『きみが心に棲みついた』の天堂きりんさんによる最新作です。 28歳のときに、とある事件がきっかけで心を病み身も窶してしまった主人公のウズメ。それから12年間、実家で両親に煙たがられ日々衝突しながらも引きこもり生活を送り続け気付けば40歳。働きもせず、結婚もせず、両親は70歳になりいつ何があるかもわからず未来の見えない日々を生きる彼女が、ひとつの出逢いをきっかけに社会へと復帰していく物語です。 引きこもりというと自由な時間が多くて何でも好きにできて楽しそうに思えるかもしれませんが、当人は常に見えない不安や焦燥感、罪悪感や自己嫌悪など恒常的にストレスに晒され誰からも必要とされずweb上以外では人と出逢ったり話したりする機会もない状態は、むしろ普通に働いて定期的に給料をもらって社会に関わっている方が圧倒的に幸せであったりもします。 また、作中でも8050問題が言及されるように問題は当人にとどまらず家族や周囲の人にも及びます。本作では、その渦中にある母親視点からの想いやエピソードも濃密に描かれることによって、この問題を立体化させて把捉しています。 2022年の内閣府のデータでは日本には広義の引きこもりは75万人ほどいるということで、パーセンテージから見れば僅かではあっても絶対数で考えれば熊本市や新潟市、あるいは浜松市の人口に近いほどの人数がいると考えると社外的に看過はできない課題でしょう。 「容姿の冴えない40歳の引きこもり女性が主人公」というのはいわゆる売れ線作品の特徴からは少し離れており、企画的にも難しさを抱えるテーマだと思います。しかし、だからこそ意義や価値がある作品であり、今の『FEEL YOUNG』が面白い理由の一翼を確実に担っている作品と言えます。 ウズメは引きこもり生活によって鬱屈として多少偏屈になってはいても、根本的に人に対する優しさを持っている人物なので読んでいて清々しさがあります。そんな彼女が、別の現代社会の闇に晒されて歪められてしまった人々との関わり合いを通して、元役者という才覚を活かしながら少しずつ再起していく様は良いものです。物語の始まりや根底のテーマは重いですが、作品全体として見ると暗くなりすぎず前向きに進んでいく雰囲気があります。 巻末のあとがきでは連載が継続するか・3巻か出るかどうかは不透明とのことですが、是非とも続いて欲しい作品です。躓かずに生きていける人の少ない世界に必要な物語です。
“きみが心に棲みついた”を読んで、絵も好きだし、話も内容がしっかりしていて好きだなと思ったので、他の作品も読みたいと思い、こちらを読みました。 とある家族の話で設定もですが、母、娘姉妹、母の姉などなど登場人物それぞれにフォーカスが当たり話が進んでいくので、各々の気持ちが細かく描かれてるし、分かりやすいし、途中じんわりした所もあったなぁ。。 天堂きりんさんの作品、もっと読みたくなりました!
あっという間に、読み終わりました。 終始ゾクゾク、ドキドキ、ハラハラ色んな感情が混ざり合った。 今日子はじめ、星名さん、吉崎さん、それぞれに感情移入してしまい、自分が思う以上に考えさせられる内容だったなと。 皆が皆苦しくて辛いなぁ。。星名さんの生い立ちも、心締め付けられる。 そして最後、今日子が結婚したのは、あの人で合ってるんだよな、きっと。
ドラマは見ていないのだけど、絵も可愛いし読んでみたら、大分闇が深いぞ。 キョドコを脅す(?)星名さんも、何があって怖い人になってしまったのか。。 キョドコも、惑わされないでー!ってなる。 上下で終わらないだろうと思ってたら、やはり”S”に続くみたいなので、読んでみよう。
どの短編もドロドロしてます。不倫、二股、好きな人が友達の彼氏だった、女子小学生と教育実習生のキス…。フレーズだけ羅列するとかなり重いですが、恋愛はキラキラとドロドロの感情が二つでワンセットだと思いますので、感情移入しちゃうポイントもあります。幸せになれないって分かってるけどダメな方にいっちゃう時もありますよね。読む人によって共感レベルは全然違うと思います。 個人的に「フロウライト」がすごいと思いました。読者モデルをするくらい可愛いのに、自分の容姿は上の中だと言い切るような女の子が主人公。自意識過剰でプライドも高いし、何でも計算でやってるような子なんだけど、実はコンプレックスがある。勝手に好意を持たれてると思ってた男の子と中の下とバカにしてた友達が付き合っていて、SNSで自分に対してマウント取ってることが発覚し、復讐として隠れていじめをするようになる…という話。とくに卒業文集のくだりが好きでした。
