「くらもちふさこで一番好きなのはおばけたんご!」という声をよく聞くのでずっと読んでみたかった作品です。親同士が親友で生まれた頃から許嫁として育てられた憧子と端午。しかし7歳の時に交通事故で端午が死んでしまいます。それから憧子は困ったことがあると心の中で「端午さま端午さまお願いします」と願掛けするようになったのです。なのでお化けが出てくる話ではありません。ちなみに表紙に描かれているイケメンも端午ではありません。 読んでみて個人的には「百年の恋も覚めてしまう」の方がストーリーは好きでしたが、余白の使い方がいつも巧みなくらもち作品の中でも際立って素晴らしかったです。くらもち作品の余白は情感や情景になるな〜と改めて思いました。ラストで端午がもし生きてたとしたらの世界に転換することで憧子の迷いが払拭されて、救いのある終わり方になるのもよかったです。
少女漫画の王道テーマ「運命の出会い」の話ですが、ちょっとオカルトっぽい要素もあったりするので甘々になり過ぎずさっぱりと読めます。 主人公の宇太郎は最近ヘンなものが視えるようになって困っていました。実体のない影のようなものですが、いわゆる霊現象のように体調不良なども起こっていました。しかしある女の子のイメージ浮かぶとそれらは消えるのです。それが運命の相手である月子ですが、実際に2人が出会えるのは物語の終盤。そこに至るまでは宇太郎に片想いする紀(きの)ちゃんが中心になって話が進みます。しかし紀ちゃんは月子の友達でもあるのです…。 王道ロマンチックな運命の出会いにもドキドキするし、実の両親が亡くなっている月子がようやく幸せになれるという展開に感動もしますが、大人になると紀ちゃんの気持ちも無視できなくなりますね。他の脇役キャラもいい味を出してました。 実は初めて読んだくらもちふさこ作品がこの「月のパルス」です。当時は子供すぎて内容をよく理解できてなかったのですが、今改めて読んでみるとすごく好みな話だったので分からないなりに選んでたんだな〜と自分の成長を感じました。
弥生美術館で開催しているくらもちふさこ展とてもよかったです。展示の最後で6年ぶりの新作「空を歩く」の紹介もあったのですが、展示内容が充実しすぎて素通りしてしまった方も多いのでは?電子なら今からでも買えますよー! 脚本家を目指している女の子が電車に飛び乗ります。クラスメイトから「品行方正のあなたらしくて型通りなのよね」と言われたシナリオをコンクールに出す為に、目的の駅に到着する17分の間に直さなければなりません。しかし同じ車両の乗客の挙動や関係性が気になってる内に余計な妄想が広がっていきます。そこに例のクラスメイトが「私の良き人」と紹介した男性に似ている人が現れて… くらもち先生の過去作でもインターネットの仮想空間や花染町の住人など、限られた空間の中での自由自在な関係性が見られましたが、今回はたった数分の電車の中。しかし主人公の脳内では物語が飛躍していくし、主人公に元気がないことを見抜いていた男の子がいるなど、短編という枠を感じさせない広がりがありました。 展覧会でのお言葉で「自分にとって漫画を描くことはツール探しの旅だった」とあったのが印象的でした。くらもち先生ならでは世界が生まれたきっかけを少しだけでも知ることが出来たような気がします。
「花に染む」は「駅から5分」の派生作品らしいけど、両方読む必要あるのかな?どっちから読んだらいいのかな?と疑問に思っていたのですが、どっちも読んで自己解決しました。絶対に両方読んだ方がいい!そして先に「駅から5分」を読むべし!どっちも単体で楽しめる作品ではあるんだけど「駅から5分」のエピソードが「花に染む」のワンシーンとして繋がってくるので、先に読んでいた方がすんなり読める。そしてその組み込み方がまさに匠の技なので感動します。 「花に染む」がどういう物語なのか説明するのがとても難しいのですが、↓のインタビューでくらもちふさこ先生が「最後まで読んでくださって、『なんだか分からないけどよかった』とおっしゃっていただけることが、私としては一番うれしいことです」と語られていたので、無理に考察したり言葉にしなくてもいいのかもしれません。個人的にはラストで陽大が晴れ晴れとした表情をしているように感じられたのが印象に残りました。 https://tezukaosamu.net/jp/mushi/201706/special1.html
