公の沢木夢人は、オッパイ好きなデブのオタクだったのですが、ある日、オッパイと円周率の神秘に気がつき、これを探求することに人生を捧げようと決意する。しかし、このままでは一生なまのオッパイを見られないかもしれないと思い至り、高校入学まえに壮絶なダイエットをしてイケメンとして生まれ変わる、つまり高校デビューですね。ここまでで一巻の20ページなのですが、どうでしょう、この時点でもうすでに私たちの拗れた自意識が好みそうな漫画の体をなしておらず、気合いの入ったド直球の青春物語なのです。ただ、ちょっと、この気合いの入り方があまりにも偏狂的なんですね。何しろ、オッパイと円周率の神秘を探求して、人類に幸せをもたらし、ノーベル賞を取ろうという夢のようなはなしのですから。だけど、きわめて純粋で誠実で健全な漫画だと思います。自己紹介になりますが、純粋で誠実で健全な漫画が大好きです。 心が健康なときに読んでください殺人犯の正体 鍋島雅治 岩田和久野愛読んで気分がよくなるわけがないとわかっていても読みたくなってしまうこの手の作品。 実在した凶悪殺人犯を淡々と記録しています。 ひとくちに凶悪犯と言っても、人間性のかけらもないような悪魔から不幸な生い立ちゆえに殺人を犯してしまった者まで様々です。 月並みな感想にはなりますが、どれも実際に起こった事件だと思うと暗澹たる気持ちになります。 たまたま自分は安全な場所で普通の思想で育っただけで、何かひとつでも欠けていたらそっち側になってしまうこともあるのかもしれないな…と恐ろしくなります。 有名な事件ばかりなので知っている方も多いでしょうが、読んだ後に事件について調べるとより暗澹たる気持ちになりますね…。<<409410411412413>>
ロングアイランドに暮らすバーバラはクラスでも浮いていて、家族とも良好な関係を築けていない小学生。その原因は彼女の言動にあります。バーバラの生きる目的はひとつ。「巨人を殺す」こと。 「中二病女子の成長物語」というコピーが付いていたようですが、バーバラの行動はたしかに「中二病」的です。自分がもし多感な時期に『進撃の巨人』にドハマリしていたら…とか想像してしまった。 誰にも理解されないからと自分の世界に閉じこもり、どこか他者を見下しているかのように振る舞い、挙げ句唯一の友人ソフィアも傷つけてしまいます。はっきり言ってバーバラは感じの良いキャラクターではありません。 「一体この子は何と戦っているつもりなんだ…」と冷めた気持ちで作中の人物と一緒にため息吐いちゃうこともあるかもしれません。 ところが、彼女が殺そうとしている「巨人」の正体が明らかになった瞬間、一気に空気が変わります。これまでバーバラにしか見えていなかった巨人や、妖精の世界の真実が理解できてしまったとき、彼女に抱いていた印象は180度変わるはず。 誰もがどこかで味わったことのある青春の辛さが滲んでくる、苦みに満ちた作品なのは間違いないと思います。それでも読み終えた頃にはフッと優しい気持ちになれる、素敵な作品です。ドンデン返しと爽やかなエンディングを読んで味わってほしいです。