ただの雰囲気漫画…では終わらせない、読ませる何か(というか物語の意図みたいなもの?)があるような気にさせられる。 夢と現実の境界が曖昧なお話の中で、印象的なセリフが多い。
――その人魚には海で命を落としてしまう人間の魂を歌で救済するという役目がありました。 ある日、その役目を果たそうとした人魚は本来死ぬはずだった男を助けてしまい、 その後、恐ろしい魔女と取引をして、自身を人間に変えてもらいます。 しかし、その人魚が“心を奪われていた”相手は助けた男ではなく、 彼が船から落とした1本のお酒でした――(『酒に溺れた人魚姫、海の仲間を食い散らかす』) 他にも、ガサツでだらしない女性に飼われている“ネコ”や百貨店に売られている“口紅”、さらには繁華街にあるファーストフード店の“牛丼”など、様々な視点から描かれる短編たち。 そのどれもがほんのりとした温かみを宿し、だけどひとしずくの切なさを秘めている、そんな淡く儚い余韻を残す物語を束ねた短編集です。
※ネタバレを含むクチコミです。
憧れの街は私の中にありながら、私の想像を遥かに超えて存在している。その場所は私の中では朧げだが、出会ってしまえば豊かな質感を味わえる。 空想の儚さをリアルにするのは、いつだって私の一歩……そんな一歩の先を描いた物語です。 ★★★★★ とある夏に、雨の多い街に越して来た少女。鉛筆っぽいタッチで軽く描かれる街。そこは主人公にとって空想の場所であり、新しく触れる冒険=旅の場所。 下宿に身を寄せた前向きな主人公・友人になった内向少女・そっくりな二人の少年等、背景が少しずつ描かれます。激しいドラマは無く、その代わりに緩やかで優しい感情と、不思議だけれども豊かな質感があります。 細やかな感性に触れたいと思う方、穏やかな時間が欲しい方は是非こちらを。ゆっくりと一話ずつ味わっていただければと思います。
ただの雰囲気漫画…では終わらせない、読ませる何か(というか物語の意図みたいなもの?)があるような気にさせられる。 夢と現実の境界が曖昧なお話の中で、印象的なセリフが多い。