あらすじ

強い思いと努力が実り、自身2度目となるマスターズへの出場が叶った坂本遼。年頭に目標に掲げたのは、「優勝」の二文字。そのためにアメリカでのトーナメント参戦とキャンプでの猛特訓を繰り返す。そして4月。苦しみを共に味わい、さらに絆が深まった田所稔をキャディに伴い、夢舞台・オーガスタナショナルを再訪する。初めてのマスターズと違い、稔が驚くほど落ち着いてスタートできた遼。しかし、オーガスタの魔女は、そんな2人の希望を打ち砕くかのように、試練を浴びせかけてくる……。
千里の道も 第三章(1) 参戦! マスターズ

いよいよ、坂本遼初めてのマスターズが始まった。練習場ではショットの調子が抜群にいい遼だったが、大舞台の観衆、そして歴戦のライバルたちを前にして極度の緊張からチグハグなプレーに。1番ティではプッシュアウト、さらに強引なリカバリーに出て傷を広げる。続く2番も調子は戻らず、2ホール連続ダブルボギーと、早くも予選落ちの危機に追い込まれてしまう。それでもなんとか凌いでハーフターンし、忍耐のプレーは魔女の待つアーメンコーナーへと続く……。

千里の道も 第三章(2) 苦闘の予選ラウンド

マスターズ初日、バックナインではイーグルを奪取したものの、スタート直後の乱調が最後までたたって、結果的に好スコアを残せなかった坂本遼。予選通過には2日目で少なくとも3アンダーが必要という、厳しい状況に追い込まれてしまう。だが、このままでは終われない。2日目は前日のミスを教訓に、出だし3ホールを1アンダーと最高の滑り出し。やっと勢いにのってきた遼は、このまま一気に予選通過ラインを突き抜けられるか?

千里の道も 第三章(3) オーガスタの魔女

マスターズに初出場した坂本遼は、初日、極度の緊張から序盤でミスを連発し、スコアを大きく崩してしまう。2日目になんとか持ち直し、予選カットラインまであと一歩に迫りつつも、11~13番のアーメンコーナーで林や池に打ち込み、トラブルが続く。しかし、最後まで諦めない必死なプレーで驚異的な粘りを見せパトロンを沸かせる。果たして遼は、家族や恩師・猪俣、そして日本で見守る先輩・鶴田の応援に応えて決勝に残ることができるのか……。

千里の道も 第三章(4) 父子を襲う闇

憧れのマスターズに初出場を果たした坂本遼は、失敗を恐れず、勇猛果敢にオーガスタに挑んだが、2日目の15番で3度池ポチャし、予選落ち。それでも荒木田の励ましもあり、最後まで懸命のがんばりを見せる。オーガスタのメンバーのあたたかい言葉に勇気づけられ「必ずもう一度」の気概を胸に心機一転、国内ツアーに復帰するが、連続予選落ちの不振にあえぐ。そんな折、妻の恭子が病院で遼の父親の姿を目にし、恭子の胸にかすかな不安の影が宿る。

千里の道も 第三章(5) 闘志の日本プロ

予選落ちに終わったマスターズ以後、3週連続の予選落ちで自暴自棄になりかけていた遼のもとへ突然、父が訪ねてきた。「1日1日を大切にしているか」意味深な言葉を残して去っていった父は、重い病を一人で背負い込んでいた。家族に心配をかけまいという父の強さが、沈んだ遼を奮起させ、心機一転挑戦した日本プロでは初日5ホールで2アンダーと好調なすべり出しを見せる。ところが、激しい雨で試合は一時中断になってしまう。

千里の道も 第三章(6) ライバル激突

全英オープン出場への架け橋となる日本プロゴルフ選手権。幸先良好だった第一ラウンドから一転し、遼は第2ラウンドで幾度もの窮地に立たされる。あっという間に順位は下降し、マスターズから続く、4週目となる予選落ちの不安すら脳裏をよぎる。対して、好調をキープするライバル・五郎は突如やる気を出した悟の助けを借り、単独首位に躍り出る。そして17番、バンカーでピンチに見舞われた遼は、イチかバチかの大技を思いつく。

千里の道も 第三章(7) 運命のスプーン

プロ日本一を決める日本プロ最終日、荒天に見舞われ、ながらも、我慢のゴルフで上位に食い込んだ坂本遼。同スコアでならぶS・K・ホ、そして再度となるヨーロッパへの挑戦に執念を燃やす山名らたちとの優勝争いはますます厳しいものとなった。優勝すれば全英オープンへの道が開ける遼。病魔に倒れた父が願う全英への切符を手にすることは果たしてできるのか? 親父、死んだらダメだ。全英に連れていくぞ!

