韓国の百合マンガと聞いて読み始めた本作。恐ろしさと怒りに最初から最後まで、体を震わせながら読んだ。 人の「悪」が次々と炙り出される。恐ろしいのは、一見いい人が「悪」に反転してゆく描写。頼りたい人、愛されたい人から無辜の市民まで自己中心的で醜い心、それを悪びれもしない様が次々と露呈し、主人公の絶望感が共有される。 そうして描かれる「悪」とは、家父長制の中で生じる歪み。 男の自尊心を守るために、そしてイエのために自己を消し、イエに守られるために反目さえする女たち。社会で押しつけられる息苦しい女性像に、逃げ場なく従う女たちの無力感にやるせなさを覚える。 そんな社会を生きる、老大臣の若すぎる後妻「奥様」は物乞いの少女と出会う。 物乞いの少女に豊かさと女性らしさを伝える「奥様」は、社会常識から少し自由な物乞いに闘う気力と自由を貰い、二人は次第にイエの中で共闘を始める……と書くと綺麗だが、実は二人の心中はかなり複雑。でもその複雑さが、相手への純粋さへと次第に変わる様子は、間違いなく百合。 閉塞感溢れる社会で、二人に明るい未来が待っている気がしない。それでも、先を見たくてページを縦スクロールする手が止まらない。そして怒涛の展開の末、訪れる感慨に……そして番外編の意外すぎる楽しさに、ようやく安堵のため息をつくことができた。
あうしぃ@カワイイマンガ
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かのじょのしんせい
彼女の沈清
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