ハンサムマストダイ

思春期をKILLした少年ジャンプ+の翼 #1巻応援

ハンサムマストダイ アストラ芦魔
兎来栄寿
兎来栄寿

『教えて!サバトさん』や「チーズ・イン・ゴッドファーザー〜仁義なき男たちの晩餐〜」の鬼才・アストラ芦魔さんが新たに世界に解き放つ混沌。その名は『ハンサムマストダイ』。 第1話を読んだ瞬間から「ハワ♡ハワワ♡」と、この異常なテンションの虜になりました。令和の今の時代ではなかなか見ないパワープレイや太古のネタが乱舞しています。無性にこういうマンガが読みたいときもあるんです。 推しアイドル斬々州涼(キリギリスリョウ)の完コピをしていたら、学園の王子様的存在になってしまった璃上悠里(りがみゆうり)。彼女がとある理由から璃上悠(りがみゆう)として性別を偽り、ヤングハンサムアカデミーの頂点を目指していく物語です。 第1話からジェットコースターのような凄まじい勢いとテンポで物語が進んでいき、次に起こることを予測するのが極めて難しい作品です。 続々と出てくるキャラクターたちは大体みんなどこかしら狂っており、それが良い。いろいろな意味で読んでいてツッコミが追いつきません。 「抜きうちキンタマチェック」 「艷漢・美男(アディオスアミーゴ)」 など常人のセンスでは出てこない語彙。 「ハンサム校則」の書かれた紙、わざわざ湾曲に合わせた行とそうじゃない行が混在しているのは何なのか。 「戦場の絆」からの「哀・戦士」とか、ガンダムネタが散見されるのはガンダムとハンサムで韻が踏めるからでしょうか。 電子レンジのメーカーの名前が「GODSHIVA」なのも強そうで好きです。 なお、第5話のサブタイトルが「犬・マスト・ダイ」ですが犬は死にませんので犬好きの方も安心して読んでください。ただ、犬が出てくるシーンである意味死にます。 狂気のオンパレードですが、読んだ後は不思議と何だか前向きな気持ちになれる無敵に素敵な作品です。 余談ですが、「レインボーアップルドラゴン白發中」のTシャツを作るための専用番外編ページまで特に改変なく単行本収録されていて笑いました。単行本だけで読んでいる人には何のこっちゃかもしれませんが、『ジャンプ+』では好きなページをTシャツ化できるシステムがあるので、ファンになってしまった方はぜひご利用ください。辰年には最高のアイテムです。

ダンボールバチェラー

人生を前向きにする恋愛リアリティ #1巻応援

ダンボールバチェラー 依光涼太 しょうじなつお
兎来栄寿
兎来栄寿

『バチェラー・ジャパン』や『バチェロッテ・ジャパン』が近年日本でも大人気ですが、元々は2002年に全米で放映開始された『The Bachelor』がオリジナルの番組です。「Bachelor」は独身男性、「bachelorette」は独身女性の意。たったひとりのハイスペックな独身の異性を巡って多くの人々が争奪戦を行う世界中で行うという内容で、その際の駆け引きや人間性の発現に見応えがあるコンテンツです。 本作はタイトル通りそんな『バチェラー』シリーズ的な要素を持った物語で、うだつの上がらない男だらけの職場に声優志望のかわいい女の子・南凛音がひとりやってくるところからスタートします。『バチェラー』シリーズと異なるのは、周りにいるのは主に30~40代フリーターのパッとしない男ばかりなこと。昔の言葉で言えば「掃き溜めに鶴」、近年で言えば「オタサーの姫」的な状況です。しかも凛音はただ容姿がかわいいだけではなく、「すべての姿勢が声に出る」「一生懸命じゃない人の声は誰にも届かない」という信条を持ち、キツい仕事にも全力で取り組むまっすぐな心根も応援したくなる女の子。 凛音の存在によって一変していく仕事場の男たちの姿は笑いと哀愁を誘いますが、これは世界中どこでもありふれた光景です。老人ホームですら、男女問わず気になる異性がいたら脳が活性化して行動が溌剌とする事例はいくらでも聞きます。古今東西変わらない、遺伝子にかけられた魔法の力です。誰かの英雄的行動を、『バチェラー』シリーズのように後からのインタビュー形式で他者に語らせるパートも非常に面白いです。 ただ、そんな本家『The Bachelor』的な恋愛部分に加えて、本作では「持たざる者の再起」という部分もフィーチャーされていきます。漫画家を志していながら仕事を始めてからはほとんど描かずにただ生きているだけの状態だった主人公・東を始め、夢破れ30~40代フリーターとなっている男たちもかつての夢や想いを思い出していく部分は熱いです。 今がどんな状況であろうと、何歳であろうと関係ない。前を向くエネルギーをもらえる作品です。

龍とカメレオン

激アツ漫画家マンガ

龍とカメレオン 石山諒
六文銭
六文銭

久しぶりに漫画家漫画でアツイ!と思えた作品でした。 デビュー前の奮闘をリアリティたっぷりに描いたとかではなく、ひょんなことで、メジャー作家とアシスタントの肉体が入れ替わってしまう、ちょっとファンタジーが入った作品。 これがまず面白い。 そのアシスタント・深山忍は「カメレオン」の異名のとおり「模倣」が得意。 だから、入れ替わったとしても、元々の作家と近しいものができてくる。 なのでメジャー作家と入れ替わったとしても、ソツなくこなしていく。 かたや、メジャー作家・花神臥龍は、無名の漫画家に成り「下がって」しまい、知名度も実績も失った中から這い上がっていくしかない状況。 ここで大抵の凡人なら意気消沈しそうですが、 自分のヒット作に挑戦できる、そして、それ以上のヒットをつくる と燃える姿が、純粋にアツイです。 また、編集者もカッコよい。 カメレオンが、入れ替わってから再デビューしようとしている花神臥龍を同じ雑誌に掲載させないよう、いわゆる「潰し」を働こうとしたとき、いつもの展開だと、大御所作家の言い分に編集がコビうる感じになりそうだが、 「作品を活かすことが編集の仕事」 と、休載や他誌への移籍をちらつかされようとも屈しないシーンがめっちゃカッコよかったです。 漫画を読んだ時の感動の脚色とか、わかりやすい敵対構図、底抜けに明るい主人公が、THE少年漫画という感じで、自分にとって斬新でした。 (漫画家漫画って、どちらかというと人生の酸いも甘いも表現できる青年漫画が多い印象なので)