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ああ、人生サイアクの日だ―――産婦人科の待合室で、ひとみは思った。カレシに言いつけられ、身ごもった赤ちゃんを堕胎しに来ていたのだ。施術後、心身ともにダメージを負ったひとみは、ふらつく足取りで帰路につき、そこでとんでもない場面に遭遇する。なんと、自分に子供を堕ろさせたカレシが別の女とイチャついていたのだ。「おまえとはもう終わりだ」みじめに捨てられたひとみは、すべてにゼツボウし、踏切に飛び込もうと足を踏み出した…と、何か柔らかいものを踏みつけた感触が…それは一匹の子猫だった。しかも足を怪我していて血まみれだ。自分の自殺のことなど吹っ飛び、ひとみは動物病院へと駆け込んだ。結局、片足は無くしたものの命はとりとめ、『たま』と名付けられたその子猫は、その日から家族の一員となった。父も、母も、そしてひとみも、たまを愛し、たまに癒され、笑いの絶えない幸せな日々が始まった。このかけがえのない素晴らしい時が、ずっと続くものだと思っていたのに―――…?