どこかで見たけどどこにもない。ファンタジー渦巻く日本の風景。 新鋭・千葉ミドリが贈る、ありふれた日常にひそむ不可思議な短編連載。
職ナシ夢ナシ生きる気力ナシの18歳・戌亦しのぎは、面接帰りのある日、悪霊と思わしき美女・イェルクナハト=フィンステルニスと遭遇する。彼女の要求は二つに一つ。自分と結婚するか、ここで死ぬかーー。人類の敵・神の代理人(ハイランダー)との戦いを制し、嫁と共に救世主となれ!!最強のクーデレ美女に溺愛され過ぎるバトルファンタジー、開幕!
ストリート・チルドレンのハヤトは、妹ひまりの治療費のために日々奔走している。ある日、ハヤトが不思議な少年に会った後、ひまりが巨大な異形・妖(あやかし)に攫われる! 大事な妹を、自分が生きる街を守るため、ハヤトの戦いが始まる──! 現代の忍たちが駆け抜ける、スタイリッシュ・アクション・ファンタジー。
英雄になる! そんな想いを胸に冒険者になったシルミルク。スキルをもたない彼女は仲間集めに苦労していたが、そんな時、回復のエキスパートである大賢者ユーリスのダンジョン調査に同行することになる。しかし噂では、ユーリスに同行した冒険者は皆一様に心をやられ、冒険者としての道を志半ばに絶ってしまうそうな…。そう、ユーリスにはモンスターにやられる女冒険者の姿に興奮するという猟奇的な趣向があったのである。決して死ぬことのない残酷な冒険が幕を開ける!!
なんだこれ…。すごい。好きすぎる。 奇妙で現実的で不思議で具体的な夢を見ているような…読んでるうちに引き込まれて実際に手触りを感じられるような漫画だった。 トーチwebで始まった新連載『緑の予感たち』がちょっとスゴイです。 https://to-ti.in/product/midori-no-yokan 短編連載なので、1つ目「カッパの理髪店」を読んだ現時点での感想になる。 どこかで見覚えがありそうな、誰しも馴染みのありそうな風景。 奇妙でありながらファンタジーと呼ぶには地に足がついていて、日常の延長線上に実在するんじゃないかという感覚がしっかりとある。 唐突、だけど必然。 物語は不思議な冒頭から、リアルなバイト事情、そして煮え切らない男女の恋模様へと、主題と場面がコロコロと変わっていく。 そこがミソかもしれない。 どこが話の軸になるんだろう、誰が主役なんだろうと読んでいくと気付けば登場人物たちのギリギリ読み取れそうな関係性のリアリティに絡めとられ、読者の視点は次に何が起こるのか出来事を素直に追うだけの目になっていく。言葉の端々と表情から読みとろうと夢中になる。 それは、現実の男女の関係性に対して巡らせる思考のはずだった。だったのだが、その真っ只中へ唐突に放り込まれた非現実にかき乱されるも、不思議とこいつが妙にしっくりくる。 それは全くの無関係な非現実ではなく、まさにこの心のありようこそが核になった非現実だったからだ。でたらめだけど、そこにはきっちりと心情の筋が通っている。故に納得できてしまう。 ここに持っていくまでの腕力がすごい。 この話の転がし方、派手じゃないのに予想が付かずに最後まで分からない展開の面白さは、映画『スリービルボード』を彷彿させる。 絵も最高に良かった。 コマの中の線の情報量、線の柔らかさ、微妙な表情の変化、光と影の付け方、全てがこの話にしっくりくる。 短編連載でおそらく不定期掲載なので、単行本になるのは2024年だと思うけど、早くも単行本を買いたい。 読んだあとに、これは持っておきたい…棚に並べたい…手に持ちたい…という所有欲が溢れてくる。