あらすじ

プルトニウム電池を含む「第6モジュール」が、アマゾン川流域に落下したことを受け、ホワイトハウスで会議が招集された。だが、この事故がアマゾンの生態系に深刻な影響をもたらす大惨事であるにも拘わらず、高官たちは環境問題を安全保障問題にすり替えて、超大国の体面を守る論議に終始する。
MOONLIGHT MILE 1巻

冬期エベレストに、たったふたりで挑む男たちがいた。ひとりは日本の会社員・吾郎。もうひとりはロストマンと呼ばれるアメリカ人。世界の最高峰を次々と制してきたふたりは、エベレストの頂上で虚空に浮かぶ人工衛星を見る。人類最後の未踏峰・宇宙が、彼らの次なる目標となったのだ…!!

MOONLIGHT MILE 2巻

国際宇宙ステーション(ISS)のクルーとして再会した吾郎とロストマン。各国の代表とともにネクサス計画のための実験を続けるが、ある日、ヒューストンから緊急連絡が入る。ISSに資材を運ぶ有人カプセルロケットが、大気圏外でコントロールを失ったのだ…!!

MOONLIGHT MILE 3巻

吾郎の登山家時代の相棒・ロストマンは、現在NASAのシャトルパイロットとして、軍の機密を知る立場にいた。そんな彼を、パパラッチたちは執拗に追いかけまわす。ある日、物々しい警護で出かけて行くロストマンの姿にスクープの予感を抱いたパパラッチたちは、その後をつけるが…!?

MOONLIGHT MILE 4巻

「ネクサス計画」の準備は最終段階に入り、オリオン号の打ち上げが4日後にせまった。テキサス州のジョンソン宇宙センターでは、大衆を前に第1期月遠征隊のメンバーが改めて紹介され、歓声につつまれる。出発を前に、彼らの心をよぎるものは…!?

MOONLIGHT MILE 5巻

中国が打ち上げたキラー衛星を撃墜するため、ロストマン率いる宇宙戦闘機部隊は作戦を開始した。そして敵の衛星を発見、直ちにレーザーを発射する。しかし、ロストマンたちが破壊したのはダミーで、逆に、レーザー発射地点を知られ、反撃されてしまい…!?

MOONLIGHT MILE 6巻

吾郎たち月遠征隊が月に降り立って3か月。スパイダーリフトでコンテナを回収する作業も順調に進んでいた。だが、月面で作業に励む吾郎にNASDAから緊急の通信が入り、故郷の母が交通事故で亡くなったことを告げられる…。

MOONLIGHT MILE 7巻

ISSに巨大デブリ群が衝突!ボブたち数人のクルーが、機能停止状態となった司令室に閉じこめられてしまう。この緊急事態に、司令室に閉じこめられたクルー救出の任務に挑む耕介。吾郎たちのサポートの下、人間の動きを完璧に再現するというロボットを操縦して作業に当たるが…!?

MOONLIGHT MILE 8巻

プルトニウム電池を含む「第6モジュール」が、アマゾン川流域に落下したことを受け、ホワイトハウスで会議が招集された。だが、この事故がアマゾンの生態系に深刻な影響をもたらす大惨事であるにも拘わらず、高官たちは環境問題を安全保障問題にすり替えて、超大国の体面を守る論議に終始する。

MOONLIGHT MILE 9巻

菜園でパメラの死体を見つけた吾郎とマギーが、現場の管理者・カトーに拘束された。カトーは吾郎たちに対しては菜園もろとも時限装置で吹き飛ばすと告げ、一方で基地内の放送をジャックし、パメラの死を発表した上で、自らの無実が証明されるまで籠城を行うと宣言した。

MOONLIGHT MILE 10巻

月面テロ事件から2年。国の枠を越えた独立機関、国際宇宙機構「ISA」が発足した。しかし実情は、ISAの主要ポストが米軍出身者で占められていた。そんな中、澤村がISA発足後初の月派遣員に選ばれるが、この隊員も総勢70名中3割がアメリカ宇宙軍の軍人という状況で…!?

