あらすじ人身事故に巻き込まれた木場修太郎。そこで出会った二人の少女。搬送先の病院で出会った銀幕女優。木場の運命的な出会いと強すぎる思いが、さらなる悲劇への幕を開ける。そして深秘の御筥様。柚木加菜子の失踪。楠本頼子の供述。手袋を嵌めた黒衣の男。パズルのピースのごとく散り散りになった情報が中禅寺秋彦の元に集約される。そこで導き出された答え。しかし現実は、答えのさらに先へ進みだしていた─―。
本格小説のコミカライズはたいていがっかりさせられます。なので本作を読むにあたっては少々慎重になりました。なにせ京極夏彦の傑作が原作。どうなることやらと思っていましたが…意外とうまくはまりました。事故で重傷を負い治療中の少女が忽然と消えた。事件の背後に絡みつく憑き物を落とすため、京極堂こと中禅寺秋彦が重い腰を上げる…と、端折ればこんな話ですが、本来は相当入り組んだストーリー。これを、ひと目見ればわかる漫画の利点を生かして、うまくまとめています。また描写で感心したのが、探偵・榎木津礼二郎の容姿。原作では超のつく美男子で、いまひとつイメージしにくかったのですが、なるほど少女漫画的なアプローチだとしっくりくるなぁと目からうろこでした。さらに思い切りの良さにびっくりしたのが、全5巻の3巻で犯人をばらしてしまうこと。で、残りの2巻はまるまる憑きもの落とし。読者の興味を冷ますことなく、ちゃんと見せ場へ導いてしかも枚数かけている。単純な推理小説じゃないこと、わかっておりますな。