ここは“もうひとつの”平安朝。男性のみが生きる、このパラレルワールドは、男同士が愛し合い、やがて男児を産む世界。桐壺帝の皇子・光源氏は、輝くばかりの美貌と才知を持ち、数多の男君たちから、熱く激しく愛されていた。なかでも、年上の高貴な人・六条御息所は、源氏を愛しすぎたゆえに、自分が多くの愛人のうちの一人であることを深く恥じ、嫉妬にもだえ狂うのであった。愛執の鬼と化した御息所の生霊は、夜な夜な源氏の肉体を責め苛み――。大胆な着想で描いた表題作のほか、男を惑わせる淫魔や、亡き恋人の面影に迷う大富豪など、気鋭の著者の魅力が詰まった作品集。