MOONLIGHT MILE(11)

吾郎の子供を宿した理代子。世界初の「月の子供」誕生を不利益と見た米軍は、堕胎を強行、理代子を戦闘犬に襲わせる。理代子を救出するため、耕介、クリス、マギーが協力する。追手は振り切れるのか…。緊急脱出ロケットに乗り込んだ理代子に対し、マギーらを人質に取ったファトマは…!?

MOONLIGHT MILE(12)

月での「親子対面」を国内外の政治に利用したい米大統領の使者として、吾郎をアメリカに従わせるべく京都へやってきたロストマン。久し振りの再会にも関わらず、一触即発の緊迫した空気が漂う中、ふたりの脳裏には、かつて共に世界の頂上を目指した時代の記憶が駆けめぐっていた。

MOONLIGHT MILE(13)

打ち上げ計画を阻止すべく、今まさにH-IIAが搭載されたトラックを砲撃しようとするテロリスト。拳銃を構えて牽制する橘軍曹との間に、一触即発の空気が漂ったその瞬間、ランドウォーカーに乗った澤村が背後からテロリストに飛びかかる!そして、澤村に気を取られた敵の隙をつき…!?

MOONLIGHT MILE(14)

アメリカ宇宙軍の支配下にあった月面都市・ルネクサスから宇宙軍が撤退、新たにISA管轄のスペースガードが組織された。長官に任命されたスティーブとTVリポーターのマギーは、「月の子供」出産を間近に控え、一躍時の人となった理代子の身を案じ、彼女のもとを訪れる。

MOONLIGHT MILE(15)

月の半分を手中に収めるべく、強行的な月面着陸を試みるツェン・リー率いる中国宇宙船団。自分の政敵であるロストマンへの対抗意識から、独断で中国船団の迎撃を決定したゲンズブール補佐官。宇宙空間を舞台に、中国対アメリカの緊張が最高潮に!もはや戦闘は避けられないのか…!?

MOONLIGHT MILE(16)

権力闘争で対立するゲンズブールの手によって、カウントダウンされるロストマン暗殺計画。そしてついに、ロストマンの乗った高速艇が事故に見せかけた裏工作によって爆破された!!ライバルの死を目前に勝利の笑みを浮かべるゲンズブールだったが、その時、彼の背後に銃を持った一団が現れ…!?

MOONLIGHT MILE(17)

核保有国・パキスタンの反政府過激派が、宇宙旅客船をハイジャックした。彼らの目的は、同じく核を保有する隣国・インドの衛星「チャンドラヤーン」を破壊すること。地上での核戦争を誘発しかねない前代未聞の事態に、アメリカ宇宙軍も出動するが、テロリストの計画は周到で…!?

MOONLIGHT MILE(18)

人類初のムーンチャイルドとして生まれた宿命から、世界中の注目を浴びつつ、同時に「観察」を続けられる歩。ルナネクサス内の医療局で定期的な検診を受け続ける、実験動物と変わらない自らの境遇には慣れたものの、先日骨を折った同じムーンチャイルド・レニーの経過が気になり…!?

MOONLIGHT MILE(19)

抑圧された月の地下労働者たちを解放せんとする組織「月移民者解放戦線」の人質となった歩は、彼らに連れられて月面地下の居住区・ファベーラ(スラムの意)へと向かう。徹底管理された月の表世界・ルナネクサスとは違い、空気も薄く、汚れた裏世界の存在を目にした歩は…!?

MOONLIGHT MILE(20)

清潔な最新都市である「ルナネクサス」の地下に、労働者の住む「ファベーラ(貧民窟)」があり、かつてロストマンと共に月面の権力を握っていた女・ファトマは、今、その貧民窟に暮らしている。ロストマンに一体何が起きたのか…!?

