あらすじ

北斎に負けずとも劣らない才能を持つ、八方破れの若い絵師・捨八。北斎を師と仰ぎつつ、女を求め、秘画ばかりを描く彼がのぞいた人生の生き地獄とは?江戸の人情切絵図。昭和の絵師、上村一夫の筆が冴えわたる!
狂人関係(1)

江戸の粋と風狂の中で生きた天才浮世絵師、葛飾北斎。酒を愛し、風流を愛し、新しい才能に嫉妬し…、画狂人・北斎の知られざる日常。彼が人生をかけて追い求めたテーマはなんだったのか。日本一の絵師としてその名を知らしめた人生を、昭和の絵師と謳われた上村一夫の筆がきり裂く!

狂人関係(2)

北斎に負けずとも劣らない才能を持つ、八方破れの若い絵師・捨八。北斎を師と仰ぎつつ、女を求め、秘画ばかりを描く彼がのぞいた人生の生き地獄とは?江戸の人情切絵図。昭和の絵師、上村一夫の筆が冴えわたる!

狂人関係(3)

遂にその波乱に満ちた生涯を閉じた北斎。八十八回もの転居を繰り返し、九十歳まで生きた北斎が追い求めたこの世の果てとは何か…?浮世絵師・北斎を描いた人生狂言、衝撃の完結!

狂人関係

諸行無常の響きあり

狂人関係 上村一夫
野愛
野愛

天才浮世絵師・葛飾北斎という圧倒的な存在を軸に、弟子・捨八や娘・お栄らの生活を描いた作品。 捨八と彼を取り巻く女達の姿が艶っぽく、移ろいゆく四季と相まって心を掻き乱されるのです。 捨八への想いを内に秘めたまま彼を見守るお栄と、派手好きで大胆なお七、正反対のような女2人がなんとも魅力的。 どちらも激しくて悲しくて、どうしようもないくらいに「女」として描かれています。 個人的に一番感嘆したのはお栄の手の描写です。冬は北斎や捨八の世話を焼く手があかぎれだらけになり、だんだん暖かくなるにつれてもとの白い手に戻っていく。綺麗になった頃にはまた厳しい冬がやってくる。 季節の移り変わりとともに、お栄という女の強さと儚さがこの描写に凝縮されているように思います。 手が綺麗になっても、男と女が関係を持っても、浮世絵が完成しても、終わりに向かっているだけである。失われていくだけである。 激情に満ちていながらも、根底に流れる諦念のようなものが美しく儚い作品でした。純文学に出会えました。 決して理想的ではないけれど捨八に惹かれてしまうのは女の性だし女の業ですね。狂おしいほど好きです、捨八。