あらすじ依頼された漆器の課題に悩む海尋。そんな折、海尋の仕事場にやってきた紬が海尋の仕事ぶりを見て…? 新しい紬の一面を知って慌てる海尋、紬の胸の奥にじんわり灯った気持ち。一方通行だった気持ちがしっかりと交差し始める第2巻。
金沢を舞台に伝統工芸である漆を使った工芸品を生み出す「漆芸家」を志す高校生の少年・海尋(みひろ)を描いた物語です。 漆の性質から漆器を実際に作る作業工程など、日本の古来から伝わる伝統工芸とその職人にまつわる話の部分も興味深く面白いのですが、そこに加えて本作はもうひとつ大きなボーイミーツガールとしての軸もあります。 海尋は旅館で働く年上の女性である紬に転んだ所を助けられ、また後日再会を果たしてほのかな想いを芽生えさせていきます。漆はものとものを繋ぎ合わせる接着剤ですが、海尋と紬も漆器を通して少しずつ繋がりを強めていきます。純朴なふたりが、穏やかでかわいいエピソードを重ねて絆を強めていく姿はたまりません。 髪を下ろした状態の黒髪ロングの紬の、品のある日本美人然とした佇まいは最高です。特に描き下ろしの金沢弁パートは、何気ないシーンなのに花山薫の渾身の一撃のような超威力。2023年黒髪ロング界新人部門最強候補です(シーンによってはセミロング判定を受けそうな時もありますが、最大値を取るので黒髪ロングヒロインとして扱います)。 人物の絵も可愛らしくて魅力的ですが、金沢の街並を描いた背景もまた情趣があります。1話目が始まり最初にページを捲ったときに現れる見開きから、とても引き込まれました。 伝統工芸×小さな恋の物語。学びもあり、面映さもありながらそっと見守っていたくなる作品です。