あらすじ

大自然の驚異に端を発し、時の流れと共に人間の野望や権力の象徴へと変わっていった空想上の生物、“龍”。今年はそんな龍をテーマとするため帰国した宗像教授だったが、東亜大学はあいつぐ不祥事による騒動で揺れ、学長の館林も地位を危ぶまれていた。その館林から、歴史学者でもある彼の著書『飛鳥時代の新研究』を送りつけられた宗像は、奈良県・飛鳥へと向かった。そこで、飛鳥時代の三つの謎を解明するよう館林から挑戦状をたたき付けられ、宗像はそれに“龍”を持って答えると宣言し…!?
宗像教授伝奇考 1巻

森の湖に舞い降りた白鳥が羽衣を脱いで美しい娘に変身し、水浴びをするのを見た若い漁師が羽衣を隠してしまう――。そんな白鳥処女説話をはじめとした民俗学を教える、東亜大学の宗像教授。彼の退屈な講義に唯一、興味を示す生徒の伊香真奈は、両親が実家の裏の祠で見つけたという鉄剣を宗像に見せることに。宗像は、それが七星剣と呼ばれる剣だとすぐに見抜くが、この剣との出会いが不思議な事件の始まりだった…。

宗像教授伝奇考 2巻

昔々、人村の近くに犬の一族が住んでおり、その中の大きくて若い犬が人間の娘に恋をし、村から連れ去った。怒った人間たちは犬族を焼き討ちにして、犬たちは滅びてしまった――。という犬祖伝説が残る四国・犬上村。一年前、その犬上村にある弥生時代の遺跡から大量の犬の骨が出土したことと、犬祖伝説の繋がりに目を付けた宗像教授は、教え子である木場の案内で犬上村を訪れる。だがその木場が、顔見知りである村の若者たちに袋叩きにされ、その若者たちも事故に遭うという騒動が起き…!?

宗像教授伝奇考 3巻

神功皇后の時代、瀬戸内海を渡っていた皇后が乗る船に突然、海から巨大な牛が襲いかかるが、住吉明神が老翁の姿になって現れ、牛の角をつかみ投げ飛ばした。その地は“牛転び”と名付けられ、後に訛って“牛窓”になったという。そんな伝説が再来したかのように、広島県・榎隅村にやって来た宗像教授たちが乗るバスの前に牛が迫り、そして森の中に入った教授たちを再び牛たちが襲い…!?

宗像教授伝奇考 4巻

静岡県・小山町にある足柄峠に、雨の中調査に来た宗像教授たち。ここは800年ほど前に曽我の仇討ちが起きた場所であり、斬り死にした曽我十郎の恋人、大磯の遊女・虎が、十郎の武運を祈って腰かけた有名な虎御前石があった。そしてなんの因果か、調査中の宗像教授たちに富士ワイルドパークから脱走した若い雌虎が迫りくる…!!

宗像教授伝奇考 5巻

平安時代、自らを新皇と称し、京の朝廷に挑戦したと伝えられる闘将・平将門。将門は討ち死にし、首は京にさらされたが、数百年後に再び戦いの場に立ち上がるまでその名は滅びなかった…。そして宗像教授が、平将門の乱ののち、鎧が埋められたと伝えられる鎧神社を訪れた時、事件は起こる…!!

宗像教授伝奇考 6巻

昭和21年。青森県・白森村付近に、両親を亡くして一人暮らしの与次平という男がいた。ある吹雪の夜、家を訪ねて来た見知らぬ女性を休ませる与次平。だが、囲炉裏にくべる薪を取りに外に出た時、何者かに頭を殴られ気絶してしまった。そして気づいた時には女性は消えていて…。時は流れ、昭和39年。当時はまだ民俗学専攻の学生で、雪女伝説を集めていた若き宗像が与次平を訪ねた時、彼の隣には女性の姿があり…?

宗像教授伝奇考 7巻

大自然の驚異に端を発し、時の流れと共に人間の野望や権力の象徴へと変わっていった空想上の生物、“龍”。今年はそんな龍をテーマとするため帰国した宗像教授だったが、東亜大学はあいつぐ不祥事による騒動で揺れ、学長の館林も地位を危ぶまれていた。その館林から、歴史学者でもある彼の著書『飛鳥時代の新研究』を送りつけられた宗像は、奈良県・飛鳥へと向かった。そこで、飛鳥時代の三つの謎を解明するよう館林から挑戦状をたたき付けられ、宗像はそれに“龍”を持って答えると宣言し…!?

宗像教授伝奇考

律儀で骨太な演出

宗像教授伝奇考 星野之宣
影絵が趣味
影絵が趣味

何を隠そう、影絵が趣味さんは、この宗像教授シリーズが大好きで大好きで仕方ありません。「なんでそんなに好きなのか」という問には、とにかく面白いからとしか応えようがないんですが、同じく手塚賞でデビューしていらい盟友として、あるいは切磋琢磨するライバルとして星野之宣と並べられることの多い諸星大二郎、彼のマンガも大好きなんですが、同じ民族学を題材にするマンガ家同士といっても好きの種類がどうも違うような気がするんです。 諸星大二郎はすっとこどっこいといいますか、あの無茶な演出がバカバカしくて好きなんですけど、星野之宣はというと、ひたすら律儀で骨太な演出を淡々と積み重ねてゆく。たぶんそこが好きなんですね。宗像教授シリーズは短編連作としてかなりの巻数を重ねていますが、毎回〃〃もの凄く面白いものを読んだなぁと深い後読感が残るんですけども、何を読んだのかと言われるとアレ? となってしまう。というのは内容が伝綺とか伝説だからなんでしょうけど、読んでいるあいだは律儀で骨太な演出に引き込まれて興奮しながらページを捲ってしまうんですね。これがもの凄い。 諸星大二郎については語ろうと思えばいくらでも語ることができると思うんですが、星野之宣はというとこんなに面白いのに何故か口吃ってしまうようなところがある。これがいつも不思議なんです。ひょっとすると星野のマンガはある種の透明性に達しているのかもしれません。