あらすじ

少女同士の関係性を描く“百合”というジャンルに萌えてしまう“百合男子”花寺啓介。そんな彼の前に、武闘派ヤンキー・風華伸一が立ちはだかる。“百合”そして“百合男子”の全てを否定する伸一とその取り巻き連中、啓介の加勢に現れた…と思ったら勝手に議論を繰り広げる百合男子連盟の面々、そして魚屋の出現によって語られる伸一の悲しい過去…。“百合”を愛するがゆえの苦しみと挫折を頼まれもせず描ききった、シリーズ第3弾!!
百合男子 1巻

一見イケメンな眼鏡男子校生・花寺啓介。普通に彼女とかいそうな奴なのだが、その正体は、少女同士の恋愛を主に描いた“百合”に萌えてしまう“百合男子”だったのだ…!!百合が好きだ。しかしそこに男である自分は存在しない…いや、してはならない!!そんな、多くの人にとっては心の底からどうでもよすぎる苦悩を描いた、一人の男子の残念な成長物語。※あとがきと対談は収録していません。

百合男子 2巻

少女同士の関係性を主に描いた“百合”に萌えてしまう“百合男子”花寺啓介。そんな彼と、百合男子の在り方をめぐって、啓介と真っ向から対立するチャラ男・籠目正二郎、啓介の過去を知っているらしい魚屋の出現…自分がなぜ百合に萌えてしまうのか、そしてそのきっかけはいつからだったか…そんな新たなかたちの残念系男子・啓介のルーツが明らかになる第2巻。…別に明らかになんかならなくても…という意見は至極もっともであるが、あしからずご了承頂きたい。

百合男子 3巻

少女同士の関係性を描く“百合”というジャンルに萌えてしまう“百合男子”花寺啓介。そんな彼の前に、武闘派ヤンキー・風華伸一が立ちはだかる。“百合”そして“百合男子”の全てを否定する伸一とその取り巻き連中、啓介の加勢に現れた…と思ったら勝手に議論を繰り広げる百合男子連盟の面々、そして魚屋の出現によって語られる伸一の悲しい過去…。“百合”を愛するがゆえの苦しみと挫折を頼まれもせず描ききった、シリーズ第3弾!!

百合男子 4巻

スキー合宿で、クラスのヒロイン・藤ヶ谷沙織と雪崩に巻き込まれてしまった花寺啓介。二人だけの閉ざされた空間で、その存在を意識してしまう。可愛い女子は、女子とくっつくべし…そんな信念を持つ“百合男子”は必死に沸き上がる欲望を抑えようとするが…!?そんな意味不明な苦悩をよそに、救出された沙織に訪れた、ある転機。そして沙織の変化に戸惑い、苛立を隠せない宮鳥茜。“百合”をめぐる男女の駆け引きが最高潮に達するシリーズ第4弾!!

百合男子 5巻

百合女子に目覚めた藤ヶ谷沙織と、百合をこじらせて行く花寺啓介。いっぽう、結成するも数秒で解散してしまった百合男子連盟の面々も、悩みを抱えていた。こらそこ、「どうせくだらない悩みでしょ?」とか言ってはいけない。彼らは至って真剣なのだ。現実と虚構を混同する輩に憤慨する鎌倉豊、萌え豚と百合豚のギャップに憤る桜ヶ丘健司、流行りと廃りに苦悩する武蔵野弘之。そして過去と現在に苛まれる籠目正二郎が、またしても啓介の前に立ちはだかる…!!著者渾身のヒューマンドラマ、遂に堂々の第一部完!!

百合男子

「我思う、ゆえに百合あり。だが そこに我、必要なし」

百合男子 倉田嘘
名無し

僕が暗い青春を過ごした90年代は、「ハーレムもの」の全盛期でした。「パッとしない男がなぜかたくさんの女の子にモテモテ」という、基本にして絶対のテーゼによって作られた作品の数々、現実でパッとしていないたくさんの僕達はみな夢中になったものでした。それが2000年代も半ばになると、男がほぼ全く登場しない作品が増えてきたではないですか。  作品を楽しむ切っ掛けとして、共感というものはとても重要な要素だと思っています。登場人物の誰かに自分を重ねあわせるから、作品世界に入っていける…。しかし、女の子たちがキャッキャウフフと仲良くしている作品には感情移入する先が必要ありません。それは、共感して物語をたのしむのではなく、女の子たちの日常を傍観者として楽しむという新しいスタイルなのです。作品世界を見渡す神の視点…というよりはむしろ、ピーピングする虫の視点なような気がしますが…。  『百合男子』は女の子たちがキャッキャウフフする世界を心から愛する高校生・花寺啓介が主人公。絵柄はとても可愛らしく(女の子が鼻筋が通っていて可愛い)、啓介もBL漫画のような容貌をしていますが、中身は男…いや漢!  啓介は、百合専門誌「百合姫」を愛読しているうちに、だいぶ重症になってしまい、現実の女子たちにも百合を重ねあわせてしまっています。現実の素敵な百合を見たいがために、同級生に対して半分ストーカーしたりしています。  そんな現実と妄想をごっちゃにする啓介にも、同志と呼べる百合男子が登場します。しかし、大きな違いよりも細かな差異のほうが気に障るのか、お互いの趣味嗜好を貶し合う結果に…。  そんな彼らを啓介は「一人は百合のために!みんなも百合のために!!」と一喝し、百合という大道を志す同志として結束させます。啓介は百合のリーダー、「百合ーダー」として百合の荒野を邁進していくのです。  百合という、可憐さと美しさで固められたジャンルを語る暑苦しい男たち…。何度も言いますが、絵柄はとても端正で可憐なのですが、そこで描かれている「漢」の暑苦しさは、少年漫画でも最近ちょっと見かけないレベル。語られる百合理論は押井守のように饒舌で、百合のために闘うアクションシーンは『ドラゴンボール』顔負け。この加速していくギャグシーンはかつて見たことの無いレベルです。  『百合男子』を読んで百合にハマれるかどうかは個人差があるかもしれませんが、1つのジャンルを夢中に語る、漢たちの熱さが確かに心に伝わってくるのです。  冒頭で啓介が叫ぶ「我思う、ゆえに百合あり。だが そこに我、必要なし」という悲しい決意が、人々との関わりでどのように変わっていくのか、最後まで読んで目撃して欲しいですね。