MOONLIGHT MILE(21)

2025年のインド・パキスタン核大戦による世界の大混乱は、当然、月世界の政治にも波及した。ロストマンと共に権力の座にいたファトマは粛清され、ひとり放射能渦巻く地上へと放り出されたのだ。月面の支配をもくろむ“何者か”と戦う覚悟を決めたファトマは、かつて血で血を洗う覇権争いをしていた中国と手を組む。月は夢の象徴なんかじゃない。欲望と野望うごめく、地上の映し鏡なのだ。いや、それ以上だ。だからこそ面白い。

MOONLIGHT MILE(22)

2025年の核戦争以後、歪み続ける月世界。世界中の祝福を受け月で誕生したムーンチャイルド・猿渡歩も、地下労働者解放組織にら致されたことをきっかけに、月の「裏」にある過酷な現実を知る。一方、自分の戯れがきっかけで歩を行方不明にしてしまったお坊ちゃん・キンバリーJr.と、歩と同じムーンチャイルドのレニー、ふたりの少年にも、それぞれの運命に向き合わざるを得ないある事件が迫っていた…。月の「表」ルナネクサスで敢行される衝撃のエクソダス…!!果たして誰が、そしてどこへ向かうというのか!?現実を見極めろ。“彼等”はある決断をする。それは…!?

MOONLIGHT MILE(23)

地下労働者解放組織の一員として闘う猿渡歩と同じように、月の「裏」側の現実を知ったふたりの少年・キンバリーJr.とレニーは、マギーの力を借りて中国月世界市への亡命を図る。だがそんな彼らに、吾郎の後任である「正義の」SGポリス長官・ベビーフェイスの手が…!!友情?恋?そして……。この感情を本当にそう呼ぶのかは知らない。でも僕らはもう、何も知らない子供じゃない。明日なき月面を逃げる緊迫の第23集!!

MOONLIGHT MILE

想像しうる未来を描いた宇宙開拓史

MOONLIGHT MILE 太田垣康男
名無し

周期的にどこか遠くへ行きたくなります。ギアナ高地かゴビ砂漠かヒマラヤか…。想像は膨らみますが、実際にはせいぜい飯能で僕の冒険心は終了です。ただ、もし僕が頑健な体と知性(と美しさと財力)があれば、宇宙に行ってみたいと思い、たまに空を見上げるることがあります。  この「MOONLIGHT MILE」も二人の男がヒマラヤの頂上から月を見上げるシーンより、物語がはじまります。世界中の極地に立った二人は、さらなる頂を目指すために宇宙を目指すのです。  二人の内の一人、猿渡五郎は日本の建築会社に就職しありとあらゆる重機の資格を取得し、宇宙空間での建設業務に従事するビルディング・スペシャリストを目指し、もう一人の“ロストマン”と呼ばれるウッドブリッジはアメリカ空軍に入隊し、そこからパイロットとして宇宙を目指します。  紆余曲折を経て、二人がISS(国際宇宙ステーション)で再会するのは7年後。しかしこれはまだ物語の序盤、1巻の出来事でしかありません。そこから、宇宙開発の表舞台を吾郎、軍の陰謀うずまく裏舞台をロストマンが主人公となって、宇宙開拓史が描かれて行きます。  「MOONLIGHT MILE」の凄いところは、この宇宙開拓史が事細かに、もしかしたら本当にこうなるかもしれないというリアリティをもって描かれているところです。ビルディング・スペシャリストとなった吾郎は、次世代エネルギー開発“ネクサス計画”のため、様々な任務をこなします。月面上の作業用機械の開発を手伝い、月往還船の建造を行い、そして第一次月遠征隊の一人として月面のエネルギー開発の最前線基地を建設します。  一方、ロストマンは宇宙における軍事的な覇権を推し進めるアメリカ軍のパイロットとなり、表舞台で宇宙開発が世界の注目を集める中、中国とアメリカの高高度戦闘が行われます。「表舞台か… 軍事利用こそ宇宙開発の真の姿だぜ 悪夢に染まらなきゃ、一番遠い場所には立てねえさ…」そう言いながら確実に任務をこなし続けるウッドブリッジは、やがてアメリカ宇宙軍の要人となります。  ふたたび吾郎とロストマンの道が交差するのは、表舞台と裏舞台がひっくり返るタイミングになるのですが、そこまでいたる夢の様に壮大な開発現場の個人の思いと、人類社会を左右する各国の思惑がからみ、壮大な物語になっているのです。  現在の世界状況の延長線上にある、想像しうる未来を描いた第一部が終わり、想像を越えたディストピアを描く第二部は現在も進行中。「MOONLIGHT MILE」が描ききるのはどのような人類の未来なのか、興味は尽きません。