傷ついた心、かつて人であり現在は魂となって漂うもの……そんな人の目には見えざるものを見、彼らを癒す力をもつ少年・斎(いつき)。自らの意志からなのか、救いを求める魂が呼んだのか、斎は山を下り、下界(した)に暮らす人々と関わりを持つ。N市ニュータウンで、乳児の生き埋め死体が発見されたのは昭和62年の夏。それから3年、子供を殺され、以前とすっかり変わってしまった姉に妹の森居和子は心を痛めていた。“勉強もできてきれいでお母さんの自慢だったお姉ちゃん。何もかもあんなに幸福だったのに”。見知らぬ優しい笑顔の少年は、そんな和子に声をかける。「やさしい少女」「うそつきの子供」ほか、「シリーズ斎」6編を収録。