あらすじ

小春が抱える不安を知って、安易に彼女の安楽死に反対する事をやめた常。姉の一周忌で球技大会を休んだ日の夜、小春に連れ出された常は楽しそうな彼女を見て自分の「やりたい事」を考え始める。そして二人は駆け落ちと称し、スカイツリーへと歩き出し――!?
逢沢小春は死に急ぐ 1巻

高校で隣の席になった柏原 常と逢沢小春。浮かない顔の常に対し小春は何事も楽しそうだが、彼女は「高校を卒業したら安楽死する」と決めていた。彼氏が欲しい! テストで一番取りたい! 安楽死を望みながらも小春は前向きだが、常には彼女を放っておけない事情があり――!?

逢沢小春は死に急ぐ 2巻

小春が抱える不安を知って、安易に彼女の安楽死に反対する事をやめた常。姉の一周忌で球技大会を休んだ日の夜、小春に連れ出された常は楽しそうな彼女を見て自分の「やりたい事」を考え始める。そして二人は駆け落ちと称し、スカイツリーへと歩き出し――!?

逢沢小春は死に急ぐ 3巻

なぜ小春は安楽死を計画するに至ったのか。常はその原因が両親にあると感じ、勉強会と称して小春の家を訪れる。直接話をして両親の真意を探ろうとした常はそこで逢沢家の歪な価値観を目の当たりにし、ある決意を固めて――!?

逢沢小春は死に急ぐ 4巻

全力で青春し死に急ぐ高校生活も半分が過ぎ、小春は、常やクラスメイト達の人生に関わる中で、自らの死が自分一人の問題でない事を知る…。安楽死への「心の準備」が揺らぎつつある小春を、常は、彼女を産んだ母親の故郷である雪国へと連れていくが――!?

逢沢小春は死に急ぐ

メメントモリな青春 #1巻応援

逢沢小春は死に急ぐ 胡原おみ
兎来栄寿
兎来栄寿

胡原おみさん、以前に描かれていた『赤毛のアンの食卓から』や『みけねこ鍼灸院』などが隠れた良作で大好きだったので、新作も楽しみにしておりました。 すると、期待以上に素晴らしい作品が登場して嬉しい限りです。 『逢沢小春は死に急ぐ』は、日本でも安楽死が法的に認められるようになった世界の物語です。有名人を多数含んだ集団自殺が契機となり、本人の意志を尊重して自由意志により安楽死を選択することが可能となっています。 世界的にも類を見ない少子高齢化社会であり、労働人口は減る一方であるのに対して医療費は青天井である日本。今後ますます医療技術が発達して平均寿命が伸びていけば同時に尊厳死の問題も広がり、安楽死に関する議論もより活発になっていくことでしょう。本作は、そんな社会を先取りした思考実験的な作品でもあります。 端的に言えば、本作のヒロインである逢沢小春はタイトル通り「高校を卒業したら安楽死する」と決めています。その理由は、聞けば理解できてしまうものであるため、主人公の柏原常(とき)も軽々に止めることは難しい。しかしながら、常もとある理由により小春の安楽死を止められるものなら止めたいと強く思っています。 そんな彼らにより、限られた時の中での青春が繰り広げられていきます。高校生の頃なんて時間は無限にあるように感じられるのが普通で、無為に時を過ごすのも青春の一部という感すらありますが、死を意識している状態だからこそ日々を無駄にしないように大切にやりたいことに全力で生きる彼らは輝いて見えます(純粋に胡原おみさんの絵がかわいいのもあります)。 この作品が良いなぁと思うのは、周囲の脇役たち。ヤンキーやカースト高め女子など、普通の作品であれば悪役や嫌なキャラとして配置されそうなところが、徹底的に良いヤツらとして描かれる優しい世界であるのが、逆に今の時代のリアルも感じさせます。色々な人たちと徐々に繋がって、助け合って。そういう学生生活の描写が本当に気持ち良いんですね。 普通、良いヤツだけだと盛り上がりに欠けそうなものですが、本作は主軸となるテーマとそれに寄り添った全力の青春の気持ち良さだけで十分素晴らしいものになっています。 果たして、小春の死を止めることはできるのか。彼らの時が終わらないことを祈りながら、続きを楽しみに待ちます。