奥羽山脈がそびえる東北地方の片隅に、その村はある。人口はわずかに四十戸たらず、店は雑貨屋が一軒っきりで、鉄道もなく医者もいない。おまけに冬になれば雪に閉ざされてしまう辺ぴな土地……。しかし、ここは「おらが村」。代々営んできた暮らしがあり、深みのある人生がある。都会人が忘れてしまった「故郷」の鼓動、そして生活……矢口高雄先生が描くライフワーク的作品であり極上のヒューマン・ドラマシリーズ、ここに堂々の開幕! 村会議員・高山政太郎とその家族を中心にすえ、大小さまざまな事件がつづられる。クマ撃ちの武勇伝や、キツネ憑き騒動、ハタハタ談義で解決するもめ事、等々。それぞれの局面で政太郎はおうように構え、ときにはジッと沈黙して「おらが村」の来し方行く末に思いをはせるのだった。全4巻。
東北地方の豪雪地帯、時代と切り離されたかのような寒村。スローライフといえば聞こえはいいが、実際は冬季には雪と格闘し、春夏秋は農作業を懸命にこなさなければならない家がほとんどだ。だがしかし、だからこそ人間の表情には深みがあり、四季の彩りを楽しむこともできるのだった。村会議員・高山政太郎とその家族が暮らす「おらが村」を舞台に、重厚長大な筆致で描かれる群像劇シリーズ・第2巻。この村は若年者人口の低下や災害対策の遅れ、固定的な価値観など小さなコミュニティならば何処にでもある普遍的な問題を抱えていた。容易には解決しないそれらをも視野に入れつつ、物語はゆっくりと進行する。老いたる者、若き者、それぞれの想いを交錯させつつ……。2巻の時間軸は冬の終わりから夏が始まるまで。空を舞う燕やカタクリの群生、忙しい田植えのあとのモチつきなど、詩情あふれる情景描写、そして圧倒的な画力による大自然の描写も見所のひとつ。
東北地方のとある場所に存在する小さな集落「おらが村」。冬は雪によって全てが覆われ、それ以外のシーズンはもっぱら農作物の世話に追われる。医療も交通も充実というには程遠い。それでも、人々はこの土地を離れず代々の田畑を守り暮らし続けていく。時代の波が届かないわけではなく、この暮らしが極楽だと思っているわけでもない。どうしてもここで生きてゆく気にさせる何かがあるようなのだ。おそらく、ここが「おらが村」だから……。矢口高雄先生が綴るライフワーク的作品であり極上の農村ヒューマン・ドラマ、第3弾。それなりに安定した農家・高山家の主、政太郎は村会議員を務める温厚な男。周囲の村人よりも少し遠く広く物事を見渡せる彼にとっても、長男の未婚はやはり頭を悩ませる問題だった。おりしも季節は秋。山の樹々はあまねく葉を色づかせ、豊かな果実をみのらせる。息子の縁談も自然に熟してくれたなら……。おっとり型の息子・政信に結婚相手は見つかるのか!?
東北地方の天蓋を支える奥羽山脈、そのふもとのとある盆地に、緑に囲まれた小さな村がある。わずか四十戸ほどのその集落は人口減少から発生する諸問題に悩み、折に触れて時代とのギャップを意識せざるを得ない。だが、なんと言われようとここは「おらが村」。この場所を離れては生きてゆけない、そう感じさせる何かがあるのだ……。温厚篤実な高山一家を物語の中心に据え、美しい四季の風物を交えて描き込まれてきた「おらが村」シリーズ、第4幕。厳しい冬の間に起きた悲しい事故や、苦しみ抜いたあげくの別れ。それら諸々の出来事をのみこんだ雪は、今ようやく溶け出そうとしていた。高山家長男・政信にも、とうとう添い遂げるべき相手が現われた。唯一の問題は母親・信江が乗り気ではないこと。春のぬくもりは、彼女の気持ちをも緩めることができるのだろうか。農村を舞台にした情感溢れる人間ドラマ、矢口高雄先生の壮大なライフワーク作品! オープニングシリーズがついに大団円!