ひゃくえむ。 - 魚豊 / 【第1話】 | マガジンポケットマガジンポケット生まれつき、足が速かった。他には何も持っていなかったが、速く走ることだけでよかった。それは「学校での居場所」を生み、「友達をつなぐ橋」となった。それだけが、少年の全てだった。そんな彼が出会ったのは、辛いことを忘れるために走っている少年。彼は決して速くはないが、熱を持っていた。その熱に当てられて、次第に興奮を知っていく。しかし、それは「異常」の始まりだった。「100m」は全てを狂わせるのだ――。
あらすじ俺はトガシ。生まれつき足が速かった。だから、100m走は全国1位だった。「友達」も「居場所」も、“それ”で手に入れた。しかし小6の秋、初めて敗北の恐怖を知った。そして同時に味わった。本気の高揚と昂奮を──。100mの全力疾走。時間にすれば十数秒。だがそこには、人生全てを懸けるだけの“熱”があった。続きを読む