千里の道も 第三章(8) ポットバンカー

スランプから立ち直り、並み居るライバルを破って、手に入れた全英の切符。いよいよ、期待と不安の全英オープンが幕開けする。舞台はロイヤル・トゥルーン。神が創り給うたリンクスの大自然が、さっそく坂本遼に牙をむき始める。ひざ下まであるラフ、ポットバンカー。さらには、あのタイガーでさえ6打を打ったショートホールのバンカー…。ビジェイ・シン、コリン・モンゴメリーら強敵も相手にして、果たして遼はどう戦っていくのか?

千里の道も 第三章(9) リンクスの試練

勇躍全英オープンに臨み、リンクスの罠に手こずりながらも、初日はイーブンパーで終えた坂本遼。2日目はリンクス特有の風「ロブ・ロイの怒り」が吹き始めたが、その対策はユーティリティクラブという武器でとってあった。しかし、スタート直前に、キャディ荒木田の失態でシャフトが曲がってしまうという最悪の事態が起こってしまう。急遽ワークショップカーに走ったが、修理が済むのは40分後。それまで遼はこの強風に耐えられるのか?

千里の道も 第三章(10) 激動、全英3日目

全英オープン初日はイーブンで上々の滑り出し。そして2日目、ユーティリティが曲ってしまうというアクシデントがありながらも3アンダー10位で終えた坂本遼を待ち受けていたのは、師・猪俣の姿であった。夜のバーで彼の全英の経験を聞くに至って、発奮したのはキャディの荒木田。その発奮が効いたのか、遼は世界一のレフティ、フィル・ミケルソンにも一歩も譲らない、互角以上の闘いを演じて順位を上げていく。

千里の道も 第三章(11) 迫る! タイガーの影

全英オープン3日目、世界一のレフティ、フィル・ミケルソンと互角の戦いを演じ、単独トップに立った坂本遼。そしてメジャー最終日最終組、首位の重圧を背負いながら、世界最強の男、タイガー・ウッズとの闘いに挑む。舞台は4日目にしてこれまでにない強風が吹き荒れるリンクス、ロイヤル・トゥルーン。タイガーだけではなく他の世界のトッププロもスコアを伸ばすなか、遼は優勝戦線に踏みとどまることができるのだろうか?

千里の道も 第三章(12) 虎(タイガー)が牙を剥いた!

全英オープン最終日、単独トップでスタートした坂本遼は、早くも2番でスコアを落とし、4位タイに後退してしまう。一方、タイガー・ウッズは4番でイーグルを奪い、アーニー・エルスと並んでトップタイに。いよいよ、その牙をむきはじめた世界一の男。それでも諦めずに巻き返しをはかる遼は、我慢のゴルフで優勝戦線に踏みとどまろうとする。果たして最後までタイガーに食らいついていくことができるのか?

千里の道も 第三章(13) 全英オープン、最終日、最終ホール

強風が吹き荒れるリンクス、ロイヤル・トゥルーンで行われる全英オープンはいよいよ大詰め。最終組の坂本遼は最終ホールを迎え、トップに1打差の2位につけた。すでにホールアウトしたフィル・ミケルソンと、同組の世界王者タイガー・ウッズを追いかける遼。強豪たちのプレーに圧倒されながらも、気持ちを切らさずに戦い続ける。日本人初のメジャータイトルは、もう少しで手に入るところにあるのだが……。

千里の道も 第三章(14) 全英オープン、日本人初優勝か!?

全英オープン最終日、最終ホール。坂本遼はタイガーに1打リードされるも第2打をバーディチャンスにつけた。対するタイガーの3打目は深いラフからのアプローチが残り、ピンチに立たされる。ちょっとでもミスをすれば、遼が最後の最後でタイガーに並ぶだけでなく、ボギーとなれば日本人初のメジャータイトル獲得となる可能性も。どうなる、この結末!

千里の道も 第三章(15) 激闘! 日本オープン

日本オープンの予選ラウンド。坂本遼と同組となったスーパー中学生・田所稔は、間近に接するプロの技に感心しながらもキャディを務める父の絶妙なアドバイスを受けてスーパープレーを連発。遼に食い下がってくる。そんな中、遼は2日目にドライバー2本を使って難コース・廣野GCを攻略する奇策に出るのだが……。病床に伏せる父への想いも抱きながら、ゴルファー日本一を目指す!

