最近GACKTさんにも絶賛されて話題の『ひとでなしのエチカ』や『ゴクシンカ』のピエール手塚さんが作画、『枕営業の眠さん』の藤見登吏央さんが原作を担当する作品です。 電子では1週間前に発売済みですが、本日紙の書籍が発売となりました。 内容はタイトル通りのもので、人間が人間である限りなくならないいじめに対してAIによりいじめを検知して対処する「いじめリアクター」が開発され、システマティックな統制を行なっていこうとする社会を描いた物語です。 いじめっ子に対しては、物理的な対処を行った上で脳に機械を埋め込み「優しい人間」になってもらうという処置までセットになっています。 『時計仕掛けのオレンジ』や『PSYCHO-PASS』などを髣髴とさせる設定で、ディストピア感もあります。いじめに苦しめられた経験のある人や現在進行形でいじめに苦しんでいる人の中にはこのシステムの実在を望む人も多いのではないでしょうか。 人類史を紐解いていくと、狩猟採集の時代から人間は誰かへの陰口を叩くことによって仲間と結束してきた歴史があるそうです。その時代は弱い者を排斥しないと、直接的に自らの命が脅かされる危険性があったことも影響しているのでしょう。 強い者も弱い者も皆で支え合って生きていく社会というシステムが高度化しても、いまだに弱い者や異なる者を排斥したり、それによって結託したりしようとするのは人類がアップデートすべきバグです。 現実的には人権の問題があるので、個人の脳に機械を生み込んで思考を統制するようなことは禁忌ですが、どうしても起こってしまういじめひとつひとつに対して対症療法を行うよりは根本的な原因を取り除きたいという心理は理解できます。 個人としては堪え難い辛苦を受けた先で、それを再び生み出さないためにどうすれば良いのかという問への回答を自分なりに出した牧人。それ自体は法的にさまざまな問題があるとしても、その大元の気持ちは否定できません。 現実にこれからも存在し続けるであろういじめという社会問題。倫理道徳の境界線上で、考えさせられる物語です。
兎来栄寿
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