あらすじ襲いかかってきた“人斬り以蔵”こと土佐の岡田以蔵を破り、その右腕を斬り捨てた土方。だが沖田らに捕縛を命じた矢先、坂本龍馬が銃声を轟かせながら以蔵を助けにやってきた。「鉄砲があれば、武士が特別な時代は終わる」と言う龍馬に土方は不快感を覚えるが、ひとまずその場は以蔵を渡して引き上げる。以蔵に自分の暗殺を持ちかけた黒幕が新見であると確信した土方は、ついに新見の粛清を決意する。
男子は一生に一度は幕末に憧れる、なんてよく聞きます。私もこの時代は大好きで、このコーナーでも坂本竜馬、小栗上野介、桂小五郎を主人公にした漫画を紹介してきました。今回はそんな幕末英雄譚の中でも最も好きな新選組、鬼の副長・土方歳三を取り上げてみようと思います。新選組といっても実はこの作品、多くのページを割いているのはそれ以前の歳三の多摩時代。このパートで描かれるのは彼の武士道を追求するゆるぎない信念がどのように培われたか、近藤勇や竜馬との出会いで何を身に刻んだかということです。そこがタイトルの「月明星稀」―月明らかに星稀なり―にかかってくる。このテーマが見えてくるくだりはこれぞ武士道、という感じでシビれます。そして本来ならこの後が「さよなら新選組」という副題にもかかるはずですが、残念ながら伊東甲子太郎が登場したところで雑誌連載は打ち切り。新見錦や斎藤一の独創的な設定や、芹沢鴨暗殺までのくだりなど目を見張るものがあっただけに箱館まで見たかったというのが正直な本音ですが、男の魅力的な生きざまは存分に堪能できると思います。