▼第1部/誕生編▼第2部/放浪編 ●登場人物/バッコス(数奇な運命をたどる少年)、ゼウス(偶然手に入れた多くの牛をもとに権力を得た男。バッコスを奴隷のように扱っていたが、やがて…)、マーゴ(バッコスと恋仲になる少女)、キロン(雨乞いをする祈祷師。バッコスにいたぶられることを至上の喜びとする倒錯者) ●あらすじ/1800年代、アフリカ東部。旱魃(かんばつ)で全滅したある村の中に、奇跡的に生き長らえた一人の嬰児がいた。その子は、突然のスコールによってできた激流に飲み込まれ、泥の中に埋まってしまうが、通りがかった牛飼いの男によって助けられる。心優しい男は、その子を「バッコス(芽生えるものという意味)」と名付けた。だが男は、落石に遭い、死んでしまう。そこへやって来たのが、他人の妻に手を出した罰として、ある村を追放されたゼウスという男だった。彼は偶然手にした多くの牛とバッコスを連れて、元いた村に帰る。そこから事態は思いがけない方向へ…。●本巻の特徴/ゼウスの財産に惹かれた村の者たちは、再び彼を村に迎え入れた。ゼウスがその財力を武器に権力者になっていく一方、バッコスは誰からも人として扱われず、家畜の糞尿の中だけを安息の地として、孤独に、非人間的に成長していった。ゼウスとの愛憎、自分に優しくしてくれた動物や、少女・マーゴ、祈祷師・キロンとの出会いなどを通して、バッコスは激動の生涯を送っていく…。アフリカの大地を舞台に、権力や性に対する人間の原始的な欲望や、自然界の摂理を描く。神話伝説シリーズの中でも最長の作品で、衝撃的なシーンも数多く登場する問題作(物語は2巻へと続く)。初出は「第1部/誕生編」1976年8月~1977年1月、「第2部/放浪編」1977年1月~4月。●その他のデータ/巻末に、四方田犬彦氏によるエッセイ「孤児のカリスマ」を収録。詳しい作品の解説がなされている。
▼第2部/放浪編▼第3部/復活編 ●登場人物/バッコス(数奇な運命をたどる少年)、ゼウス(権力を追い求める男)、キロン(雨乞いをする祈祷師。同性愛者で、バッコスを寵愛する)、ロン(オナ族の若者)、ヤーゴ(ハイエナ党のボス) ●本巻の特徴/神話伝説シリーズの中でも最長の作品である『バッコス』の、文庫版第2集。ゼウスに牛と交換されて以来、雨乞師・キロンと行動を共にしていたバッコス。しかしキロンは、降雨が少ないことに怒った村人たちに捕らえられ、遂には殺されてしまう。そのためバッコスは、またも一人放浪する身に。そして旅を続けるうち、バッコスは精霊の取りついた予言者という存在になっていく。一方ゼウスは、オナランドの諸部族を統合する支配者へとのしあがろうとしていた…。色々な部族間の抗争や、神への信仰、原始的な同性愛、権力への欲望などを軸に、1800年代のアフリカの弱肉強食の世界を描く。衝撃的なシーンも数多く登場する問題作。物語は完結集となる3巻へと続く。
▼第3部/復活編 ●登場人物/バッコス(数奇な運命をたどる少年。民衆たちから神とあがめられるようになる)、ゼウス(オナ族の首長。権力を追い求める男)、ロン(元オナ族の勇者。のちにバッコスの戦士となる)、ヤーゴ(ハイエナ党のボスである荒くれ者)、アタナ(ヘラ族を統治する巫女)、ポト(元トロ族の勇者) ●あらすじ/凄惨な闘いを繰り広げてきたオナ族とトロ族だが、新たな敵・ヘラ族を前にし、連合して立ち向かうことになった。闘いはさらに拡大するが、巫女・アタナのもと、圧倒的な力を持つヘラ族が勝利を収め、オナとトロをはじめ、いくつもの部族を従属させる。そのころバッコスは、毒キノコを用いた酒による幻覚作用を利用して予言者となり、数多くの信女たちと異様な世界を形成していた。やがてバッコスは、ヘラ族に支配され苦しむ人々の間で神格化されていく……。●本巻の特徴/神話伝説シリーズの中でも最長の作品である『バッコス』の文庫版完結集。旅を続けるうち、「精霊の取りついた予言者」という存在になっていったバッコスの栄枯盛衰、多くの部族間の抗争、神への信仰、原始的な性愛、権力への欲望などを軸に、1800年代のアフリカの未開社会を描く。衝撃的なシーンも数多く登場する問題作。初出は1978年。