あや秀夫漫画家は、現在は、ボール2コミックならなかったチャンピオン
「野球」をテーマにしているが、ただのスポーツ漫画の域で収まらず、ビジネスの場面でも応用できるような内容でした。主人公は、名門校の入団テストに不合格し、野球を諦めかけます。しかし、進学した高校で野球部のキャプテンと出会い、野球に対する考えを改めます。これは、現実の社会でもあることだと思います。憧れていた会社に入社できなかったり、希望していた配属先に就けなかったり、不遇や挫折は人生で訪れます。しかし、そこで「もう全てがどうなってもいい」と考えるか「今の現状、置かれたポジションでできる限りのことをしよう」と考えるかで、今後が変わってくるはずです。そんな、社会に対する、人生に対する思考を「野球」というテーマで分かりやすく表現してくれたのがこの漫画です。
プロ野球の人気凋落が叫ばれて久しいですが、あれはエンタメとしての職業野球がダメになってきているだけで、やっぱり野球は日本人の生活に根ざしたスポーツだと思います。高校野球の人気は不動だし、学校の授業や部活でもまだまだ廃れてはいないはず。漫画だってまだまだ少年誌にはいくつも連載されているのですから。で、少年野球漫画がなぜ廃れないかといえば、ひたむきに打ちこむ姿に青春を見るからではないでしょうか。この作品もそうです。のっけから廃部の危機にある稲葉中野球部。試合をすれば1点もとれずにコールド負けがあたりまえのへたっぴ集団が最後の試合に臨む。勝てなくてもいいからせめて笑われない試合をしようと思っても、やはり下手は下手。けれど泥まみれになりながら歯を食いしばってうまくなろうとする彼らの姿がここにはあります。この辺の感覚は自分も幼いころに味わったもの。ひたすらにひとつのことに没頭できる時代、うまくなることだけを考えた少年の日を描ききった良作だと思います。
あや秀夫漫画家は、現在は、ボール2コミックならなかったチャンピオン