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■見習い奉公に上がった家老屋敷で、嫡男・静馬に見初められ、禁断の恋に落ちた下級武士の娘・環。人目を憚る逢瀬を重ねた挙げ句、身籠もってしまう。静馬には高貴の家から娶った妻がいた。十月十日が経ったとき、環の産所に踏み込んできた静馬の妻は、生まれた子だけを奪っていった……それから三年。不義の子を産み、捨てられた“わけあり娘”と蔑まされながら、兄とのつましい日々を送っていた環の前に、藩主側近として辣腕を振うようになった静馬がやってくる。ようやく迎えに来てくれたのかと思ったのも束の間、静馬は「今から殿様の側室となり、一年以内に必ずお子をあげよ。さもなくば兄の家禄を召し上げる」と冷たく命じる。やむなく藩主・政嗣の閨にあがった環だったが、他家から養子に入った政嗣は、恩ある前藩主の血を引く幼子を自分の跡継ぎに据えるつもりでいた。「だから実子はつくらない。そなたに胤をやるわけにいかぬ」と、色香で迫る環を、頑なに拒むのだった。実子と養子を巡る御家騒動、“誘う側室”と“逃げる若殿”の恋の駆け引き、そして、いつしか心から惹かれ合うようになった、環と政嗣の“落としどころ”とは……?(ヴァニラ文庫うふ)