理想を追うのか現実と折り合うのか、お金をとるか美学をとるか、そういった悩みは誰もが経験するところ。しかし実のところそれらは二律背反ではなく、両方叶う場合もあるし両方叶わない場合もある。運、というのもあるんだけど何か一つの要因で説明できないから「残酷」なんですね。 特定の立場を殊更に持ち上げる訳でもなく、ただ漫画に対してその人なりの向き合い方をした、という姿が愛おしい。 真実や正義が人の数だけあること、その真摯さと滑稽さを教えてくれる『ラ・クンパルシータ』(3巻第4話)が好き。
「東京ヒゴロ」を思い出しながら読みました。松本大洋先生って永島慎二先生お好きなんでしょうか?それとも漫画家はみんな「漫画家残酷物語」が好きなのかな。 どの話にも漫画家が登場するオムニバスになっていますが、最近の漫画家マンガとはちょっと違います。唐沢なおき先生のパロディ「漫画家超残酷物語 青春増補版」に収録されていた評論家の呉智英さんの作品解説を読んでてピンと来た言葉がありました。それは『マンガの業』という言葉です。描ける描けないじゃなくて、生きると漫画が一緒になってるみたいな話なんですよね。 「東京ヒゴロ」を読んだら「漫画家残酷物語」を読んでみて欲しいです。出来れば「漫画家超残酷物語 青春増補版」も読んでもらうと超楽しいと思います。
1960年代の永島慎二の短編集。貧しさの中、ひたむきに生きる少年少女の姿に心を打たれます。「少女マリ」で結婚記念日をお祝いするためにワクワクしながらお父さんを待つ様子は、純粋で家族への愛が溢れていて、一番好きなシーンですね。家族がいて、みんな健康で、毎日食べるものがあって、学校で勉強することができて…それらがまだ当たり前でなかった時代を描いた作品です。
某有名漫画討論番組で取り上げられたということで読んでみました。 昔の漫画だけどびっくりするぐらい面白いです。 内容は漫画家をテーマにしたオムニバスの作品となっています。 当時と価値観が違うところもあれば、今と全く通じるところもあり、歴史的資料と言ってもいいのではないでしょうか。
どの話も切なく、懐かしいに気持ちにさせられるストーリーでした。読み終わった後には不思議な余韻があり、少し前向きになれた気がします。青春期の苦悩の中に、ドキッとさせられるフレーズがいくつも出てきます。
今は亡き五大週刊少年誌の一角「週刊少年キング」の看板タイトルだったのが『柔道一直線』。 この時期のスポ根ものとしては破格の人気を誇っており、実写ドラマも人気がありました。 佐々木剛氏が仮面ライダー2号一文字隼人に抜擢されたのはもとよりスタッフの多くがそのまま移行したことは有名な話です。 また本作の人気の凄さを現すものの1つとして漫画に登場した技が使われることもありました。 1974年の「仮面ライダーX」では柔道一直線の劇中で主人公“一条直也”が必殺技として用いている“地獄車”をライダーキックの代わりの新必殺技として使用しています。 原作・梶原先生の作品らしく絆、情についての熱い描写は必見。 60年後半~70年代の日本らしい熱量を作品から醸し出す作品なのは間違いありません。
「柔道一直線」の作画で知られる永島 眞一先生の短編漫画集です。ここに納められている7編は1962年から1963年にかけて描かれた作品なので、画風やあらすじが少し古臭いのは否めません。でも、今読んでもそこにえも言われぬ新鮮さが感じられるのは、作品の一つ一つがいつまでも変わることのない、人間の本質を見抜いた鋭い感性から描かれているからでしょう。 各作品は物語が淡々と語られるように進行するのみで、読者をハラハラさせる展開も、ドキドキさせるクライマックスも、納得させるオチもありません。ただただ、解釈の方法は読者の手にゆだねられているかのようです。どの作品も楽しく、明るいテーマを題材としているものではありません。犯罪者の複雑な心境や苦労人の話など、どちらかと言えば暗いテーマを取り上げているのですが、読んだ後には何とも言えない温かさや清涼感を覚えます。漫画というよりは、優れた短編小説集なような味わい深い作品集です。
本当はみんなに構ってほしいし、愛されたいのに上手く表現出来ず結局一人ぼっち。 人付き合いが不器用な私にとって主人公の姿はほぼ「あるある」でニヤニヤしながら読んでいました。 独りぼっちは嫌なもんだなと常日頃から思っていた私の考えを肯定してもらっているような感じで、読めば読むほど不思議と勇気を貰える…私にとって「独りくん」とはそんな存在です。
日本の昔ばなしを、永島慎二が独自のアレンジを加えて漫画にした「シリーズ民話」の一冊。 素朴で哀しい雰囲気が、アニメの「まんが日本昔ばなし」の世界を彷彿とさせます。しかしこの作品が描かれたのは1960年代後半(雑誌はガロ)とのこと。アニメが始まる70年代以前から既に描かれていたと知って驚きました。 あのアニメの世界観はいろいろな絵本やら漫画のイメージを掬い取って構成されていると思うのですが、もしかしたら永島慎二作品も少なからず影響を与えていたのかもしれない…と思えてしまうほど何か通じるものを感じました。 (当時の時代の流れを知らないので全く的はずれなものかもしれませんが…) まぁとにかく、永島慎二の作風と民話との相性の良さは異常でした。 <収録作> うらしま/さるかに昔/ふるやのもり/つる/はなたれこぞう/かさこじぞう/げんごろうのたいこ/おむすびコロリン/野原のはなし/ゆきおんな/草笛童子/風っ子 ところどころ、現代で使われるタイトルと異なるものもありますが、ストーリー自体にそこまで大きな変更はないです。ちょうど小学校低学年くらいの子供でも読める内容ですね。ただ、「うらしま」は飛び抜けて救いが無く、後味の悪い話になってるので注意が必要です。あと「草笛童子」などは少年心にグッとくる話で良いですね。初めて読んだお話でしたが、漫画で読むことであらためて昔話の良さを再確認しました。
理想を追うのか現実と折り合うのか、お金をとるか美学をとるか、そういった悩みは誰もが経験するところ。しかし実のところそれらは二律背反ではなく、両方叶う場合もあるし両方叶わない場合もある。運、というのもあるんだけど何か一つの要因で説明できないから「残酷」なんですね。 特定の立場を殊更に持ち上げる訳でもなく、ただ漫画に対してその人なりの向き合い方をした、という姿が愛おしい。 真実や正義が人の数だけあること、その真摯さと滑稽さを教えてくれる『ラ・クンパルシータ』(3巻第4話)が好き。