千里の道も 第三章(16) 日本オープン 魂の一打

廣野GCでの日本オープン、決勝ラウンドを上位で迎えた坂本遼は、危篤に陥った父を想い、鬼神のごとくプレーを続ける。しかし、その想いが思わぬミスを招き、スコアは伸び悩む。一方、秋田の中学生・田所稔も崩れかけた流れを取り戻し、食らい突き、伊沢利光、片山晋呉、谷口徹らスコアを伸ばした実力者たちも交えて首位争いは混戦に。様々な心模様が交錯する中迎えた最終日の朝、遼にひとつの知らせが届く……。

千里の道も 第三章(17) 熾烈な優勝争い

廣野GCでの日本オープンも、いよいよ最終日のバックナインを迎えた。遼はトップを走る片山晋呉を追って必死にプレーするが、難コースに手を焼き、なかなか追いつけない。さらに秋田の中学生・田所稔も、スーパープレーを連発して遼の背後に迫る。そんな中、稔の父親でキャディの耕作が、遼の父・良夫が危篤であることを知り、よからぬ策略を巡らせて……。果たして日本オープンを制するのは誰なのか?

千里の道も 第三章(18) 三つ巴の戦い

激闘が続いてきた日本オープンも、いよいよ大詰め。遼は最終日の17番、18番の2ホールを残すのみとなった。片山晋呉とトップに並ぶ坂本遼に、スーパー中学生・田所稔も追いつき、ついに三つ巴の優勝争いへと突入する。最後の一打まで結末がわからない展開。会場の廣野GCは大きく沸き上がる。危篤の父に、そして生まれたばかりの愛・ひろのに「必ず優勝する」と心で叫びながら、日本一の称号を目指して戦う遼。決着の時が迫る!

千里の道も 第三章(19) 頼れるキャディ

激闘だった日本オープンの2年後、賞金王獲得、そしてその先にあるマスターズ出場を目指して戦う坂本遼。しかし、いまひとつ勝ちきれずに最終戦・日本シリーズを迎えることに。と、その試合前夜にかつて日本オープンで競いあった田所稔が、キャディを志願して突然訪ねてきた。その理由を稔の父・耕作から聞いた遼だったが、きっぱり断る。そして試合が始まり、最終日を前にして優勝を狙える位置にいた遼に思わぬアクシデントが……。

千里の道も 第三章(20) 新たな決意

強い思いと努力が実り、自身2度目となるマスターズへの出場が叶った坂本遼。年頭に目標に掲げたのは、「優勝」の二文字。そのためにアメリカでのトーナメント参戦とキャンプでの猛特訓を繰り返す。そして4月。苦しみを共に味わい、さらに絆が深まった田所稔をキャディに伴い、夢舞台・オーガスタナショナルを再訪する。初めてのマスターズと違い、稔が驚くほど落ち着いてスタートできた遼。しかし、オーガスタの魔女は、そんな2人の希望を打ち砕くかのように、試練を浴びせかけてくる……。

千里の道も 第三章(21) 快進撃

2度目の挑戦となったマスターズ初日。何度も訪れたピンチを、果敢に攻める勇気とクレバーな判断力、そしてキャディ・田所稔の献身的なサポートで乗り切った坂本遼は、首位に一打差の4位タイという絶好の成績でラウンドを終えた。しかし、インに入って乱れ始めたドライバーショットに不安を抱えたまま2日目を迎えることになってしまう。2日目もピンチは続きながらもなんとかしのいでいたが、遼はドライバーショットの際のアドレスに違和感を覚えはじめる。稔も遼の異変を感じ取り、それが初日からの乱れの原因だったことに気づく……。

千里の道も 第三章(22) 正念場

2度めの挑戦となったマスターズ2日目、遼は初日からの好調をキープしてラウンドを進める。ピンチにもトッププロから学んだ"遊び心"で切り抜ける、そんな姿にキャディの稔は尊敬の念を抱く。そしてとうとう、トップに立って決勝ラウンドを迎えることに。プレスインタビューでも落ち着いた受け答えをしていて周囲は感心するが、遼自身は期待と不安が入り混じり、複雑な気持ちを抱えていた。そして3日目、最終組で遼と回るのは、世界屈指のテクニックの持ち主、P・ミケルソンだった。

