商業誌に載せられる限界の変態漫画家・サガノヘルマーとは何者か?
ログミーBiz
山田 :そうそう。それで、昨日そのことうっかりツイートしたら、なんとサガノヘルマーさんのアシスタントさんから「がんばってください!」って(笑)。 大井 :観てる可能性がありますよ(笑)。 乙君氏(以下、乙君) :マジで!? 山田 :サガノさん、がんばってください。 (一同笑) 山田 :今もまだその延長上の仕事をされていて、青年コミックにはなっているんだけど、もうぜんぜん相変わらずのド変態ぶり。そのド変態が、よく変態っていうと、スカトロとか露出狂だったりとか、そういうふうにいくじゃん。違うのもう。レベルが違うのもう。体そのものが別のものになっていくみたいな。 大井 :シュール・レアリズムに近いですよ。 乙君 :それは『君の名は。』みたいなことですか? 大井 :え? (一同笑) 山田 :あれもまあ......あれはちょっと今言うとヤバイかな......。 乙君 :(笑)。 大井 :どっちかというとポストモダン的に近い。 乙君 :ああ。 大井 :サガノヘルマー先生はやっぱりその、さっきの永井豪先生みたいに、異形とつながっていくみたいな、変形というかメタモルフォーゼ的な気持ち悪さというか。 山田 :そう。要するに、ブレインジャックされた普通の人間が、別の超進化した人間たちにブレインジャックされて、自分の体がコントロールされて、コントロールできなくなる。それで、女の子が異常に欲情してしまうというのがメインのコンセプトなんだけど、形が変わっちゃうから、見てる側はついていけないんだよ。 大井 :「エロいのか、これは?」みたいな。 山田 :「これ、エロいのか?」って言って。だいたい、女の子の体全体が性器みたいになっちゃってるわけ。 大井 :そうそう。 山田 :ほぼホラー。だから、セックス自体も「これどういう合体だ?」みたいな。合体ロボみたいな合体になってるんだよね。で、途中であれが入ってくるんだよ。人形フェチも入ってくるわけ。 大井 :そうですね。 山田 :関節的なやつとか入ってくる。俺はだから「今までメジャー誌のなかでやった本当に限界の変態って誰かな?」って考えると、やっぱり確かに江川さんの言うとおり、あのあたりが理解できる範ちゅうのギリだったかなという。 大井 :まあ、商業誌に載っていいギリですね(笑)。 山田 :そう。商業誌のギリかな。それの外にいくと、完全に誰もついてこれない。
…って、別にググればいくらでも現在のサガノヘルマー情報は出てくるのですがね。 しかし、どんなにググって「知識」を得ても、この奇才の掲載当時の衝撃度は、知らない人にはたぶん推測することもできないのです。 かつてヤンマガ本誌で、つまり、日本中のコンビニで誰でもごくごく手軽に買える媒体で、常軌を逸したエロとグロをまき散らしまくっていた異形の奇才が、今はほぼ忘れられてしまっているのに茫然とする。 このマンバでも、作品一覧に『BLACK BRAIN』がないのだから。ヤンマガで連載して単行本10巻とか出していたのに…。 まあ、それもしょうがないのか。 ヒドい(=凄い)漫画家だもんなあ。 今じゃあ絶対、一般誌に載せられないよなあ。ホントにヒドい(=凄い)もんなあ。 『わんぱくTRIPPER』は、サガノヘルマーのデビュー作です。 さすがにデビュー作だけあって、その資質が全開です。作者も編集部も、ほぼコントロールできてないです。ヒドい(=凄い)です。個人的には、ブラブレや後年の成年誌発表作より、イっちゃってると思います。 素晴らしいです。 駕籠真太郎とかがお好きなかたは、ぜひ。 これが、日本中で若者が読んでいた雑誌に載っていた時代があったんだなあ。 「僕は二十歳だった。それが人生でもっとも美しいときだなんて誰にも言わせない」 ポール・ニザン まあ、少なくとも毎週サガノヘルマーを読んでたのが二十歳頃だったら、そりゃあ美しくはないよなあ。ヒドい(=凄い)よなあ。