あらすじ天空と地上の間にある魂の宿・天間荘で、父と再会し、天世で生きる事を決意したたまえ。だが、たまえが現世に戻れる事を知った街の住人から、現世の人々へのメッセージを託される。迷いながらも家族と海咲、そして天間荘と別れ、現世に戻ったたまえが見つけた希望とは…? 魂を癒す天上の温泉旅館物語、堂々完結!!
想像を絶するような災害に遭った時、創作者はどんな言葉を紡ぐことが出来るのか。東日本大震災の後、多くのクリエイターが様々な表現で向き合いましたが、この物語もそんな状況と対峙した作品の一つです。 この作品の前に描かれた「ヒトヒトリフタリ」の基底に感じられたのは怒りと前に進む意思でしたが、本作はより深い哀しみと、前を向く希望でした。 作者の代表作の一つであるスカイハイシリーズの中で、本作は恐らく最も広範な読者に受け入れられる作品なのではないかと思います。 自分の好きな劇作家の鴻上尚史さんの文章に、「現実の出来事に対して、演劇は無力であり、涙の根元の原因を無くすことは出来ない。ただ、その涙をそっと拭うハンカチのような作品になれば幸いです」といった主旨の言葉があり、この作品にもそんな想いが感じられました。 災害で辛い気持ちを抱えている人の現実に、何か出来ることがあると思うほど傲慢ではありません。ただ、自分のいる所で日々出来ることをする。他者に想いを馳せる想像力のきっかけにとなる作品の一つなんじゃないかと思っています。