ローラ・ディーンにふりまわされてる

恋愛クズに振り回されるな! #1巻応援

ローラ・ディーンにふりまわされてる マリコ・タマキ 三辺律子 ローズマリー・ヴァレロ・オコーネル
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

「恋愛クズ」という存在は確かにいる。自分がモテることに自信があって、恋愛をゲームのように楽しんで、いつも自分が好かれていないと嫌で……という人物であると気付いた時には既に振り回された後。あぁぁクズ、お前に割いた時間を返せ! 本作の主人公は、人気者のクズ女に振られては復縁し、を繰り返す女子。別れるたびに友人達に慰められるけれども、何が辛いってクズ女しか見ていない主人公が、次第に親友をなおざりにしてしまうところ。 舞台はアメリカの、同性愛もポリアモリーも当たり前になっているコミュニティー。そこでは多様なパートナーの形、恋愛の形が描かれ、女性同士の恋愛も当然のことと描かる。それゆえ視線は別の点にフォーカスされる。 画面がとてもPOPだったり、ちょっとサイケだったり。ピンク+スミの二色で鮮やかな画面が楽しく、しかしそのピンクは、恋愛に振り回される主人公の閉塞感、息苦しさを演出するようでもある。 恋愛にはまり込んで大切な物を失うのはもったいない、ということがひしひしと伝わる。もっとバランスよく恋愛できないのか……とヤキモキし、渦中にいると気付かない恋愛の難しさに思いを馳せ……と一段上の次元に視点を誘う本作。恋愛と人生の見方がクリアになる、かも。 ※余談だが、本作の「恋愛クズ」はポリアモリーなのかというと、「当事者同士で合意をとった上で行う複数間の関係」がポリアモリーの定義で、それには当てはまらない。作中でも「ノンモノガミー」と紹介されている。

寿々木君のていねいな生活

「好き」への否定を否定してくれる優しい物語 #1巻応援

寿々木君のていねいな生活 ふじもとゆうき
兎来栄寿
兎来栄寿

『ただいまのうた』、『キラメキ☆銀河町商店街』、『シェアハウス金平糖北千住』などでお馴染みのふじもとゆうきさん最新作。 今回もまた、一際優しさが沁みる作品となっています。 長身で強面な主人公・寿々木薫(すずきかおる)は、見た目に反してお菓子作り、植物の世話、季節のてしごと、裁縫などが好きで得意な少年。 薫が高校入学の日に出逢った同じクラスの春名は、薫とは逆に小柄で美少女のようにかわいい容姿でありながら、柔道が得意で強い男子。仲良くなっていく対照的なふたりを中心に、薫の新しい希望に満ちた生活が始まっていきます。 薫は中学時代に自分の趣味嗜好を否定されハブられてしまっていた経験があり、自分のありのままを受け入れてくれることに新鮮な感動を得て行きます。そこが、何ともハートフルで読んでいてぽかぽかします。 私も思春期の頃にあまり他の男の子がやらないような花の水やりや料理や裁縫など家庭的なことをよくやっていましたし、好きなものを好きでいたら「キモい」と言われる悲しさもよく解ります。昔は今ほどオタクに寛容ではなかったですからね。 しかし、薫が同級生に外見に似合わない趣味嗜好をからかわれて家で凹んでいたときに ″「好きなこと」はこの先も薫を助けてくれる 絶対に大切にした方がいいよ″ と薫の母親が言葉をかけます。何と素敵な言葉でしょうか。好きを否定されて傷ついたことのある人には沁みるセリフでしょう。このお母さんだからこそ、優しい薫少年が生まれ育ったのだろうと思えます。 そして、好きを否定する人を否定してくれる新しい友も得ることができた薫。孫を見守る祖父母のような気持ちになります。 薫とは歳の離れた妹が通う保育園で働く桜子先生への恋や、その桜子先生も外見からでは解らない意外な面を持っているところ、またクラスメイトたちの恋愛動向など、これから面白く楽しめそうなポイントが他にもいくつもあります。 優しい世界の物語に触れたい方にお薦めの作品です。

天使禁猟区

懐かしいと思って読んだら時間泥棒されています

天使禁猟区 由貴香織里
さいろく
さいろく

どうやら続編が出たと。 そのためか、キャンペーンで1・2巻が無料公開中(2023年7月現在) むかーし読んだと思っていたもののどうやらソレは一部だったのか、どこを読んだかも憶えてないうろ覚えぶりだったので、エイッと勢いで購入して読み途中。 当時、今で言う"厨二病"な女子を大量生産していた一端となる本作。 年代の背景が見えてくるのはビジュアル系とかメディアとのリンクを知ってるか否かで結構変わっちゃうとは思いますが… マンガ自体は一回読み出すとずーっと同じテンションで物語が進み…と思いきや唐突に緩急が出てきたり、著者の試行錯誤が目に見えて楽しい。 序盤のマンガとして古臭くて恥ずかしい!くすぐったくて読めない! みたいな世代的な苦行パートを抜けるまでちょっと大変でした。 (まだ電子愛蔵版?の6巻ですが、この辺でようやく抜けてきたかもと感じる) ちなみに1冊で2〜3巻分の厚みがあります。400Pぐらい。 なんだか褒めてない気がしてきたんですが、絵はキレイだし(上手いとは言わないでおくけど)キャラもいっぱい出てきて好みが刺さるのがきっと見つけられると思います。 あと少女マンガのバトルとか呪い系好きだったらなお刺さるかなと。 ただ、物語の内容が非常に癖があり、愛憎乱れ撃ちな天使のシガラミが多方面を巻き込みまくってエライコッチャなお話。 各天使と天界設定など、盛りだくさんではありますが主軸は兄弟愛。 読んでると頭が90年代になるんだけど、この空気感はやっぱり90`sの良さだと思います。 ※このシーンは台詞がめちゃくちゃ多くてネタバレを含まないフキダシがほとんどない本作において珍しい見開き

ギブギブの悪魔

自己犠牲の強い主人公に強い共感 #1巻応援

ギブギブの悪魔 四ツ原フリコ エイタツ
兎来栄寿
兎来栄寿

刺さる人にはとても深々と刺さりそうです。 競争が嫌いで、自分が得をするために他人を蹴落としたくはない。 自分が得られないことで、他人が得られて幸せになるならそれもまた良い。 小中学生の頃から自己犠牲や譲ることが基軸にあり同級生から「もっと強欲になっていい」と言われて生きてきた私は、かなり深い共感を得た作品です。 常に自分より他人を優先してきて、作曲家崩れのヒモと暮らす女性・ひろ野が、ライトノベル作家・涼と出逢ったことでその考え方や生き方を徐々に変えていく物語です。 本作で、特に印象的だったのはバイト先の後輩である友枝とのエピソード。 ひろ野が慎み深さとは裏腹に「人のために何かをする」という相手の喜びを取り上げているのではないか、という部分は考えさせられました。 相手の好意への遠慮は、語弊を恐れずに言えば相手の好意を摘むこと。遠慮せずに受けた方が良い好意も、世の中にはままあることでしょう。大事なのは、それをしっかり見極められる目を持っておくことでしょうか。 自己評価がとことん低いところも共感してしまうのですが、相手が気に入ったり認めてくれていたりする自分という存在を自分で貶めるということは、相手の考え方をも貶めるということに繋がっています。 謙虚さは、時に自分に優しい者を傷付ける悪魔となってしまう。肝に銘じておきたいです。 程よく笑いも交えながら大事なことをしっかり描いている素敵な作品です。