寂しさを紛らわせるために、身体の関係を持つって、永遠に満たされないはず。 でも、それが分かっていても人って一時の感情で動いてしまうもの。 感情的になって行った一度の過ちが、その人の人生までも変えていくという考えまでは、到底及ばない。 寂しくなった時、自分の心と相手の心にまっすぐに向き合えるとどんなに幸せだろう。 難しいけど・・・。
主人公が話数ごとに移っていく形の恋愛話。 一見何もなさそうな人物にも裏があるし行動にも理由がある。 ただ綺麗なだけの恋愛じゃないのがいいです。 なんだか痛い話なはずなのに安心というか、ホッとする気持ちになるんですよね…なんでだろ
恋の傷を癒やすような話かと思ったら違った この作者特有の傷をえぐるような展開が中々良いですね。 みんなそれぞれ卑怯で弱くて傷つけたり傷ついたりしながら恋愛してるんだなぁと。トゥルーエンドな感じ好きです。
『きみが心に棲みついたS』天堂きりんさんの最新作です。 優しい夫は自慢である一方で、誰にでも優しすぎるところに日頃から言い知れないもやもやを抱えていたある日、そのもやもやが一気に爆発する事件が起きる妻の話から始まります。 基本的に1話完結ですが、それぞれの話が上手くリンクしており、前話である人物が取った言動の理由が連鎖的に後から明かされていくという構成に面白さがあります。 その上で、現実にありそうな痛みを催す関係性や感情が巧みに描かれていき、人によって嫌悪感や苦々しさ、狂おしさ、あるいは深い共感などさまざまな感情を喚起させられることでしょう。 ピュアで綺麗な恋より、ドロドロでリアルな愛憎を読みたいという方にお薦めです。
夫婦の仲が、誰に対しても優しく接してしまう夫の浮気疑惑によって崩れていく話など、短編集のようです。 これ、ありそう!わかる!というシチュエーションがたくさんあるので、共感しながら読めます。絵もきれいで私は好きです!
『きみが心に棲みついた』の天堂きりんさんによる最新作です。 28歳のときに、とある事件がきっかけで心を病み身も窶してしまった主人公のウズメ。それから12年間、実家で両親に煙たがられ日々衝突しながらも引きこもり生活を送り続け気付けば40歳。働きもせず、結婚もせず、両親は70歳になりいつ何があるかもわからず未来の見えない日々を生きる彼女が、ひとつの出逢いをきっかけに社会へと復帰していく物語です。 引きこもりというと自由な時間が多くて何でも好きにできて楽しそうに思えるかもしれませんが、当人は常に見えない不安や焦燥感、罪悪感や自己嫌悪など恒常的にストレスに晒され誰からも必要とされずweb上以外では人と出逢ったり話したりする機会もない状態は、むしろ普通に働いて定期的に給料をもらって社会に関わっている方が圧倒的に幸せであったりもします。 また、作中でも8050問題が言及されるように問題は当人にとどまらず家族や周囲の人にも及びます。本作では、その渦中にある母親視点からの想いやエピソードも濃密に描かれることによって、この問題を立体化させて把捉しています。 2022年の内閣府のデータでは日本には広義の引きこもりは75万人ほどいるということで、パーセンテージから見れば僅かではあっても絶対数で考えれば熊本市や新潟市、あるいは浜松市の人口に近いほどの人数がいると考えると社外的に看過はできない課題でしょう。 「容姿の冴えない40歳の引きこもり女性が主人公」というのはいわゆる売れ線作品の特徴からは少し離れており、企画的にも難しさを抱えるテーマだと思います。しかし、だからこそ意義や価値がある作品であり、今の『FEEL YOUNG』が面白い理由の一翼を確実に担っている作品と言えます。 ウズメは引きこもり生活によって鬱屈として多少偏屈になってはいても、根本的に人に対する優しさを持っている人物なので読んでいて清々しさがあります。そんな彼女が、別の現代社会の闇に晒されて歪められてしまった人々との関わり合いを通して、元役者という才覚を活かしながら少しずつ再起していく様は良いものです。物語の始まりや根底のテーマは重いですが、作品全体として見ると暗くなりすぎず前向きに進んでいく雰囲気があります。 巻末のあとがきでは連載が継続するか・3巻か出るかどうかは不透明とのことですが、是非とも続いて欲しい作品です。躓かずに生きていける人の少ない世界に必要な物語です。