満ち足りた人生も、途方もなく惨めで悲しい人生もーーすべての死のそばに、私たちがいる。人間の「死の記憶」を集めることを生業とする《記憶の一族(メネム)》の少女ララ。死神達からも一目置かれる存在である姉に憧れ日々仕事に励むが、姉はある日突然、すべての「死の記憶」を失い生命活動を停止し固まってしまう。姉を救うために駆け出したララの前に現れたのははぐれ者の死神と雪の中の少女で――!?記憶を盗んだ者の正体と、姉が抱えていた秘密とは?そして『人間と関わってはいけない』掟の真意とは?彼らに出会うことができるのは死を間近に控えた人間だけーー死神達が紡ぐメメント・モリ ファンタジー第2巻
手触りが良いファンタジーだなぁ、と一読して感じました。絵柄的には綺麗で今感もあるのですが、その一方で作品全体がまとう雰囲気はどこかノスタルジックなものも漂います。 顕著なのは、1ページ目。 ″だが塵に帰す子らよ―― かぐわしい花々 ビロードのような大地は かの木陰へと導くための 見知らぬ先導だったのだ″ というナレーションと象徴的な一枚絵から始まるこの物語が始まっていくところは、古き良きファンタジー少女マンガの香を感じます。「ビロードのよう」という比喩表現が個人的には何とも落ち着きます。 作品の設定については、敢えてここでは説明しません。とりあえず1話の試し読みを読んでいただければと思います。詳しくは語りませんが、設定の妙は本作の美点です。 また、キャラクターはもちろんですが背景や小物が密に描き込まれているところも大きな長所として挙げられます。微細に彩られた世界は目で見ているだけでも楽しめますし、読んでいるひととき違う場所へ誘われる感覚に気持ち良く酔い痴れることができます。こういった、描き込みが細やかなファンタジーが私は大好物です。 現実とは違う理が流れる世界が提示され、想像力が刺激される。視覚的にも物語的にもファンタジーの愉しみに溢れた作品です。 1巻最後のような強い引きもあって、続きもどうなっていくのか気になります。