学校内の人間関係だったら色んな漫画でも描かれてますけど、町に暮らす人々が繋がる物語って読んだことなかったな。小学生、主婦、お巡りさん、タクシー運転手、巫女さん…花染町に住んでいる面識がない人たちが自然に繋がっていくのがすごい。自分も町に暮らしていて関わりがないような近所の人とも実は色んなところで繋がってるんだなと実感した。しかも一話完結のエピソードのどれもが粒揃い。もちろん恋の話も素敵だけどそれも人間ドラマの一つのようなものだから男性にも読みやすいと思う。これから続編?スピンオフ?の「花に染む」も読むのでどう発展するのか楽しみ。 単行本派だったから雑誌なんてあんまり買わないのに何故かコーラスを買ったことがあって、それにローラが髪を切って弓を射る話が載っていて、今回10年ぶりくらいに同じエピソードを読んだけどセリフとかコマを自分が鮮明に覚えてることにびっくりした。くらもちふさこは記憶に残る漫画を描くんだなぁ。
※ネタバレを含むクチコミです。
「α―アルファ―」と「+α―プラスアルファ―」は二つで一つのような作品ですが単体で読んでも面白いです。 ドラマシリーズ『α』を演じるキャスト4人の物語。主人公は大物俳優の父を持つ二世女優の三神妃子。最初は自分でも親の七光りであることに引け目を感じていましたが徐々に才能を発揮しています。作品を演じるごとに共演者の天水キリに惹かれていきますが、最終的に妃子の片思いだけでなく、もっと巧妙な四角関係の物語であることも分かり読み応えがあります。「α」と「+α」を交互に読んでいくと妃子の演技力も上がっているように感じるので面白いです。
「α―アルファ―」と「+α―プラスアルファ―」は二つで一つのような作品ですが単体で読んでも面白いです。 「α」はくらもちふさこ先生らしい学園モノだけでなくファンタジーやSFなど、様々なストーリーが一話完結の形で描かれています。実は、それらは4人のキャストが演じている劇中劇という形のオムニバスなのです。「+α」では演者としてではない素の4人の物語を読むことが出来る、とても面白い構造になっています。連載は「α」を描き終えた後に「+α」を描かれたようですが、最初の単行本は一話ごと交互に収録される形で発売されたようです。どういう読み方をしても楽しいなと思いました。
最初のうちは短編集なのかな?って思うくらいバラバラの話なんだけど、読んでいくうちに登場する3人の女の子は小学生の時の同級生で、みんな「同じクラスにいた梅原クンってイケメンだったな〜」っていう共通の記憶があることが分かる。最後の話で卒業以来のクラス会をすることになって、女の子達と謎のイケメン梅原クンも再会するんだけど、タイトル通りちょっとだけスリリングな再会になっている。3人がそれぞれ成長して初めての大人の恋にドキドキハラハラする感じと、何てことない日常が最後に繋がって答えが見えてくるのが面白かったです。
「天然コケッコー」が映画化された時に描き下ろされた読み切り3本が収録されているということで購入しました。大沢くんがそよちゃんを好きになった瞬間が描かれていて、本当に読んでよかったと思いました…。 書き切れない位たくさんの漫画家さんが漫画やイラストを寄せているのですが、紡木たく先生ファンの方は必読なんじゃないかと思います。くらもち先生と対談されているのですが、紡木先生のデビュー間もない頃から仲が良いそうで、お互いに影響されたという貴重なお話を楽しそうにしていらっしゃるんです。ここでしか知ることが出来ないこともあると思いますよ!
「くらもちふさこで一番好きなのはおばけたんご!」という声をよく聞くのでずっと読んでみたかった作品です。親同士が親友で生まれた頃から許嫁として育てられた憧子と端午。しかし7歳の時に交通事故で端午が死んでしまいます。それから憧子は困ったことがあると心の中で「端午さま端午さまお願いします」と願掛けするようになったのです。なのでお化けが出てくる話ではありません。ちなみに表紙に描かれているイケメンも端午ではありません。 読んでみて個人的には「百年の恋も覚めてしまう」の方がストーリーは好きでしたが、余白の使い方がいつも巧みなくらもち作品の中でも際立って素晴らしかったです。くらもち作品の余白は情感や情景になるな〜と改めて思いました。ラストで端午がもし生きてたとしたらの世界に転換することで憧子の迷いが払拭されて、救いのある終わり方になるのもよかったです。