千里の道も 第三章(23) 魔女の悪戯

マスターズ3日目、依然トップを守っている坂本遼だったが、その道のりはピンチの連続。なんとか必死のプレーで挑み続ける。悪い流れになりそうな場面も突然の大雨で中断するなど、運も遼に味方した。しかし、ミケルソンやタイガーらは、徐々に遼の背後に迫ってきた。そしてついに、タイガーが遼をとらえ、さらに一気にトップへ。ミケルソンも続き、またエルスやシンら実力者たちが続々と上位に上がってきた。

千里の道も 第三章(24) 大混戦

マスターズ3日目、遼は必死のプレーを見せるも、不運が重なる中で徐々に心が折れていく。そんな遼を尻目に、淡々とプレーしてきたミケルソンが一気に首位の座を奪い返し。遼は今度はミケルソンを追う展開に。それでも18番で再度逆転し、この日もトップでラウンドを終えた。とはいえ、ラウンドの間にむりやりスウィングを止めたことで左手首を痛め、最終日のラウンドには大きな不安を抱えることに……。

千里の道も 第三章(25) 最終日、ティオフ

妻・娘と一緒に、穏やかな最終日の朝を迎えた遼。会場に向かう途中、彼が会ったのは、ボールを偶然拾ったというドリンク売りのサラおばさん。「RYO」の3文字に自分の3人の子供の頭文字を重ねて、遼の勝利に熱い期待を込める。そんなサラに優勝ディナー招待の約束をする遼。最終組、ペアリングの相手はタイガー・ウッズ。たくさんの人の応援を受けて、遼は、1番ティグラウンドに立った。

千里の道も 第三章(26) 決断!!

マスターズ最終日。最終組で遼と回るタイガー・ウッズは完璧なプレーを崩さないが、遼もキャディの稔と素晴らしいコンビネーションを発揮し、タイガーに食らいついていく。そんな遼を直接激励しようと会場に足を運び、近づいたのは、かつての遼の師匠・猪俣プロだった。最近不運続きの猪俣は、自らを“貧乏神”だとこぼしていたが、遼の足を引っ張らないのだろうか。キャディを務める稔は気が気でならないのだった。

千里の道も 第三章(27) 真の王者

サンデーバックナインに突入したマスターズ。テレビ解説の中嶋常幸が「マスターズに勝つには3つの奇跡が必要」と語る中、遼はその"奇跡"を起こしてピンチを切り抜けていく。ついには隣ホールの大歓声が気にならないほど集中し、いわゆる“ゾーン”に入っていた。タイガー・ウッズとの抜きつ抜かれつの闘いに変化が訪れたのは11番。大きく右に曲げたティショットは松の根元に。パーの望みを捨てない遼は、林の中からのギャンブルショットを決意する。しかし、その瞬間、遼の手首に衝撃が走り、手にした4番アイアンは真っ二つになった!

千里の道も 第三章(28) 約束

マスターズ最終日、13番ホールでイーグルを奪ったタイガーが単独トップに立ち、坂本遼は一気に4位まで後退。残り5ホール、追いかけても追いかけてもタイガーと差は簡単には縮まらない。だが、諦めない遼が16番ホールに来たとき、オーガスタの魔女が気まぐれを起こす。痛めた手首に不安を抱える中、遼は共に戦うキャディ・稔を信頼すること、周りや遠く日本で自分を見守る人々への感謝を忘れないことを再確認し、諦めない気持ちを持ち続けるのだった。

千里の道も 第三章(29) 三つ目の奇跡

マスターズ最終日も、あと2ホールを残すのみ。遼はタイガーとは2打差あり、グリーンを狙ったショットもバンカーに入り万事休すに見えた。しかし、師匠・猪俣からかつて教わった「基本」を心に強く思って放ったバンカーショットで、奇跡のチップインに成功、土壇場でタイガーに追いつく。リーダーズボードを仰ぎみれば、タイガー、エルス、坂本遼の3人がトップタイで名を連ねていた。最終18番ホール、不思議なほど落ち着いて完璧なティショットとセカンドショットを放つも、ボールはバンカーの淵に。オーガスタの女神は最後まで遼に微笑むことはないのか……。

千里の道も 第三章(30) 激闘、プレーオフ

マスターズはついに遼とタイガー、そしてエルスの3人によるプレーオフに突入。悩んだ末にドライバーショットを選択した遼だったが、ボールを木に当ててしまい、トラブルに。セカンドも木の間を狙ったショットだったが、その木をかすってグリーンに届かせることができなかった。研修生時代から「トラブル王」と呼ばれるほど苦境を凌いできた遼。ゴルフ人生を賭ける覚悟で臨んだサードショットが奇跡が起きる!